120万人が利用した「1000時間ヒアリングマラソン」の復活記念対談【編集長が約40年の歴史を振り返る】

1982年から2023年まで約40年間、120万人に利用されていた通信講座のヒアリングマラソンが、語学学習アプリboocoで復活!今回は「1000時間ヒアリングマラソン」のこれまでの歴史について、通信講座時代の編集長たちにインタビューします。

「英語のシャワーを浴びる」ことの重要性を広めたヒアリングマラソン

ー永井さんと福岡さんはどちらも、ヒアリングマラソンの編集長をご経験されていますね?お二人がヒアリングマラソンの編集に携わっていた時期について教えてください。

永井: わたしは1990年にアルクに入社しました。入社後の初めの3年間はヒアリングマラソン編集部に在籍し、次に月刊ENGLISH JOURNALで2年間程、勤務した後、ヒアリングマラソンに編集長として呼び戻され、3年間ほど勤めました。その後、2015年にもう一度ヒアリングマラソンの編集長として復帰しているので、計3回、ヒアリングマラソンの編集に携わっています。

福岡: わたしは1989年に入社し、その後アルクでは多くの教材に携わってきましたが、ヒアリングマラソンに本格的に関わり始めたのは2019年頃です。通信講座としてのヒアリングマラソンの最終号となる2023年1月号まで、編集長を担当しました。

福岡さん

ーアルクに入社する前から、ヒアリングマラソンの存在は知っていましたか?

永井: はい、入社前から知っていましたね。高校の英語の先生がENGLISH JOURNALを定期購読されていて、「これはいい雑誌だから」とたびたび貸してくださってたんです。そこからヒアリングマラソンも知りました。

福岡: わたしもヒアリングマラソンは新聞の広告でよく見かけていたので知っていました。特に、日経新聞や朝日新聞に広告がよく出ていたと記憶しています。当時は英語学習用の音声コンテンツとしてまだまだラジオも主流でしたが、80年代にはカセットテープを使用した英語学習が一般的になっていきました。英会話学校も一つの手段としてありましたが、通信講座の方がコストパフォーマンスが高いと考えられていたので、人気があったのだと思います。

ー当時、ヒアリングマラソンは特にどんな人たちに受け入れられていましたか?

福岡: 当時は、「海外で働きたい」という人が今よりもたくさんいたんです。なので、そういう層にとってヒアリングマラソンは重宝されていました。

MTVが流行した時代で、例えばマイケル・ジャクソンなどの洋楽が大ヒットしていました。アメリカ文化が日本に大量に入ってきて、英語圏に対して憧れを持っている人がとても多かった時代です。また、当時は円がとても強かったので、海外旅行や留学への興味も高まっていました。その頃は海外旅行へ行くことが今よりもずっと気軽で当たり前だったように思います。海外に行く機会が多いので、「次はもっと英語が話せるように勉強するぞ」という意気込みの意味を込めた「成田決意」なんて言葉もよく耳にしました。

永井: 企業経由で受講される法人会員の受講生の比率も高かったですね。1990年代は日本企業の海外進出が進み、英語ができる人だけではなく、英語が苦手な社員も海外で勤務することが増え、英語学習への需要が高まりました。企業側も英語ができる社員を採用しないといけないと感じ始めて、TOEICが社員の採用基準にもなって受験者数が一気に増えた、といった時代背景も後押しになったと思います。

永井さん

ーそんな中、ヒアリングマラソンがヒットした理由や新しかった点はどこにあると思いますか?

福岡: 今ではよく使われる表現になっていますが、実は「英語のシャワーを浴びる」というフレーズはヒアリングマラソンが使い始めたんです。当時はまだ、「英語力を伸ばすためには、まずは英語に触れる量が重要だ」という認識はあまりなかったので、新鮮に映ったのではないでしょうか。

また当時の英語学習者のなかでは「人生でいつかはヒアリングマラソン」というフレーズがよく使われていましたね。それくらい認知度の高いヒットコンテンツだったと思います。ヒアリングマラソンの「1000時間」というコンセプトに、多くの人が興味を持った時代でした。

永井: 時代を先取りした、という点では、これはもう少しあとになってからの話ですが、ノンネイティブの英語を講座に取り入れたことが挙げられるでしょうか。今でこそ「英語の多様性」が言われるようになりましたが、当時はまだ「ネイティブ信仰」が強かった時代です。英語と言えば、イコール、標準的なアメリカ英語を指しました。

今では、例えば「Talk Today」というコーナーでは、インド出身者や中国出身者など、さまざまな非ネイティブの英語を聞けるようにしています。また、ネイティブの英語でも、アメリカだけではなくカナダやイギリス、アイルランドといった英語も収録しています。

ただやはり、最初のころは、ノンネイティブの英語を教材に入れると、「高い受講料を払っているのになぜなまりのある英語を聞かされるのだ」というお声を頂戴することもあり、試行錯誤の繰り返しでした。現在では、「インド人と仕事のやりとりが多いので、インド英語を聞き取れるようになりたい」、「イギリス英語にこだわって勉強したい」など、英語学習に対するニーズも多様化してきていますよね。その意味で、ヒアリングマラソンは、時代と共に進化したとも言えますし、時代をリードしてきた教材でもあったと思います。

3.11、コロナ禍でのヒアリングマラソン制作裏話

ーヒアリングマラソンの編集長のご経験のなかで、印象に残ってる受講生からのメッセージなどはありますか?

