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中国で「干杯」と言うと全部飲み干さないとダメ? 知らないと泥酔確定「乾杯三原則」

2017年3月に発売する書籍『中国とビジネスをするための鉄則55』(アルク刊)から、これから中国とのビジネスを始めたい人、中国出張・駐在を控えている人たちに向けて、現地で役立つ情報をQ&A形式でご紹介します。第2回は「知らないと恥をかく『食事』と『お酒』のマナー」です。

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Q 中国人との食事で守るべきマナーは? 

A  お酒を飲むときは「誰かを誘って飲む」こと、1人で飲まないのが基本原則です

「お酒を飲むときには誰かを誘って飲む」、これは食事の席でぜひ守ってほしいマナーの基本中の基本です。つまり、お酒を飲むとき、テーブルのグラスを手に取って1人で飲んではいけません。これはホストに対してまた食事会に同席している人たちに対して大変失礼な為です。

お酒を飲むときはグラスを手に取って、一緒に飲む相手を探します。たとえばホスト役が陳さんであれば、グラスを陳さんの方に向けて、「今日はお誘いありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えて一緒に飲みます。これが「誰かを誘って飲む」ということです。

たとえば、仕事で王さんにもいろいろお世話になったとすれば、次に王さんを誘って飲みます。グラスを王さんの方に向けて、「王さん、いろいろお世話になりました」と一言。感謝の気持ちを伝えて、2人で一緒に飲みます。

また、隣の席の林さんと李さんを誘って、「今後ともよろしくお願いします」と3人で一緒に飲んでもいいですし(1対2)、日本側が2人で一緒にホスト役の陳さんを誘って飲むこともありです(2対1)。

2~3人のグループで1人を誘ったり、1人で複数の人を誘ったり、グループ対グループでも構いません(多数対1、1対多数、多数対多数)。日本側全員でホスト役の陳さんに謝意を示すために誘ったり、日本側を代してあなたが中国側全員を誘ったり、誘う方法はさまざまです。

グラスを手に1人でちびちびと飲んでいる人を見掛けると、はらはらしてしまうことがあります。これはホストに対して大変失礼な為です。必ず誰かを誘って飲むというのが基本中の基本。食事の席でぜひ守ってほしいマナーです。

お酒はついであげても、ついであげなくてもいい

グラスが空いたとき、自分で自分のグラスにお酒をつぐことは構いません。日本では自分で自分のグラスにお酒をつごうとすると、隣の人がビール瓶やお酒の徳利を取り上げるように手に持って、「私がおつぎしましょう」とお酒をついでくれます。お互いについであげたり、ついでもらったりすることが一般的です。日本では相手についであげることが大切なマナーと心得ている人も多いでしょう。

しかし、中国では必ずしも相手にお酒をついであげなくても大丈夫です。ついであげてもいいし、ついであげなくてもいいのです。もちろんついであげることは親切になりますが、ついであげなくても失礼にはなりません。

あなたがゲストならお酒をついでもらってもいいですし、自分のグラスに自分でついでも構いません。これが中国流です。しかし、先に述べたように、自分でついだお酒を自分1人でちびちび飲むのはダメです。「誰かを誘って飲む」、こちらの方が大切なのです。

1人でちびちび飲んでいる人はこう見られる

もし、あなたが自分の席で誰も誘わずに1人で飲んでいたとしましょう。するとあなたはホスト役や食事会に参加したほかのメンバーからこう見られているはずです。


「どうしたんだろう? 今日の料理は口に合わないのかな?」
「何か接待がき届いていないところがあるのかな?」
「何か失礼なことがあったかな?」
「早く帰りたいのかな?」
「仕事で何かトラブルでも抱えているのかな?」


誰も誘わずに1人でちびちび飲むことは、ホスト役に対して大変失礼な為であるだけではなく、一緒に食事会に参加しているほかのメンバーに対しても失礼な為です。「誰かを誘って飲む」、このことを忘れないでください。

また、誘って飲む順番にもマナーがあります。あなたがゲストなら、まずホスト役の陳さんを誘うことがマナーです。次にホスト2位の方、ホスト3位の方、ホスト4位の方と、中国側のメンバーを1人ずつ誘って感謝の気持ちを示すことが理想的です。

