リーディングの大問1対策~解き方からおすすめ参考書まで【ここから始める英検準1級】

英検準1級の合格水準は、英語で十分なコミュニケーションを取ることのできるレベルです。前回の概要に続いて今回取り上げるのは、一次試験のリーディング。語彙力が求められる大問1を見ていきます。『完全攻略!英検準1級』(アルク刊)の著者、神部孝さんに詳しく教えていただきます。

大問1を制することは合格へのビックステップ!

今回取り上げる大問1というのは、下の表の色が付いている部分のことです。

語彙力アップが決め手

大問1は語彙問題です。短文や会話文について、文脈に沿う適切な語句を4択で選ぶ問題です。リーディングの問題数41のうち、25問が大問1の語彙関係の問題です。

大問2の「長文の語句空所補充」問題や、大問3の「長文の内容一致選択」問題を解くにも語彙力は重要。2級よりも難易度の高いリスニングPart 2の「文の内容一致選択」問題を解くにも語彙力は重要です。つまり、英検2級以上に語彙力の重要性を感じると思います。

そのため語彙力を伸ばした受験者は、準1級に合格できる可能性が高くなります。それでは、大問1がどのような問題かを見ましょう。

2級と準1級、大問1を比較

まずは、2級と準1級を比べてみましょう。各区分の正確な問題数は多少前後する可能性がありますが、合計問題数は決まっています。

区分2級準1級
単語10問21問
句動詞
(慣用句などを含む)
7問4問
文法3問-(ありません)
合計20問25問

2級で出題される文法問題は準1級には含まれません。

次に準1級について、問題を品詞別に見ましょう。各品詞の問題数は多少前後する可能性があります。

品詞問題数
①名詞7問
②動詞7問
③形容詞(副詞を含む)7問
④句動詞4問
合計25問

25問中21問目までは①~③がランダムに出題されます。続く22~25問目が句動詞問題です。

例題

それでは例題を見ましょう。解答は例題にチャレンジしてから見るようにしてください。

例題① 名詞問題

空欄に入る適切な語を1~4から1つ選びます。

In 2009, the H1N1 influenza virus, known as swine flu, became a pandemic. In response to its rapid rate of ( ), the World Health Organization declared a “Public Health Emergency of International Concern.”

1 atmosphere  2 temperament  3 well-being  4 infection

問題と選択肢の訳

2009年に豚インフルエンザの名で知られるH1N1型インフルエンザウイルスが、世界中で大流行しました。その急激な感染を受け、世界保健機構は「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」を宣言しました。

1 大気、雰囲気  2 気質  3 幸福、健康な状態  4 感染

解法のポイント

一般的に名詞の問題は、それぞれの選択肢の意味さえ分かっていれば楽に解けます。正解となる単語が分からない場合には、他の選択肢を知っていれば消去することにより正解する確率が上がります。

つまり、4択はランダムに選べば1/4の正解確率。不正解が確実な選択肢を1つ除外できれば1/3。2つの選択肢を除外できれば1/2になります。全ての単語を覚えるのは大変でしょう。しかし、語彙力を伸ばす努力に比例して正解率が上がるのです。

解答と解説  正解 4

1文目のインフルエンザとウイルスは新型コロナウイルスからなじみの深い単語になりました。2文目のIn response to its rapid ~(その急激な~)の「~」の意味を考えましょう。インフルエンザといえば「感染」です。infectionの意味を知っていれば、すぐに正解の4が選べるでしょう。

例題② 名詞問題

名詞問題の中には、文意を正確に把握する必要がある問題があります。文意を問う例題を見ましょう。

William was known for ( ) cheating, so even when he studied hard and made a perfect score on the math exam, everyone accused him of being unfair.

1 fragile  2 confident  3 unauthorized  4 habitual

問題と選択肢の訳

ウィリアムは常習的なカンニングで知られていた。そのため、彼が一生懸命に勉強して数学のテストで満点を取ったときにさえも、皆は彼がずるいととがめた。

1 もろい、不安定な  2 自信に満ちた  3 権限のない、認可されていない  4 習慣的な

解法のポイント

文意をしっかり問われる問題は、単語自体はそれほど難しくなくても、文意を正確に捉える力があるかが試されるます。長文読解問題を解く力を持つためにも、一つ一つの文をしっかり理解しましょう

解答と解説  正解 4

habit(習慣)は、皆さんご存じだと思います。4のhabitualはその形容詞形です。4つの選択肢の中では最も難易度の低い単語だと思います。空欄の後ろあるcheatingをカンニングだと理解できた人は多いと思いますが、それと組み合わせる語として、2のconfidentと3のunauthorizedで迷う人もいるのではないでしょうか?

