文構造を正しく理解できないと解けない穴埋め問題【難問クイズで学ぶ文法知識②】

Twitterで話題になった北村一真さん作成の英語クイズで文法知識&読解力を高める本連載。第2回は英文を読んでかっこの中に入る表現を選択する問題です。

クイズ

下の英文を読んでクイズに答えましょう。

In recent weeks, Chinese social media has become awash with tongue-in-cheek images like these※, posted by fresh graduates who have chosen to eschew the typical polished portraits (   ) shots they say offer a truer reflection of the tough reality they face.

― “Why Chinese students are taking graduation photos looking ‘more dead than alive’”
CNN, 2023/6/23

※these:この文の前の箇所で紹介されている力尽きたような倒れこんだ姿で撮る写真のこと

空欄に入るのは・・・

(1)and
(2)instead of
(3)so that
(4)in favor of

単語・語句

問題を解き終わった人、出てきた語句を理解できなかった人は、ここで押さえておきたい単語・語句を確認しましょう。

  • awash with ~:~であふれた、~で満たされた
  • tongue-in-chee:ふざけた、皮肉った
  • eschew:~を避ける
  • polished:上品な、洗練された

ヒント

文全体の意味に加え、動詞とのつながりも考えよう。

つまずきポイント

※の注もヒントに文全体の意味をしっかりと追い、かつ、eschewという少しレベルの高い単語の意味もしっかりと見極めないと、選択肢を絞り切れず迷ってしまうかもしれません。空欄の後ろの部分の構造を誤読しないこともポイントです。

中国で、大学を卒業する学生たちが死んだような格好をして写真を撮影するのがはやっていることを取り上げたCNNの記事からの抜粋です。高い失業率や経済の停滞で、社会に出ていく学生たちの将来に対するイメージは暗いと指摘されています。前半は、becomeを用いた以下のようなSVCの構造。中国のSNSに「大学卒業に際し、死んだような格好をして写真を撮影している卒業生たち」の写真があふれかえっている状況をつかみましょう。

前半の構造

(In recent weeks,)
Chinese social media (S)
    has become (V)
      awash with tongue-in-cheek images like these (C)

直後にposted by ~(~によって投稿された)と続くことから、補語(C)のtongue-in-cheek imagesを誰が投稿したのかの説明が過去分詞句による後置修飾で説明されているということを読み取ります。今回のクイズは、この「投稿者」を説明する部分の名詞句、その中でも特に関係代名詞節の理解が鍵になります。

まずは、空欄の前までの部分に目を向けると、who have chosen to eschew the typical polished portraitsとあることから「典型的な上品な肖像写真を避けること(撮影しないこと)を選んだ」という内容が読み取れます。では、空欄の後ろの部分にはどのような形の表現が来ているでしょうか。

ここで、shots・・・faceの構造を次のように分析し、「彼らが言う写真は自分たちの直面している厳しい現実をより正確に映し出している」のように解釈してしまってはいけません。

say shotsのような言い方は成立しないため、shots they sayをshotsに(that) they sayという関係代名詞節がかかっているものとみなして「彼らが言う写真」と解釈することは不可能です。

ここのthey sayから始まる関係代名詞節はsayで切れずに、その後も続く連鎖関係代名詞節だと判断することがポイントです。

以上の分析から、空欄の後ろの構造を大きな名詞句の固まりであると正しく捉えることができれば、従属接続詞の(3)の可能性は除外できます。あとは、空欄の前にある名詞句とこの名詞句の意味的な関係をしっかりと理解できるかです。いま一度並べてみましょう。

the typical polished portraits:典型的な上品な写真

shots they say・・・face:彼らの現実をより正確に反映している写真

記事のタイトルや注もヒントとして考えると、このshots they say・・・faceが前半のtongue-in-cheek images like theseと同じものを指していることは明らかで、この2つの名詞句には以下のような対比の関係が成り立っていると考えられます。

the typical polished portraits:典型的な上品な写真
→通常ありがちだが撮影されなかった写真


shots they say・・・face:彼らの現実をより正確に反映している写真
→通常なさそうだが実際に撮影された写真

したがって、have chosen to eschew the typical polished portraits (   ) shots they say・・・の部分が、「典型的な上品な肖像写真を避け(撮影せず)、彼らが自分たちの直面している厳しい現実をより正確に映し出していると語る写真の方を選んだ」といった意味になれば、文脈とも一致することになります。選択肢の中でこの「の方を選んだ」に近い意味を表現できるのは(4)のみなので、正解は(4)となります。

なお、「拒絶・拒否・放棄を表す動詞+目的語(O)+ in favor of ~」で「Oを拒絶・拒否・放棄して~の方を選ぶ」という意味を表すのは頻出パターンなので、押さえておいてもよいでしょう。今回は、eschewという少し難しめの動詞が使用されていますが、代わりにabandonやreject、refuseなどが使われることもあります。

解答と訳例

(4)in favor of

訳例
ここ数週間、中国のソーシャルメディアにはこのような冗談めいた写真があふれている。これらを投稿したのは、お決まりの上品な肖像写真を避けて、自分たちの直面する厳しい現実をより忠実に映し出しているとする写真の方を選んだ新卒者たちだ。

難問クイズで文法知識と読解力を高める!

英語上級者になるための第一関門!

Twitterで話題を呼んだ英文法と英文解釈に関するクイズを書籍化。クイズ形式なので謎解きのように楽しめて、詳細な解説で上級者の視点が身に付きます。大学受験レベルの英文法を勉強してきた人が、見落としていた文法事項や用法に気付くことができるでしょう。難文に挑戦したい人向けの新感覚の学習書です。

北村一真(きたむら・かずま)
北村一真(きたむら・かずま)

1982年生まれ。慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得満期退学。学部生、大学院生時代に関西の大学受験塾、隆盛ゼミナールで難関大受験対策の英語講座を担当。滋賀大学、順天堂大学の非常勤講師を経て、2009年に杏林大学外国語学部助教に就任。2015年より同大学准教授。著書に『英文解体新書』(研究社)、『英語の読み方』(中公新書)、『知識と文脈で深める 上級英単語ロゴフィリア』(共著、アスク出版)、『ジャパンタイムズ社説集2022』(解説執筆、ジャパンタイムズ出版)、『英文読解を極める 「上級者の思考」を手に入れる5つのステップ』(NHK出版新書)など。Twitter:@Kazuma_Kitamura

SERIES連載

2024 04
NEW BOOK
おすすめ新刊
観光客を助ける英会話
詳しく見る
メルマガ登録