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学校・受験英語から抜け出して英語が話せるようになるには?【同時通訳者の回答】

英語学習解決室

日本にいながらにして使える英語を身に付けようとすると直面するさまざまな悩み。この連載「通訳者の英語学習解決室」では、短大卒業時に英検4級、TOEIC 280点ながら、そこから3年半で通訳者デビューした「国産同時通訳者」、小熊弥生さんが、今日からできる解決法を教えます。今回の相談は、「受験勉強と同じやり方で英語を勉強してしまい、英語が実際に使えるようにならない」です。

相談:受験勉強と同じやり方で英語を勉強してしまう

今回のご相談は、「受験勉強と同じやり方で英語を勉強してしまい、英語が実際に使えるようにならない」です。

点数を取るための勉強になってしまう

学校や受験では英語を科目として扱います。科目とは、生徒が十分に勉強したかどうかを先生が判断することが不可欠なために、正解か否かにフォーカスがあり、道具としての英語の訓練ができません。このため、試験では点数が取れても、実際には使えない、話せない、聞き取れない自分に困ることになってしまいます。

もちろん、国際基督教大学(ICU)のような大学では入学試験の基準自体に工夫がなされていて、この問題が内在していない、あるいは内在していてもそこまで大きな問題になっていない場合もあります。

正しい」英語にこだわり過ぎてしまう

また、いわゆる一般的な受験勉強では正否の判断に重きが置かれていますので、必然的に「私の英語は合っているのだろうか?」という疑問を持ちながら勉強することになり、「正しい英語ではどうなりますか?」と頻繁に質問するようになります。これがなぜ問題なのでしょうか?

私は25年間、会議通訳者として1万件の通訳をしてきました。そのうちの50パーセントの5000件では、話者が話したのは第2外国語としてのブロークンな英語です。これは私だけではなく、私の通訳仲間も同じです。ある通訳者は、50パーセント以上、60パーセントくらいだと思うと言っていました。

2017年の11月にバリで、世界中から80社が集まり、翌年の事業計画をグローバルに立案する研修の通訳をしたときのことです。私ともう一人の通訳者が7社の日本人経営者に同行し、サポートしていました。

研修の主催者が、タイから来ていた10社のタイ人たちが1つのテーブルに固まっていたところに行き、「せっかく世界中からたくさんの企業が来ているんだから、他のテーブルに分散すれば?」と提案したところ、タイ人たちは「Sure.」と答えて、すぐに各テーブルに移動しました。

主催者が日本人テーブルで同じように提案すると、日本人たちはみんな「英語が・・・」と言って、唯一私がコンサルさせていただいていた1社のみが「移動してもいい」と手を挙げたのです。他の人たちは「しょうがないよね」と言って、引き続き日本人だけのテーブルで「グローバル」なビジネスプランを考えることになりました。

そして研修の5日目にプレゼンテーションが行われました。タイ人も選抜メンバーがプレゼンすることになり、どんな素晴らしい英語を話すのだろうと私は思っていました。

ニコニコしている登壇者は、「My business is」と言って、しばし言葉を探しているようでした。そしてやっと思い付いたように言った言葉が、「help students.」。私は隣にいたパートナーの通訳者と目を合わせてびっくりしたのです。この程度の英語で5日間もどうやってグローバルにビジネスプランを作れたんだろうと正直思いました。

しかし、その後に、体全体を使いながら、自分たちのプランを、会場の人たちにも助けてもらいながらとにかく伝えていく様子を見て、「この体当たり感が日本人に一番欠けているのだ」と痛感したのです。

そして、なんとその会社が80社の中で1位に選ばれたのです。

通訳でも実際に遭遇するのは「多様な」英語

通訳学校を卒業し、TOEICで960点を取得して、英検1級に合格した直後は、ネイティブスピーカーのようにきれいな英語を文法通りにちゃんと訳せばいいのだと思い込んでいました。そして、自分も常に文法通りに正しい英語を話すことが大切だと思っていました。しかし、現実はそうではありませんでした。

世界には、シンガポール、インド、中国、フランス、アフリカ(特にフランス語圏の人の英語に特徴がありますが、英語圏でもかなり聞き取りにくい独自の英語なのです)など、それぞれの国特有の英語があるのです。そのため、通訳会議の前に話者の国籍や出身を問い合わせるようになりました。事前に「なまり対策」をしないと正確に訳せないことが分かったからです。

YouTubeで「English with French accent」などと検索して、対策を取るようになりました。そうしないと、通訳者としての役割が果たせなかったのです。ある大使館のイベントで通訳したときには、私が通訳を終えると、横にいたアメリカ人の通訳者に「今スピーカーが言っていたことは、僕には英語に全く聞こえなかったんだけど、どうやって訳したの?」と聞かれたことさえあります。

そのときに気付いたことがあります。通訳学校も含めた受験勉強では、「英語を正しく話し、全てを聞き取る」ことが大切だと思ってきました。しかし、そもそも実際に使われている英語は文法的に正しくもありませんし、全てを聞き取ることよりも、その人が言いたいことは何か、つまり意図をくみ取ることの方がはるかに重要なのです。詳しくは、前回の記事でもお伝えしていますので、まだ読んでいない方はそちらも読んでくださいね。

