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茂木健一郎さんが提案。人と人とのコミュニケーションでやってはいけないこと。

茂木健一郎の言葉とコミュニケーション 第7回

年齢を重ねたら自動的に「おばさん」「おじさん」になるわけではない。そう茂木健一郎さんは語ります。茂木さんが考える「おばさん化」「おじさん化」のポイントは、コミュニケーションの取り方にあるようです。

コミュニケーションの「達人」になるために

コミュニケーションにおいて大切な要素の一つは、相手の気持ちを思いやることである。

自分の言葉が相手にどのように響いているのか。

相手からは、自分がどんな風に見えているのか。

つまりは相手を自分の「鏡」として、そのことを常に意識して言葉を発することができる人が、コミュニケーションの「達人」となる。

逆に言えば、相手を気にしないで自分の好きなことを言う人は、コミュケーションにおいて失敗することが多い。

私は、年齢で人のことを決めつけるのが嫌だ。

だから、一定の年齢の人を「おばさん」とか「おじさん」とか言うのが好きではない。

年齢を重ねたからと言って、自動的に「おばさん」や「おじさん」になるわけではないし、外見だけで「おばさん」や「おじさん」が決めつけられるわけでもない。

むしろ、コミュニケーションにおいて「おばさん」化、「おじさん」化する人がいる。このことは、大いに自戒しなければならない。何よりも恐ろしいことだから

「始終たれ流し」おばさん

コミュニケーションにおける「おばさん」化とは何か。それは、端的に言えば「無意識のたれ流し」である。

自分が思いついたことを、まるで実況中継をするように口にしてしまう。相手がそれをどう受け止めるか気にせずに、とにかく声に出してしまう。

「あら、あなた、最近老けたんじゃないの」

「なんだか、冴えない顔ねえ」 

「ほら、あの人なんて言ったっけ、あの、ほら、あの人よ。あそこに座っている人」

それを聞いた人がどう受け止めるのかに関係なく、自分の脳裏に浮かんだことをとにかく話し続けてしまう。そうなってしまうと、その人は「おばさん」化している。

女性は、ある年齢になると「おばさん」になるのではない。無意識のたれ流しをするようになると「おばさん」になってしまうのである。

無意識のたれ流しという現象は、男性にも見られる。相手の気持ちに関係なく、思いついたことを言ってしまうようになると、その人は「おじさん」である。

「偉そうな態度」おじさん

加えて、男性に固有の「堕落」もある。

猿山のボス争いを見ていてもわかるように、男性というものはお互いの間の力関係、序に敏感なものである。どちらの方が地位が上か下か、お互いに読み合ってコミュニケーションをする。

年齢を重ねていくと、次第に地位も上がっていく。そうなると、コミュケーションの取り方が「おじさん」化する人が現れる。

自分の意見に対して相手がどのように感じているか、どんな意見を持っているかを気にせずに、とにかく自分の方が正しい、相手の言うことなど聞く必要がない、という態度が出始めてしまうと、その人は「おじさん」である。

要するに、普通に言えば、「偉そうな」態度で話をする人は、「おじさん」化している。だからこそ、かわいらしい「おじさん」は貴重である。そのような人は偉そうではないからである。

「おやじギャグ連発」おじさん

コミュニケーションの「おじさん」化は、意外なかたちで現れることもある。

いわゆる「おやじギャグ」は、「おじさん」化の一つのれである。

科学的な研究により、笑いには政治的な要素があることが示されている。年上の男性と年下の男性がいっしょにいると、いわゆる「お追従笑い」をする確率が高いのは年下の男性の方だというデータがあるのである。

つまり、年上の男性(「おじさん」)がつまらないギャグを言うと、年下の男性は(たとえ面白くなくても)笑わざるを得ない。「オヤジギャグ」が一つの「権力の使」になる。

職場などで、上司が「おやじギャグ」を言ってみんなが(仕方なしに)笑うという光景がよくあるが、あれが、典型的な「おじさん」の振る舞い。「権力者」にみんなが合わせているという現場である。

思いついたことを「仕分け」する

では、「おばさん」化、「おじさん」化は、どうしたら避けられるのだろうか。

人間は、いろいろなことを思いつくものである。精神分析学の創始者であるフロイトが指摘したように、心の中に浮かぶもののなかには、人に見せるべきではないものもある。

他人に何かを言う前に、その言葉が相手にどのように伝わるのか、それに対して相手はどう思うか、あらかじめシミュレーションする。いわば、他人という「鏡」に映った自分の姿を考えることで、たとえ何か思いついても、言うべきことと言わないことをあらかじめ「仕分け」しなければならない。

それは、お化粧をすることに似ている。他人という鏡に映った自分の姿を見て、これは言うべきことではない、これは言ってもよい、このような表現で言うのがよいと調整することによって、「おばさん」「おじさん」になるのを避けることができるのである。

逆に言えば、「おばさん」化、「おじさん」化してしまうということは、すっぴんよりもひどい状態だということになる。いわば、鏡も見ずに適当に化粧を塗りたくって、そのまま街を歩いてしまうような、そんな「罰ゲーム」状態だということになる。

自ら招いた罰ゲーム。コミュニケーションにおける「おばさん」化、「おじさん」化は、考えてみると恐ろしいことである。

そして、もったいない。

どんなに素敵な人も、「おばさん」化、「おじさん」化することで、その良さが伝わらなくなってしまう。

自分の魅力を十分に伝えるためにも、コミュニケーションにおける他人という「鏡」を大切にしたい。そうすれば、何歳になっても「おばさん」「おじさん」になることがない。コミュニケーションにおける「アンチエイジング」だ。

コミュニケーションにおけるアンチエイジングをせよ!

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ けんいちろう)

1962年東京生まれ。脳科学者、作家。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。東京大学大学院物理学専攻課程を修了、理学博士。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。

写真:山本高裕(GOTCHA!編集部)