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ザッカーバーグ先輩も授業を?えっ、オバマ先輩もっすか?無料でハーバード大学にオンライン英語留学

ハーバード大学

ハーバード大学やスタンフォード大学など世界の名門大学の講義が動画で見られる時代。今回は通訳・翻訳者で英語教育の研究にも携わる佐々木南実さんに、ハーバード大学のオンライン講座を試していただきました。

とりあえずハーバードの門を叩いてみてわかったこと。それは、彼らが本気でホンモノを無料ネット配信してるんだという事実。教授陣の魅力がすごい。講義の密度がすごい。文部科学省は「edX」に日本語字幕をつけてもらうための予算すぐに組んでくれ!

MOOC留学1日目。まずは手始めにハーバードに体験入学

やってきましたハーバード。今まではボストンを訪れたときに観光コースで立ち寄るくらいしかアクセスする術がなかったこの超名門大学に、突然入学を許可されるというのだから、これはやってみるしかない。

しかも、無試験、無料、いつでも、どこでもハーバード大学の講義を聴講できて、100ドルほどの受講料を支払って要件を満たせば修了証まで発行してくれるのだ。こうなると「えーっと、大学ってなんだったんでしたっけ?」と、誰でも考える。

インターネットは、大学の存在価値を根本から問い直す状況を作り出している。もっと言えば、学問とは何なのか、学ぶことの本質とは何なのかという根源的な問いを、テクノロジーは人類に突きつけてきているのだ。すごい世の中になったとしか言いようがないのである。

まずはedXにゴー!一流の学びがあなたの目の前に…

ハーバード大学とMIT(マサチューセッツ工科大学)が共同で立ち上げたMOOCプラットフォームがedXである。

ことの起こりは2012年で、両大学が6000万ドルを投じてオンライン教育に乗り出したニュースは大いに話題を呼んだ。アメリカのビジネス誌『Forbes』のオンライン版には「edXでハーバードとMITは潰れるんじゃないか」という見出しも躍った。

自費を投じて自校のコンテンツを無料公開するという荒技に、当時は誰もが「意味がよくわからない」という感想を持ったようだ。MOOCの意味を考えてみると、現在ではedXで教鞭も執る京都大学の上杉志成教授のいう「世界的な社会実験 」という解釈がしっくりくる。

まずは、edXにアカウントを作成。Facebook、Googleなどのアカウントやメールアドレスを使用してすぐに登録することができる。

トップページの中央部に講座を提供している大学や機関のロゴが並んでいるので、お目当てが決まっていればそこから直行できるし、科目やプログラムから受講したいものを探すこともできる。

edX

今日はハーバードに行きたいので、迷わずクリムゾン・レッドのあのロゴをクリック。HaravdXというページに飛び、ここはすでにハーバード大学の校内だ。

ちょっと注意

edXのトップ画面に講座のタイトルが並んでいるが、画面トップの検索ウィンドウを使うと、edX全体からの検索になるので注意が必要だ。ハーバード内で講義を絞り込みたい場合は、まずトップページからコースカタログに行き、そこで学校(「Courses」>「Schools & Partners」>「Harvard University」)→科目(Refine your search)等というふうに条件づけていこう。

edX

気になる講座を見つけたら、講座のトップページにある1分ほどの紹介ビデオを見てみよう。まず私が見たのは「Justice」の講座。この動画のクオリティに驚愕。誰が作っているんだろう?

edX内の日本の大学のコースにも同様のビデオがあり、似たような作りになっているので、edXでまとめて作ってくれているのかもしれない。黒板を背景に講師が話し続ける日本でよく見る講義ビデオとは、まずここで違いを感じてしまうのである。

それはさておき勉強だ。今日は2種類の講義を履修してみることにした。

1時限目:Justice(正義)マイケル・サンデル教授

日本でもNHK「ハーバード白熱教室」として大ブレイクした有名講義を、ここでも再び見ることができる。今ではこの授業はもう大学では行われておらず、サンデル教授はごく少人数のゼミや論文指導を行うのみということなので、貴重なビデオ講義ということになろうか。

ビデオ画面右下の「“」マークをクリックすると横に字幕がリアルタイムで流れてくる。聞き逃したところの字幕をクリックすると、そこにビデオが瞬時に巻き戻るという優れた機能がうれしい。ビデオやその文字原稿はそれぞれ別に、ダウンロードすることも可能。

サンデル教授の見事なファシリテーションと、学生たちの意味のある発言を楽しんでいると、教授が時々はさんでくる哲学的な学術用語がわからないことに気づいた。

そこで、たまたま本棚にあった(ブームのときに購入した)早川書房の『これから「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学』を出してきて、パラパラ見ながら聴講することにした。

本とビデオはぴったりシンクロしているわけではないが、同じ内容を扱っているので、予習としてこの本を読み、それから講義を聴講するのがベストではないかと思った。

ビデオを見終わって「NEXT」をクリックすると、授業の復習のためのセルフ・テストのページに進んだ。その次にはサンデル教授の著書からの抜粋をダウンロードするためのページ、その次には学生同士がオンラインで書き込んでディスカッションができるフォーラムが設置されている。

フォーラムにはファシリテーターがいて、講義に出てきた「たとえ話」(あなたが運転する列車が暴走。直進すれば5人を殺す、レバーを引けば1人を殺す、あなたはどうする? 等)を現実世界に当てはめた例を挙げ(シリア難民:テロリストが混ざっている可能性があるが、受け入れるか否か?等)、それについてのディスカッションをたくさんの学生たちが行っていた。

聴講の翌日、Justice Course StaffからCourse Updateというメールが届いた。次回の講義で取り上げる内容を教えてくれるだけでなく、最近のディスカッションの話題などを紹介しつつ、ディスカッションにぜひ参加してみてくださいと誘っている。

少子化で日本の大学も面倒見が良くなっているとは聞くが、授業の前後にこんなフォローをしてくれるサービスはなかなかないのではないだろうか?

