英語でリーダーシップを取る秘訣!「アイスブレーク」

文部科学省所管の国立研究開発法人に勤務し、次世代エネルギーの研究に携わる、工学博士ハズさん。イギリスの研究機関へ研究留学するまでと、留学中に実践した、「英語が完璧じゃなくても強気で行ける!プレゼンの方法」の連載の3回目は、成功する講義についてです。

皆さん、こんにちは。ハズです。突然ですが、みなさんは人に何かを教えるときって、どんなことに注意しますか?

僕は仕事上、年に数回程度、国内の大学等で講義をすることがあるのですが、イギリスに滞在中にも大学で講義をする機会がありました。学会や国際会議などでのプレゼンと異なり、外国の大学で学生に講義するというのは僕にとって貴重で且つとても楽しい経験でした。そこで今回は僕が初めてイギリスのヨーク大学で講義した体験とその感想についてお話ししたいと思います。

イギリスのヨーク大学で100人の大学院生に講義

現代の科学技術分野における研究活動の多くは既にグローバル化しており、1つの研究室内で外部との情報を遮断して秘密裏に研究を行うケースというのは稀で、むしろ国内外の研究機関とオープンな 協力 関係を築きながら研究は進展していっています。

従って 、ある研究分野に長年従事していると、その分野の専門家たちとの交流も深くなっていきます。そんな中で僕の場合は、イギリス滞在中に僕と同じ専門分野の研究者がヨーク大学にいたため、せっかくイギリスにいるのならば大学に来て学生に講義をしないかと声をかけてもらったのです。

講義の内容は、現在日本で推し進めている次世代エネルギー開発とそのための物理研究についてで、主に電磁流体力学を専攻する大学院生100名程度が受講していました。

その場を和ませるアイスブレークのコツ

学生にとってみれば、突然教授が日本人を連れてきたわけですから、いつもの講義とは雰囲気が全く異なることでしょう。学生も初対面で表情が硬かったので、いきなり本題に入らず日本文化のことなどの雑談から入りました。

それから 「君たちはネイティブなんだから、僕の英語におかしな表現があっても努力して本意をくみ取ってくれよ」 って感じの話をしたら、学生たちの表情に笑顔が出てリラックスしたようでした。

人に何かを教えるとに注意したい2つのポイント

さて、雰囲気が和んできたところで実際の講義に入るわけですが、ここで冒頭の質問です。人に何かを教えるときって、どんなことに注意しますか?僕は2つの点に注意しています。

  • 分かりやすい表現での説明を心がける
  • 対話形式で進める

分かりやすい表現での説明を心がける

1つ目は、できるだけ分かりやすい表現での説明を心がけることです。これは言い換えれば 聞き手の立場になって説明する ということです。

特に、ある分野の専門家になり、毎日自分の専門分野に携わっていると、その世界が当たり前に感じてきます。でも聞き手側が専門家でなければ、自分と聞き手には大きなギャップがあることを認識しなければなりません。例えば、今回は学生が相手でしたから、彼らが理解できる言葉を使って、彼らの興味を引く講義を目指す必要があります。

対話形式で進める

2つ目は対話形式で進めるということです。対話で進めた方が講義が単調にならないだけでなく、聞き手側もしっかり理解できることは言うまでもありません。だから問題を出して学生たちに考えさせるなどして、学生側が参加できる工夫を取り入れた方が良いと思っています。

しかし、対話形式でするめる講義は、実は講師側であっても生徒側であっても日本人はあまり得意ではありません。日本では学校生活の中で、講師から一方的に指導される授業が一般的で、学生が常に受け身である形に慣れているからです。僕自身も対話形式は苦手でしたが、頑張ってやってみたんです。

ヨーク大学の講義では、イギリス人の学生のと日本人の学生の授業を受ける態度の違いが顕著でした。「この問題についてはどうしたら良いと思う?」など、何気ない疑問を投げかけると、学生は積極的に自分の意見を言ってきたのが、とても印象的でした。

またイギリスらしく、講義が終わった後も学生たちと一緒にテーブルを囲むティータイムがあり、そこでも彼らは気軽にさまざまな質問をしてきました。その一方で彼らからはリスペクトを感じます。 日本の文化では敬意と謙虚がリンクしていて、気軽に発言したり、質問したりしにくい のは、決して愚かな発言や質問などしてはいけないという考え方が根底にあるのかもしれません。

しかし、 そもそも 科学技術分野における新しい発見というのは、思いもよらない発想から生まれるケースが多いのです。先入観のない意見や発想を積極的に出していく姿勢の違いは、各国の学術論文数の違いにも 影響 しているのかもしれません。

リーダーシップを発揮するには、英語力、交渉力が必要

3回にわたって、「英語が完ぺきじゃなくても強気で行ける!プレゼンの方法」について連載させていただきました。さまざまな業種でグローバル化が進む現代では、ビジネスやプレゼンで英語が必須の時代に突入しつつあります。

僕が 英語を 改めて 勉強しようと思った きっかけ は、国際化する仕事の中で徐々に交渉力とリーダーシップが必要だと感じてきたこと でした。そして今、エネルギー資源を持たないわが国が次世代エネルギーの研究開発でリーダーシップを取ることは極めて重要な使命だと感じています。

同じように、 さまざまな分野で活躍する方々がグローバル化していくビジネスの場で世界各国と対等に渡り合っていくには、何より自分の意思を正確に言葉で伝達する必要があるはず で、そのための努力は惜しむべきではないと思います。

文:ハズ
文部科学省所管の国立研究開発法人研究員。専門は電磁流体力学、エネルギー工学。TOEIC L&R 960点。家族は妻と息子1人。最近は地域の子どもたちにマジックを見せて笑顔にするのが楽しい。筆頭著者論文約30編。工学博士。

編集:増尾美恵子

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