“problem” と発言する日本人をなぜネイティブは注意したのか?【ビジネス英語の絶対ルール】

グローバル社会で役立つ、日本人が使っちゃいけないビジネス英語のルールを、マイクロソフト シンガポール勤務の岡田兵吾さんが紹介します。第3回は、ネイティブに好まれる「課題や問題のポジティブな伝え方」です。

problem はビジネスには不向き

以前、ある日本人メンバーが「問題」の英訳として problem を使ったことで、ちょっと面倒なことがありました。

アメリカ人を含めた打ち合わせで、日本人が problem と言ったとき、「それは issue であって、problem ではない」とわざわざ訂正されたのです。

それほどに problem は、ネイティブに嫌がられる単語なのです。

日本語でよく使われる 日常の「課題・問題」を英訳する場合は、problem ではなく issue が妥当 です。

issue には「出す」「発行する」など、いろいろな意味がありますが、「出る」というイメージが強い単語です。「外に出てきたもの」から派生して「発行物」や「問題」などが出てきたというニュアンスがあるため、 issue は「仕事での解決すべき問題」という意味があります。日常的に発生する「課題・問題」を訳すのにちょうどいい単語です。

issue は、仕事においては主に、「一緒に解決すべき課題」と理解する ことができます。緊急性をアピールでき、前向きに解決していきたいというニュアンスも伝えられます。このため非ネイティブは、課題を確認するときに issue を使っています。

文を見てみましょう。

I’d like to raise an issue .

問題提起をしたいと思います(「皆で考えましょう」の意味を含む)。

ビジネスでは常に課題を確認し合い、必要なアクションを早期に取ることが大切です。だからこそ、非ネイティブは “I’d like to raise an issue .”(問題提起をしたいと思います=この件について皆で考えることができればと思います)のフレーズを使って、積極的に課題や問題を提起して、 issue (問題)を解決しています。

ほかにも、

I need to resolve the issue .

課題を解決する必要があります。

We need to talk about the issue .

私たちは課題についてし合わなければいけません。

などの言い回しもよく使われます。

問題点について議論する際には、“The issue is ~.” というフレーズを使うと、ある問題において何が最も重要なポイントなのか、ということを示すことができます。

例えば、

The issue is that we don’t have the resources for a project of this scale .

問題は、このような大規模なプロジェクトに割ける人手が私たちにはないことです。

という表現で、何が issue なのかを示すことができるのです。

problem は「解決が難しい大問題」とグローバル社会では捉えられます 。よっぽどの大問題でないかぎり、通常は issue を使ってください。

I have a big problem. とは言わない

ビジネスで、「課題」や「大きな問題」として problem を使うと「解決が難しい大問題」の意味になるので、ネイティブがめったに使うことはないことがお分かりいただけたと思います。

「今、問題を抱えています。」と言いたいときには、“ I have a big issue .”と言えればバッチリです。

また、同じ「問題を抱えているシチュエーション」で、よりポジティブな印象になるフレーズがあります。

それは challenge を使ったフレーズです。

I’m facing a big challenge .

大きな課題に直面しています。

ビジネス英語では「どんなときでもポジティブ」が基本なので、 逆境にあっても、前向きに解決する姿勢が大切 です。逆境時に非ネイティブが使う言葉が challenge です。

challenge は「何かに挑戦する」との意味と思われがちですが、日本語の「チャレンジ」を英訳するならば try が妥当です。

challenge には「勝負を挑む」のほかに、「異議を申し立てる」という意味もあります。例えば、“He challenged the decision of the court.”(彼は裁判所の決定に異議を申し立てた)というフレーズに見られるように、日本語でいう「~にチャレンジする」の意味に当てはまらないケースがあります。

もちろん、日本語的な「チャレンジ」の意味合いで英語の challenge を使うときもありますが、日本語の「チャレンジ」と少しニュアンスが変わります。

日本語の「チャレンジ」は、達成できてもできなくてもそこは問題ではなく、とにかく挑戦することを「チャレンジ」としています。ただ挑戦することを言いたいなら、前述したように try を使います。

英語の challenge は「努力すれば乗り越えられる課題」のこと です。達成できない目標は含んでいません。

  • problem:解決が難しい大問題。ネガティブ要素が強く、ビジネスにおいては普段は使うべきではない表現
  • issue :主に「一緒に解決すべき課題」。日常的に発生する「課題・問題」を訳すのにちょうどいい表現
  • challenge :努力して乗り越えることで、新しい機会を得ることができる課題。「これに挑戦して乗り越えて、自己の成長や新しい成果を生み出します」と前向きな印象を与える
こうした意味があるので、非ネイティブは、壁にぶつかったときに challenge を使うことで、“I’m facing a big challenge .”(大きな課題に直面しています)や “I like facing challenges.”(挑戦しがいのある課題に 取り組む のが好きです)といったふうに、「挑戦して乗り越えることで、自己の成長や新しい成果を生み出す」と前向きなイメージを打ち出しているのです。

グローバル社会では前向きなアピールが大事

非ネイティブも英語圏ではポジティブに振る舞うことをモットーとしているので、本当に深刻な大問題以外では、ネガティブ要素が強すぎる problem は使いません。ビジネスでは、課題や問題が発生するのは日常茶飯事です。

非ネイティブのようにあえて challenge を使い、自分の気持ちも新しい挑戦に向けて奮い立たせて、日々発生する問題に前向きに挑戦し解決していきましょう。

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岡田兵吾(おかだ ひょうご)  @phoenix_hugo

マイクロソフト シンガポール アジア太平洋地区ライセンスコンプライアンス本部長。日本・韓国・オーストラリア・ニュージーランドの4か国のライセンス監査業務の責任者だけでなく、アジア全域のコンプライアンス対策およびデジタル変革を 推進 。また同社にて、アジア全域の働き方改革や国内外の大学・非営利団体でのリーダーシップ活動を評価され、数々の社内アワードを受賞。世界トップレベルの IEビジネススクール・エグゼクティブMBA 取得 。米国PMP(プロジェクト・マネジメント・プロフェッショナル)認定資格保持。著書に『ビジネス現場で即効で使える 非ネイティブエリート最強英語フレーズ550』(ダイヤモンド社)、『すべての仕事を3分で終わらせる外資系リーゼントマネジャーの仕事圧縮術』(ダイヤモンド社)がある。ダイヤモンド・オンラインにて「STAY GOLD! リーゼントマネジャー岡田兵吾の『シンガポール浪花節日記』」( https://diamond.jp/category/staygold )を連載中。人生目標は「ソーシャル・チェンジ」(社会変革)、座右の銘は「STAY GOLD!」

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