予習のための推奨読書

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

 

2時限目:Entrepreneurship in Emerging Economies(新興国における起業)タルン・カナ教授

次に、世界経済フォーラム(世界情勢の改善取り組む国際機関)のメンバーであり、ハーバード・ビジネス・スクールの名物教授のひとりでもあるタルン・カナ教授の「新興国における起業」という講義をのぞいてみることにした。

ビジネス・マネジメントの講義のラインアップの中でIntroductory(初級)と出ていたので、新興国ビジネスについては何も知らないけれども聞いてみよう、という気になった。何より、最初の紹介ビデオで教授が「インドで保冷剤を買えなかった」という体験談を出しながら、わかりやすく講義の概要を説明してくれていたのが入り口のハードルを下げてくれた(ような気がした)。

とはいえ、まったく事前知識ゼロで臨むのも無謀な気がしたので、教授のツイッターやブログを受講前にフォローし、教授の著書『新興国マーケット進出戦略―「制度のすきま」を攻める』を予習のつもりで読んでみた。日本語だとやはり助かる。英語が第2言語の聴講生には、この予習は欠かせないだろう。

もうひとつの予習の方法としては、Google Scholarで日本語と英語のキーワードで検索し、関連する日本語の論文を読んでみることが有効だと思った。カナ教授の講義のキーワードとしてはまずInstitutional voidというのが出てくる。著作の訳語では「制度のすきま」となっているが、関連論文を見渡してみると「制度の欠陥」と訳されている場合が多いようだ。

読み進むと、信頼できる市場情報や安定した政府方針など、ビジネス制度の基礎整備がなされていない途上国や新興国が多く、それを教授はInstitutional voidと呼んでいるということが理解できる。これくらいの予備知識が日本語で入っていないと、英語での聴講はなかなか厳しいのではないだろうかという感想を持った。

さて、本講座にもディスカッション用のフォーラムが用意されているが、前述のサンデル教授のフォーラムほどの盛り上がりはなかった。講座によって参加者のモチベーションに温度差があるのかもしれない

予習のための推奨読書

新興国マーケット進出戦略―「制度のすきま」を攻める

新興国マーケット進出戦略―「制度のすきま」を攻める

  • 作者: タルン・カナ,クリシュナ・G・パレプ,上原裕美子
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2012/02/02
  • メディア: 単行本
  • クリック: 4回
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楽しむも、マジで学ぶも、本当にあなた次第

HaravdXの講義を聴講してみて、講義のビデオは1本20分ほどであるが、それを自分のためにどれほど豊かな時間にするかは、本当に受講者次第だという感想を持った。予習復習や関連リサーチをしようと思えばいくらでも時間をかけることができるし、情報はキーボードをたたけば無限に出てくるのである。

ボーッとしていても20分、がっつり集中しても20分。しかし、下手の考え休むに似たり、というのもまた真実。この学びが今の自分に本当に必要なのか? 悩み過ぎずに、少しでも必要と思えば、即、始めるべし。ハーバードの門は、あなたに向かって開かれています!

というわけで今回は、いきなりハーバードの門をたたいてみました。次回以降もMOOCの向こうに無限に広がる知の世界を主体的に探究し続けますよ!

その他のコース紹介

Science & Cooking: From Haute Cuisine to Soft Matter Science(科学と料理:オート・キュイジーヌとソフトマター科学)

HarvardX

このコースでは、食物の「食感」を物理学的に探究します。世界の有名シェフが使うテクニックを科学的に分析しながら、おいしい実験を繰り広げます。フォーラムで参加者同士が、とっておきレシピもシェアしています。実験を試食できるのはここだけ!

Buddhism Through Its Scriptures(仏教を通して学ぶ宗教学)

HarvardX

時と場所を超えて広がる仏教徒たちの、豊かで多様性に満ちた儀礼について学びます。仏教にまつわる、厳選された読み物、聖典、芸術などを通して、自分の人生と仏や仏教との関わりについて理解を深めることができるはずです。この講座の受講には、仏教や宗教学に関する予備知識は必要ありません。

First Nights - Beethoven’s 9th Symphony and the 19th Century Orchestra(ベートーベンの交響曲第九番と19世紀のオーケストラ)

HarvardX

ベートーベンの交響曲第九番が初演された1824年のウィーンにタイムスリップ。4つの楽章をハーバード大学のケリー教授が徹底解説。あなたは時代を超えて愛され続ける作品の秘密に迫ることができるでしょうか? この講座の受講には、特に音楽の専門的な予備知識は必要ありません。

佐々木南実

文:佐々木南実

エンタメ、ビジネス、キッズ英語から国際バカロレアプログラムなどの教育の研究まで、幅広く英語を実践する通訳、翻訳者。世田谷で英語教室、キッズ英語劇団を主宰。筑波大学大学院教育研究科在学中。

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