迷ったら「あれ」をなくすとtheの役割が見えてくる!

本当に小さな単語だから、読み飛ばしてもなんとなく意味はわかる気がする、aやthe。ただ、実際に自分が英語を書こうと思うと、どちらを選択していいのか悩んだり、結局あいまいに書き進めたり、その結果、ちょっと違う意味で伝わっていたり……といったことはありませんか?この機会にじっくり冠詞と向き合い、問題を解いて、冠詞に対する感覚を研ぎ澄ましましょう。第5回では、theの役割についてさらに理解を深めます。

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「修飾語句」を気にしない

aとtheの使い分けは、「この表現には絶対に theを使う」とセットで覚えているものもあります。例えば比較表現の「最上級」はどうでしょうか。the kindest man(最も親切な人)、the most beautiful picture(最も美しい写真)のように theと一緒に使うように習います。the first snow(初雪)や the second boy(次男)などで使われている「序数詞」も、やはりtheとセットという感じがします。

しかし、これらはあくまでもtheと使うことが多いというだけであって、絶対の決まりがあるわけではありません。 冠詞は「修飾語句」をほとんど気にせず、あくまでもaとtheの本来の意味を伝えているだけ 。これが最後のポイントです。

最上級にtheを使うことが多いのは、「一番」という意味から対象を1つに絞ることができるから で、これは 第3回 で紹介したのと同じ考えです。the fastest boy in our class(クラスでいちばん足が速い男の子)は1人でしょうから、theが使われるのは当然です。このように ほかの誰かと比較して一番であることを表す形を「相対最上級」といい、こういうときにはtheを使います 。一方、ほかとは比べずに「本当にすごい」という気持ちを伝える「絶対最上級」という表現もあります。

Hakone is a most beautiful place !

箱根って、本当にきれいな場所よね!

このような場合、個人的な感想を述べているのであって、ほかと比べて「世界でいちばん美しい場所」だと言っているわけではありません。最上級と冠詞の組み合わせは、 候補 を1つに絞れる かどうか 次第で決まるのです。

迷ったら修飾語句をなくしてみる

少し難しいですが、序数詞にも aを使うことがあります。

I want a second chance.

もう一回チャンスが欲しい。

ここでは、「次の機会があることは予期しているけれど、確実にそれが起こるわけでもない」という不確定な気持ちをaが表していると考えてみましょう。つまり、second(2番目)という順序を意識しているというよりも、単純に another chance(別の機会)くらいの意味合いで使っているということです。

思い切って secondを取っ払って、I want a chance.(チャンスが欲しい)とI want the chance.(そのチャンスが欲しい)ではどちらがいいかを考えてみても、やはりここではaを使った方がいいのだとわかります。

aとtheの使い分けに迷ったら、思い切って「修飾語句」を取ってどちらにする方がいいかを考えるのがコツ なのです。

さて、以上のことを踏まえて、「自分の息子には兄弟がいない」ということを伝えたいとき、どちらの表現を使うのが自然でしょうか?

1. He is an only child.
  1. He is the only child.
正解
「一人っ子だ」と言いたいので an only childが正解です。the onlyは「唯一の」を示すので、例えば5人兄弟であっても、ある場所に1人しか子どもがいなければ使えることもあります。物語では「世界に一人だけの子ども」のようなことも考えられますね。

練習問題に挑戦!

掲載されている英文にはすべて、どこか一箇所に空欄があります。それぞれ、a(an)かthe、またはどちらも必要ない場合には×を書き込みましょう。

※空所が文頭で無冠詞の場合も、最初の文字は小文字になっています。

1. My husband says getting a dog was his decision , but it was actually my idea in (   ) first place !
  1. A: How’s your diet going?

B: Good, but I really want to eat (   ) second slice of cake.

  1. The team was behind on their deadline , and there didn’t seem to be a way for them to catch up . As (   ) last resort, they decided to skip one of the steps in the approval process , but it backfired when their product was recalled for not meeting safety standards.
正解

1. the

My husband says getting a dog was his decision , but it was actually my idea in the first place !

(夫は、犬を飼うことに決めたのは自分だと言っているけれど、実際には そもそも それは私の考えだったのよ!)

解説:犬を飼うことを「最初」に言い出したのは「私」だと 主張 しています。物事の「順序」に視点を置いているので、特定できるthe firstが正解です。

2. a

A: How’s your diet going?

B: Good, but I really want to eat a second slice of cake.

(A:ダイエットはどうなっているの?

B:いい調子よ、でも2個目のケーキを食べたくてしかたないわ)

解説:ここでは「順序」というよりも、「もう1つ」ケーキを食べたいという気持ちなのでa secondが正解です。 ちなみに 、a second helping(おかわり)という表現も、順序を気にしていないので、不定冠詞です。

3. a

The team was behind on their deadline , and there didn’t seem to be a way for them to catch up . As a last resort, they decided to skip one of the steps in the approval process , but it backfired when their product was recalled for not meeting safety standards.

(そのチームは締め切りに間に合わず、遅れを取り戻すための方法もなさそうだった。最後の手段として、 承認 手続き のうち、一つの 工程 を飛ばすことに決めた。しかし、彼らの製品が安全 基準 を満たしていないためリコールされ、そのことが裏目に出てしまった)

解説:仕事で時間が足りず、「最後の手段」として 承認 手続き を省いたようです。「きっとほかにも手はあった」と考えれば、不定冠詞でa lastを使います。「 承認 工程 を省くのが唯一の手段」とまで言う場合は、the lastですが、きっとほかにもありますよね。

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ENGLISH JOURNAL (イングリッシュジャーナル) 2020年3月号
  • 作者:  
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文:大竹保幹(おおたけ やすまさ)
神奈川県立厚木高等学校教諭。1984年、横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省 委託 事業英語教育 推進 リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーヴン・キング。12月18日に著書『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』(アルク)発刊。

構成:江頭茉里

※この記事は『ENGLISH JOURNAL』2020年3月号特集を再編集したものです。

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