女性であることを肯定し勇気づける、ミーガン・ザ・スタリオンのアルバム『TRAUMAZINE』【EJ Culture音楽】

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「今聴いてほしいアーティスト」と関連する楽曲を音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんが解説します。
今回は、ミーガン・ザ・スタリオンのアルバム『TRAUMAZINE』を紹介します。

今月のアルバム:ミーガン・ザ・スタリオンの『TRAUMAZINE』

SNSにラップを投稿したことがきっかけで一躍脚光を浴び、女性ラッパーとして活躍するミーガン・ザ・スタリオン。2020年に「Savage」やカーディ・Bとコラボした「WAP」など数々のヒット曲をリリースし、2021年開催のグラミー賞で最優秀新人賞を受賞。3年ぶりの開催となった「SUMMER SONIC 2022」で初来日した際の圧倒的なパフォーマンスや日本を楽しむ様子も話題に。

多くの女性が共感できるような等身大のミーガンの悩みや迷いを表現

「I’m her, her, her ・・・」と繰り返す、コーラス部分の強烈なリリック。そのまま訳すと「私は彼女」という意味だが、ミーガン・ザ・スタリオンが歌う“her”は、「街中でうわさになっている話題のあの子」のことを指す。他人のうわさ話や陰口だって気にしない、みんなが私をねためばねたむほど、私はもっとかわいくなれるんだから・・・とラップするミーガンの言葉には、実際に多くの女性たちが勇気づけられている。女性であることを肯定し、共に喜ぶ。

2021年に開催されたグラミー賞において、ミーガンは最優秀新人賞に選ばれた。女性ラッパーとしてこの部門のトロフィーを獲得するのは1999年のローリン・ヒル以来、実に22年ぶり。それだけ、彼女が時代を表す「顔」として音楽シーンから愛されている証しでもある。

既に新人の枠を抜けたミーガンが、最新アルバム『TRAUMAZINE』で表現した内容は、最愛の母の死去や、音楽業界で生き抜こうとする彼女に降りかかったレコード会社とのいざこざ、日々揺れ動く感情や鬱々とした気持ちなど、どちらかといえばダークな部分が多い。その分、彼女のラップがよりエモーショナルでアーティスティックに響く。きらびやかな成功を祝福しつつも、そこには全世界の女性が共感できるような等身大のミーガンの悩みや迷いがつづられているのだ。
アルバム発売に際して行われたインタビューで、彼女は「今回は、自分がより本当に感じていることを表現することができた。やっと、私の体験やストーリーをコントロールしたいと思うようになった」と、印象的な発言をしている。

「私のストーリーを語るのは私」――改めて彼女の雄弁さ、そしてパワフルさに敬服したい。

自分を鼓舞する女性ラッパーたちの楽曲5選

今回の記事で紹介している音楽のプレイリストをご紹介します。勇気が湧いてくる女性ラッパーの曲を聴いてみよう!

  1. her by Megan Thee Stallion
  2. Super Freaky Girl by Nicki Minaj
  3. Get It Girl by Saweetie
  4. Chitty Bang by Leikeli47
  5. Treat Me by Chlöe

ミーガン・ザ・スタリオンのアルバム 『Good News』

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これまで『ENGLISH JOURNAL』の連載「EJ Culture Music」で取り上げてきた楽曲をSpotifyで公開中です。次のURLからご利用ください。

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※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2022年12月号に掲載した記事を再編集したものです。

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渡辺志保(わたなべ・しほ)

音楽ライター。主にヒップホップ関連の文筆や歌詞対訳に携わる。これまでにケンドリック・ラマー、A$AP・ロッキー、ニッキー・ミナージュ、ジェイデン・スミスらへのインタビュー経験もあり。block.fm『INSIDE OUT』をはじめ、ラジオMCとしても活躍中。

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