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「タクシーを呼んでください」は、英語で“Call me taxi.”でいいの?

「タクシーを呼んでください」は、英語で“Call me taxi.”でいいの?

Call me taxi.” “Today’s hot.” “How much is one person?”。日本人が間違いとするこんな英語が実際はどうなのか。『本当はちゃんと通じてる!日本人エイゴ』の著者、カン・アンドリュー・ハシモトさんがネイティブスピーカーを相手に調査しました。

8割の人は“Call me taxi.”に「問題なし」

日本人が言いそうな英文フレーズ…。そのなかで「英語として間違ってる」「こんなふうには言わない」と定説になっているモノを取り上げ、英語のネイティブスピーカーはそれらをどう感じるのかを調査する、という連載の最終回です。

今回、最初に取り上げる英文はこれ。

「タクシーを呼んでください」というつもりで…

Call me taxi.

こう言うと、あなたが「タクシーさん!」と呼ばれてしまう。これが定説になっているそうです。

ホントに?と僕は思ったけど、僕の友人たちはどう思うのか。

72人中50人(80%)は「まったく問題なし」、16人(20%)は「いいんじゃないかな」、「ダメ」が6人(8%)でした。

僕は「ダメ」が6人もいたことに驚いたけど。

正しい表現は“Call me a taxi.”で、冠詞 a が入ります。定説では a がないと「タクシーさん!」と呼ばれ、からかわれてしまうとのこと。

でもね、そのジョークは a があってもなくても存在します。

例えば、ホテルのロビーで客とボーイ長(Bell captain)の会話。

Customer: Good morning. Call me a taxi, please.

Bell Captain: Yes, sir. You’re a taxi.

客はもちろん「タクシーを呼んでください」と言っています。だけど、ホテルのボーイ長は、客が「私をタクシーと呼んでください」と言っているんだと、わざと誤解する。そしてこう答える。「はい、お客さまはタクシーです」。

冠詞の有無より大事なこと

Make me a sandwich, Mom.

上で紹介したタクシーと同様のジョークはたくさんあります。下は子どもとママの会話です。

Kid: Make me a sandwich, Mom.

Mom: OK, I’ll try. Mmm... Poof! Now, you’re a sandwich.

子どもは「ママ、サンドイッチ作ってよ」と言う。ママはちょっと難しい顔をして答える。「わかった、やってみるわ」。そして手に魔法のつえを持ったふりをして子どもに呪文をかける。 “Poof!”(これ、魔法をかけるときの決まり文句です。日本語には当てはまる言葉がありませんね。)そしてママは子どもを見て言う。「あなたはサンドイッチになったわ」。

「僕にサンドイッチを作って」という子どものせりふを、「僕をサンドイッチに作り変えて」とママが勘違いしたというジョークです。

ばかみたいだけどかわいいでしょ。だけどね、実際にはこんな勘違いなんてあり得ない。本当にこういうシーンがあったとしたら、それはママがふざけているだけです。

話を元に戻します。

例文の“Call me taxi.”について、友人たちはこんなふうに言っていました。

カナダ出身のナレーターいわく、「a が付くとか付かないとかよりも、これ、please を付けた方がいいんじゃない?」

それを受けたシカゴ出身のナレーターは、「そうだね、例えば“Can you call for a taxi, please?” これなら丁寧だよね」と続けました。

日本の大学で教えているミネアポリス出身の友人は、「“Will you get a taxi?”なら日本人にも言いやすいし、失礼じゃない。これならダメと言われないはず」と言いました。

例文に a があるかないかを誰も話題にしませんでした。僕も例文だとなんだかとても命令調だなと思って、そっちの方が気になっていました。

英語を母語とする人たちが、a があるかないかで誤解をしたり、気分を害したり、からかったりなんてことは、実際はほとんどありません。日本の人たちは気にしすぎかもしれません。大丈夫、きちんと伝わっています。

Call me taxi.”とか“Call me a taxi.”と言って、もし相手が“Hello, Mr. Taxi.”と返してきたら、その人はジョークを楽しみたいだけです。だから、あなたも一緒に楽しめばいい。元気にこう言ってみて。

Brrrr!

車のエンジン音ですよ。

「今日は暑い」は“Today’s hot.”と言わない?

It’s hot today.

次の例はこれ。

「今日は暑いね」と言うつもりで…

Today’s hot.

こう言ってはダメ。正しい表現は“It’s hot today.”というのが定説だそうです。

ホントに?と思ったけど、実は僕もこれ、経験があります。

ある有名私立小学校の英語の教科書に対応した CD を僕の会社で制作していたときのこと。音声スクリプトにこの表現があったんです。ナレーターはもちろんスクリプト通りに読んでくれて、無事にすべての録音が終わりました。

…と思ったら、ナレーターたちがみんなご機嫌で帰ったあとに、先生の一人がこう言ったんです。

「これは“It’s hot today.”であるべきじゃないですか?Kanさんはどう思いますか?」

僕は「ええぇ、そんなのもっと前に言ってよ」と思ったけど、もちろんそんなことは言わずに「大丈夫、どっちも問題ないです」と答えました。

でも、先生たちは録音スタジオで長い長い話し合いを始めました。結局、「天気、温度、曜日のときは主語は it であるべき」という結論になり、再録音が決まりました。

確かに“It’s cold today.”とか“It’s hot today.”と言うことの方が多い気はするけど、Today で始まる文が間違っている気がまったくしなかったので、僕は困ったときに頼りにする友人に聞いてみました。