もし、テーブルが2つあったら、それぞれのテーブルを回ってその席のメンバー全員に声を掛けて一緒にお酒を飲む(1対多数)、これも大切なマナーです。そのテーブルに重要な人物がいたら、1対1で飲むとよいでしょう。

食事会でこのルールを忘れて1人でお酒を飲んでいる人を見かけることがあります。誘い合って飲むことを忘れている人がいないかどうか、日本人同士でお互い意識し合って、マナー違反がないように心掛けたいものです。

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Q お酒の席でぜひ知っておきたい「乾杯三原則」とは?

A 誘い合って飲む、飲む量を確認し合う、「干杯」と言ったら杯を全部飲み干す、という三つの原則のことです。

お酒の席で守るべきマナーの基本を「乾杯三原則」と名付けました。ぜひ覚えてください。

第一原則:「お酒は誘い合って飲む」

まず、第一原則とは、「お酒は誘い合って飲む」。これは先ほど紹介したポイントです。手元のお酒を飲みたくてもちょっと我慢。グラスを手に取って1人で飲んではいけません。まずは周りを見渡し、手が空いている人がいないかどうかチェックしてください。

手が空いている人を見つけたら相手に合図を送り、グラスを向けて「一緒に飲みましょう」と誘います。このように「お酒は誘い合って飲む」というのが第一原則です。繰り返しになりますが、1人ちびちび酒を飲むのは相手に対して失礼な為。マナー違反になるので注意してください。

第二原則:「飲む量を確認し合って飲む」

「飲む量を確認し合って飲む」、これが第二原則です。ここで3つの中国語を紹介します。「干杯」(ガンベイ)、「半杯」(バンベイ)、「随意」(スェイイー)という言葉です。覚えておくとお酒の席で大変役立つ中国語です。ぜひ覚えて食事会で活用してください。

  • 「干杯」とは日本語では「乾杯」という漢字。読んで字のごとく「グラスのお酒を全部飲み干す」という意味です。
  • 「半杯」とは、「グラスのお酒を半分だけ飲む」という意味。
  • 「随意」とは、「好きなだけ飲む」「飲めるだけ飲む」という意味です。「好きなだけ」なので、グラスにちょっと口をつけるだけでも構いません。つまり、自分で飲む量を決めてマイペースで好きなだけ飲むことができます。

第一原則で誘い合って飲むときに、「干杯」なのか、「半杯」なのか、「随意」なのか、まずは相手の意向を確かめ、お互いに飲む量を確認し合ってから飲みます。

こちらが「随意」で誘い、相手も「随意」と応えたら、合意成立。お互い「随意」の方法でお酒を飲みます。「半杯」の場合も、「干杯」の場合も同じです。飲む量を確認し合って飲む、これが第二原則です。

第三原則:「干杯」と言ったら杯を全部飲み干すこと

第三原則はいわゆる「一気飲み」の原則です。グラスのお酒を一滴も残さずに全部飲み干すことが「干杯」です。一気に飲み干し、飲み残しは許されません。たとえば、第二原則で飲む量を確認するとき、双方ともに「干杯」で合意したら、お互い杯のお酒を全部飲み干さなければなりません。完全に飲み干し、グラスの底を相手に見せて、お酒が残っていないことを確認し合います。

では、第二原則でお酒を誘い合って飲むとき、こちらが「随意」で相手が「干杯」と言ってきたらどうすればよいでしょうか? こちらはもう飲めないから「随意」にしたいのに、相手が執拗に「干杯」で誘ってくるようなケースです。

「随意」より「半杯」、「半杯」より「干杯」が強いカード

この三つはトランプのカードと同じと考えてください。「随意」より「半杯」の方が強いカードです。「半杯」より「干杯」の方が強いのです。つまり、相手が自分より強いカードを出してきたら、相手に従わなければならないというのが基本原則です。

自分がいくら「随意」で飲みたくても、中国の宴会はそう甘くはありません。相手があなたの「随意」を認めず、「干杯」を主張してきたら、相手の「干杯」に従わなければならないのです。もしも、あなただけ飲み干さずにグラスにお酒を残すと、相手の面子をつぶす大変失礼な為になります。自分もお酒を残さず飲み干して自分の面子を示しましょう。

こうして誘い誘われ、飲む量を競い合い、時には駆け引きを楽しみながら食事会が進みます。中国の宴席はこうして人間関係を深め、相手との距離感を縮める大切な場なのです。

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Q 食事会の席にビジネスの話を持ち込むのは失礼?