永井: かつてヒアリングマラソンでは「通信欄」を通じて、受講生から多くの質問やフィードバックが寄せられていたのですが、わたしは特に、3.11の東日本大震災のときのことをよく覚えています。

これはヒアリングマラソンの副教材の月刊ENGLISH JOURNALの話なのですが、東日本大震災で日本製紙の石巻工場が被災し、紙の供給が困難になるという出来事がありました。そのため、いつもとは異なる色味の紙を、一部使用せざるを得なくなったのです。このことについて編集後記でお詫びしたところ、受講生からは理解と共感を示す励ましの声が多く寄せられました。「災害」というひとつの出来事を通じて、同じ時代を生きる編集部と受講生のつながりを感じました。

福岡: わたしは新型コロナウイルスの流行期のことが印象に残っています。ヒアリングマラソンの音声収録は、通常は密室のスタジオで行われるので、ナレーターの方が出演を躊躇されるなど、難しい課題に直面したのです。そのためこの時期、一部の収録はZoomを介してリモートで行ったのですが、上空を通り過ぎる飛行機の音など、予期せぬ雑音に対処する必要がありました。

またヒアリングの教材なので、音質面でのクオリティが重要なのですが、もちろんZoomでの収録は音質も下がってしまいます。「新型コロナウイルス感染拡大防止のため、リモートで収録を行っております」と注意書きを入れたところ、1件もクレームが届かなかったことで、制作側としては胸を撫で下ろしたことを覚えています。コロナ禍の在宅時間を活かして「いつもより勉強が捗っている」という声も多くいただき、非常にやりがいを感じました。

ー最後に、これまでヒアリングマラソンを支えてくれた受講生の方々と、アプリ版で新たにヒアリングマラソンを体験していただく方々に、メッセージをお願いします。

永井: ヒアリングマラソンは「1000時間」というコンセプトなので、決して気軽な教材ではありません。でもそのおかげで、ヒアリングマラソンを走り抜いた皆さんは、やはり本当に英語の実力が付いた人ばかりです。「ヒアリングマラソンには本当にお世話になりました」とお礼を言われることも多いんです。そんな英語上達のための努力の1ページが、受講生の方々にとってのよい思い出になっていてくれたらいいなと思っています。

また、「1000時間」という目標を達成していただくために、脱落させないような工夫やさまざまな音源が盛り込まれています。アプリ版もリリースされたことですし、ぜひこれからたくさんの人にチャレンジしていただきたいと思っています。

福岡: 多くの日本人が英語を学んでいますけど、現地に行った時に聞き取れない、通じないと悩む方は多いですよね。ヒアリングマラソンは、「生きた英語」への入口として効果的に機能するので、たとえばTOEICで600点くらいを持っているけど、実践力に自信がない、といった方にはぜひおすすめしたいです。

またヒアリングマラソンのアプリ版がリリースされたことで、紙の教材のときに実現できなかった機能を新しく盛り込むことができています。AIによる発音評価の機能などはその一例です。実際に声に出して学ぶコンテンツが豊富なので、ヒアリングマラソンをすでに受講したことがある方にもない方にも、ぜひ試してみていただきたいですね。

boocoとは

boocoは、「英語の勉強をもっと便利に」をコンセプトに誕生した、アルクの参考書や問題集をスマホ一つで学習できるアプリです。電子版の学習参考書を読んだり、音声を聞いたりするだけでなく、書籍の内容を基に作成されたクイズを解いて力試しや復習も可能。累計530万部突破の「キクタン」シリーズ、TOEIC(R) L&Rテスト研究第一人者ヒロ前田氏の最新模試本『TOEIC(R) L&Rテスト 究極の模試600問+』など、「語学のアルク」の人気書籍・最新刊を多数取り揃えています。

ENGLISH JOURNAL編集部
執筆・構成:ENGLISH JOURNAL編集部

英語を学び、英語で学ぶための語学情報ウェブサイト「ENGLISH JOURNAL」が、英語学習の「その先」にあるものをお届けします。 単なる英語の運用能力にとどまらない、知識や思考力を求め、「まだ見ぬ世界」への一歩を踏み出しましょう!

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