ポートランド出身、新聞社で英文校正の仕事をしている60代の男性。彼の意見はこれ。

“It’s not grammatically wrong. It’s just less common and less conversational than ‘It’s hot/cold today.’”(文法的に間違っていることはない。ただ、“It’s hot/cold today.”に比べて使われることは少ないし、口にすることも少ない

NHK の番組に出演することも多いカリフォルニア出身の有名なナレーターは、次のように言いました。

「私は“Today’s cold.”も“Today’s windy.”も“Today’s rainy.”も使う。“Today’s hot.”も使う。これが間違っているとは絶対思わない」

僕は聞いてみました。「じゃ、君は“It’s hot today.”とは言わない?」「もちろんそういう風にも言うわ」。僕はさらに聞きました。「どっちが多い?」

彼女はすぐにこう言いました。“I use them equally.”(どっちも同じくらい)

次はシカゴ出身の友人の意見です。

「“Today’s hot.”という言い方?何が問題なんだろう。え、僕がどう言うかって?うーん、“It’s hot today.”かな。でもそれは僕の言い方だから」

最後はニューヨーク出身で元英語教師の友人のコメント。

「日本人の間でそういう議論があるのは知ってる。彼らにとってはデリケートな問題みたいだね。日本人はセンシティブだから。一度調べてみたことがある。その結果、ある小説に“Today’s hot.”という言葉を見つけたし、テレビの天気予報でも実際に使われてた」

一人の入場料を尋ねるのは“How much is one person?”でいい? 

最後の例文はこれ。

チケット売り場で「一人幾ら?」のつもりで…

How much is one person?

こんなふうに言うと、「人身売買」と誤解される。それが定説だそうです。

あり得ないでしょ、と僕は思います。

川崎に住む飲み友達は、“Come on, man! Be a little bit flexible!”(なあ、もっとちょっと融通を利かせようぜ!)と言った。

僕自身は flexible かどうか以前に、この表現はまったく間違っていないと言いたい。

映画館や美術館のチケット売り場で、「一人幾らですか?」と日本語でも言うでしょ。この日本語と英語の例文とでは、細かなニュアンスもまったく同じ。チケット売り場で「人間一人分の販売価格を尋ねている」と誰が思う?

僕は今のところ出会ったことはないけど、人身売買の人(traffickerと言います)に「人間一人幾らで買える?」と尋ねるなら、確かにこの例文で合っています。だけど、チケット売り場で誤解されることはあり得ない。

友人たちに聞いてみました。

「I use this.(私はこう言うわ)シンプルな言い方だし、どこに問題があるの?」と、カナダ出身のナレーター。

「文の意味を文字通りに捉えると、人の販売価格を尋ねていることにならない?」と僕。彼女は笑いました。「Seriously?(マジで?)」

ミシガン出身の英語教師は次のように言いました。

“It wouldn’t bother me. I even say it.(全然気にならないよ、僕も言うもの)文字通りに意味を捉えるよりも、人は実際の会話では状況を見て判断するものだと思う」

次はカリフォルニア出身のナレーターのコメントです。

「“How much is one person?”がダメ?No way!(あり得ない!)Why not?(どうして?)何が理由でそういう説があるの?え、人身売買?アハハ、それ面白い。想像力のテストなの?」

僕の友人たちは皆、周りの状況を見ながら人の言うことを理解しようと思う人たちばかりでした。

うん!良いことだと思う。

理解しようとする心が大事です

日本人の英語に厳しいのは日本人自身なのかもしれません。少なくともアメリカ人は厳しくない。

The most basic of all human needs is the need to understand and be understood. The best way to understand is to listen to them.

「人が生きていくのに最も必要なことは理解し合うこと。そのためのベストな方法は人の言うことを聞くこと」。これはラルフ・G・ニコルスという人の言葉です。

理解しようとする心で人の意見を聞く、アメリカ人はそういう心を持った国民です。それはなぜかというと、外国人とのコミュニケーションに慣れているから。世代を3つ、4つさかのぼるだけで、アメリカ合衆国という国がさまざまな国からやって来た人たちの集まりでできているのがわかります。

日本人の英語って何の問題もない、と僕は言いたい。

ほかの立派な先生たちは、英語の勉強法とかスコアアップの技術とかとても役に立つことを伝えているのに、僕は毎回「大丈夫!自信持って!」ばかり。それなのにこの連載に最後まで付き合ってくれてありがとう。

皆さん、ぜひ自信を持ってください。その方がコミュニケーションは絶対に楽しい!

いつかまたどこかでお会いしましょう。

See you!

Love, Kan

『ENGLISH JOURNAL』2019年1月号に記事を書きました!

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カン・アンドリュー・ハシモト

カン・アンドリュー・ハシモト
アメリカ合衆国ウィスコンシン州出身。教育・教養に関する音声・映像コンテンツ制作を手がける株式会社ジェイルハウス・ミュージック代表取締役。英語・日本語のバイリンガル。公益財団法人日本英語検定協会、文部科学省、法務省などの教育用映像(日本語版・英語版)の制作を多数担当する。また、作詞・作曲家として、NHK「みんなのうた」「おかあさんといっしょ」やCMに楽曲を提供している。9作目となる著作『外国人に「What?」と言わせない発音メソッド』(池田書店)が発売中。