▼前回の記事はこちら↓

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「科目」として英語を勉強してもコミュニケーションできるようにはならない

すなわち、英語を科目として勉強してきたデメリットは、ネイティブスピーカーよりも正確に文法が操れても、正しさに固執してしまい、コミュニケーションの本質である意思疎通ができなくなってしまうことです。「正しさの追求」のデメリットをご理解いただけましたでしょうか。

ネイティブスピーカーも英文法の規則通りには話さない

なお、今までの話ではまるで、「第2外国語として英語を話す人が多いから、英語は正しくなくてもよい」と聞こえると思います。しかし、本当のことをお伝えします。実は、ネイティブスピーカーでも文法通りに話しているわけでないということです。

私は、何人もの世界的に著名なベストセラー作家の通訳をしてきました。その方々の動画の通訳もしたことがあり、動画では話者が話した内容を書き起こしたものが提供される場合があります。そのときに驚いたのが、ネイティブスピーカーも文法通りに話してはいないということです。主語と述語の不一致は多数あります(「There’s a lot of people」と言っている人も少なくありません)。では、このような状況にどのように対応していけばいいのでしょうか?

英語は世界中の人に素早く伝達するための「道具」

30年前であれば確かに、英語はグローバルに使われるというよりも、圧倒的な経済力があったイギリスやアメリカの人とやりとりをするための言葉という意味合いも大きかったため、文法的にも正しい英語を操ることは今以上に大切でした。しかし現在では、経済も「規模の経済」から「スピード経済」に変わっており、何事も速さが重視されています。英語も、言葉としての正しさを意識するよりも、伝えるべき内容を早く伝えることが重要になっているのです。

つまり英語は、以前にも増して、意思疎通の道具としての役割が大きくなっているということです。道具って、最初から達人並みに使えるかというと、そんなことはないですよね?ですから、 英語で話す場を作りましょう。そして、英語という道具を使いまくりましょう。

使う場は、英会話レッスンでもいいのです。道端で迷う外国人を助けるのでもいいでしょう。そうすれば、英語は単に科目なのではなく意思疎通の道具であることが認識できます。

単語の発音は固まりで捉え、実際に使って記憶に定着させる

受験英語でやりがちな単語などの単純な暗記では、48時間後には80パーセント忘れます。なぜなら、暗記しただけでアウトプットしないと、覚えた情報は重要ではないと脳が認識してしまうからです。しかし、覚えたことを48時間以内に使えば、脳はそれが重要な情報だと認識して、長期記憶に移してくれるようになるのです。

受験勉強では、単語のつづりと発音記号を丸暗記するのもやりがちなことです。その方法で、単語の単体としての発音を正しく覚えることはできるかもしれません。しかし、英語が通常の速さで話されるときには、リエゾンやリンキングと呼ばれる音声の短縮が起こります。そうすると、暗記したつづりも発音記号も、リスニングでは役に立ちません。個々の単語がどんなつづりでどんな発音だったかを思い出している間に会話は終了し、「Game over」になります。

つづりを覚えるために紙に書き出したことも、発音記号を懸命に覚えたことも、実践的な英語を使うためには無駄なのです。そこで私がおすすめするのは、第1回でお伝えした「リスイン」というメソッドを使って、英語の音を固まりで把握する方法です。

▼第1回はこちら↓

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スピード重視なら文法は5文型だけでいい

これまでの受験勉強で一番重要視されていたと思われる文法についても、賛否が分かれるところですね。私は、文法は5文型だけしっかり使えればいいと思います。時制を完璧に使いこなすことよりも、早くメッセージを口にすることの方が、スピード経済時代の英語には必要だと思います。

これは、国際会議では1秒にどれだけのコストがかかっているかを考えれば、理解していただけるのではないでしょうか。「There isだっけ、wasだっけ、wereだっけ」とやっているそれ自体のコストがかかり過ぎるので、それだったら、There’sだけを口に覚えさせてしまう方が、メッセージの伝達には効率がいいということです。

ということで、受験勉強からはしっかり離れて、英語を意思疎通の道具として使いこなせるようになるために、訓練を重ねてくださいね!

小熊弥生さんの本

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小熊弥生

文:小熊弥生

http://www.sokupera-english.com/opt2/
株式会社ブリッジインターナショナル代表。TOEIC 280点から、独自の勉強法で半年後にTOEIC 805点を取得。短大卒業から3年半で通訳者デビュー。現在は自身の経験をベースにした英語学習サービスを展開。ひとりひとりの目的に合った効果的な学習プログラム作りを指南し、のべ1000人以上の英語力アップに貢献している。

速ぺらEnglish:著者がTOEIC 280点から各国首脳の同時通訳を担当するまでに実践した英語勉強法を伝授。リスニング力とスピーキング力アップに特化したプログラムです。

編集:GOTCHA!編集部/写真:山本高裕(GOTCHA!編集部)