カンニングに「自信を持っている」とか「認可されていないカンニング」とか、単語自体の意味を知っていても選択肢を簡単に選べないでしょう。だからこそ、文意を正確に把握する必要があるのです。

例題③ 動詞問題

動詞の問題でも、文意を把握して問題を解くことが重要なのは名詞の問題と同じです。その中でも特定の前置詞」と結び付きやすい動詞があります。それでは、例題を見ましょう。

The committee ( ) Jason from the student union presidential candidates because his grades were insufficient for him to continue at college.

1 nominated  2 implemented  3 eliminated  4 fulfilled

問題と選択肢の訳

委員会がジェイソンを学生会の代表候補から外したのは、彼の成績が大学を続けるのに不十分なものだったからだ。

1 任命した  2 施行した、実行した  3 消去した  4 成就した

解答と解説  正解 3

キーワードは「from」です。ジェイソンを「~から~する」という表現を成立させるには1のnominatedと3のeliminatedが考えられます。しかし、成績が悪いことから大学を続けられない。つまり、除外したのです。文章の構造を考えながら文意を把握しましょう。

例題④ 形容詞問題

準1級では2級と異なり、比較級や時制を問うような文法問題は出題されません。しかし、文意を把握するために文構造を知ることは大事です。「too ~ to do」、「so ~ that ...」、「such ~ that ...」構文などの基本構文の活用法や接続詞の活用法を知ることは重要です。それでは例題を見ましょう。

Professor Silver talked at such a ( ) pace that most students in his class failed to comprehend the main points he made.

1 stale  2 brisk  3 dull  4 sacred

問題と選択肢の訳

シルバー教授は、あまりにも速いペースで話したので、クラスのほとんどの学生は教授の話の要点を理解できなかった。

1 面白くない、腐った  2 キビキビした  3 鈍い  4 崇拝すべき、神聖な

解答と解説  正解 2

「such ~ that ...」構文は「大変に~であるので・・・だ」という意味です。ですから、例題は教授の話のペースが速かったという内容です。「あまりに速かったために生徒は理解することができなかった」のです。

例題⑤ 句動詞問題

句動詞は22~25番まで4問が出題されます。句動詞の攻略は多くの文章を読み、さまざまな活用法を知ることで身に付けてください。英検用に作られた単熟語帳などを使って覚えるのもよいでしょう。「settle down(落ち着ける、定住する)」のように、動詞単体の意味から熟語の意味を推測できる場合があります。ここでは単語単体からは推測できない難易度の高い問題を見ましょう。

A: I can hardly wait for the Caribbean cruise.
B: Me neither. When was the last time we ( )?

1 wiped out  2 laughed off  3 kicked back  4 rested on

問題と選択肢の訳

A:カリブ海のクルーズが待ちきれないよ。
B:私もよ。最後に休んだのはいつだったかしら?

1 全滅させた  2笑い飛ばした 3 休息した  4 ~に基づいた

解答と解説  正解 3

選択肢で使われている動詞自体は簡単なものです。restという単語にだまされて4のrested on(~に基づいた)を選択しないように。正解は3のkicked back(休息した)です。kickからは容易に推測できませんね。ちなみに名詞のkickbackには「予期せぬ反動、リベート」という意味があります。

語彙力を増強しよう!

最後に、単語や熟語を覚えるための方法とテキストを紹介しましょう。自分に合った方法で頑張って語彙力を伸ばしましょう。

英検準1級レベルになると読める文章が増えてくるはずです。ぜひ、英検の過去問以外にもトライしましょう。私の勧める語彙力増強法は、「読書」と「単熟語帳」の併用です。

おすすめ読書

① The Hunger Games

このシリーズは読んでいてわくわくしました。著者のSuzanne Collinsによる『Gregor the Overlander』も準1級レベルだと思います。面白かったです。

② Dan Brownの著書

トム・ハンクス主演の映画『ダ・ヴィンチ・コード』や『天使と悪魔』は面白かったですね。ダン・ブラウンの文章は比較的読みやすいと思います。

③ Michael Crichtonの著書

『ジュラシック・パーク』の著者です。SFが好きな人にはお勧めします。準

1級は高度な文章を理解できるレベルですから、これらの小説以外に英字新聞などにもチャレンジしていただきたいです。

語彙力増強用のテキスト

英検準1級に適した語彙力増強用のテキストは、次のようなものが良いでしょう。

神部 孝(かんべ・たかし)
神部 孝(かんべ・たかし)

Yale UniversityでMBAを取得。現在、かんべ英語塾主宰。TOEFLをはじめ、TOEICや英検などの指導に当たっている。主な著書に『完全攻略!英検2級』『完全攻略!英検準1級』『改訂版完全攻略!TOEFL ITPテスト』『完全攻略!TOEFL iBTテスト』(いずれもアルク刊)、『TOEFL英単語3800』『TOEFL英熟語700』(いずれも旺文社刊)などがある。さまざまな英語試験を受けており、英検では「生涯学習奨励賞」(1級)や「日本英語検定協会 奨励賞」を受賞。

神部孝さんの著書

トップ画像:liu sicheng from Unsplash

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