A 会議などの「公式折衝」と食事会などの「非公式折衝」をうまく使いこなしましょう。食事の場もビジネス折衝の最前線ととらえ、積極的に活用すべきです。

「食事の席では仕事の話は控えるべき」「食事の席で重要な話を持ち出すのは相手に対して失礼」と言う人がいますが、中国では必ずしもそうではありません。中国ではむしろ食事の場こそビジネスの最前線と考えるべきです。

中国人は、お酒を飲んだり、料理を食べたりしながらでも、自分たちの考えをどんどんぶつけてきます。食事会でビジネス折衝や商談がわれるのはよくあることです。むしろ、食事の席だからこそ重要な話を切り出してくることがあります。

会議室では言わなかった「落としどころ」を見せてきたり、お酒の席だからこそ言える本音を出してきたり、実は食事会の席で意外と重要な事柄が決まることもあります。調整や妥協が出てきて話が一気に進んだりすることもあるのです。

会議室でのミーティングが「公式折衝」であれば、食事会の席は「非公式折衝」の場です。中国人はこの公式折衝の場と非公式折衝の場をうまく使ってビジネスを進めます。日本側も遠慮をすることはありません。場の雰囲気を見ながら、食事会にビジネスの話を積極的に持ち込んでみましょう。

公式折衝の場と非公式折衝の場を使い分ける

公式折衝の場とは、会議室やミーティングルームで行う会議のことです。テーマを決めて交渉を進める公式な折衝の場です。ネットを使ったテレビ会議も公式折衝の場といえるでしょう。そこでのコメントや議論の過程が議事録という形で記録に残れば、すべて公式折衝の場です。

一方、非公式折衝の場とは、会議室やミーティングルーム以外の場です。食事会のレストランやティータイムの喫茶店、ホテルのロビーや空港の待合室、タクシーや送り迎えの車の中も非公式折衝の場といえます。

さらに、エレベーターの中や廊下を歩きながら、階段の上り下りの場面も非公式折衝の場です。ゴルフコンペの時間、観光地の散策、自宅に招かれてくつろいだ雰囲気でのおしゃべり、こんな場面も非公式折衝の場といえるかもしれません。さまざまな場面をビジネス折衝の場として活用します。

時には食事の席もビジネスモードで臨むべき

特に食事会は重要です。ランチの時間を「休憩時間」と考えるのではなく、むしろ食事の席はビジネスの最前線ととらえて、積極的にビジネス折衝や交渉に持ち込むべきです。これは中国や台湾でのビジネスに長年携わってきた経験から導き出した、筆者の持論です。

夜の食事会はより重要です。相手とお酒を酌み交わしながら話を進めることで、「公式折衝」にはない和やかな雰囲気やざっくばらんなムードを作り出すことができます。「本音」を気兼ねなく言ったり聞いたりすることができる場なのです。

もちろん、食事会の主旨や集まったメンバーによって仕事の話は控えた方がよいケースもあります。お酒を飲みながら話すべきことなのか、複数の関係者が集まる食事会で話すべきことなのか、判断が求められることもあるでしょう。

その場その場の状況に応じて、話をどう切り出すかは慎重に考えることも必要です。しかし、「けじめをつけて」「場をわきまえて」ではなく、むしろ積極的に会議室やミーティングの場では話しにくかったことを発言してみるべきです。

もしかしたら相手もそれを期待しているかもしれません。時には食事の席も完全ビジネスモードで臨むことをお勧めします。さまざまな機会を利用してビジネス折衝を有利に導く努力は心掛けたいところです。

相手の本気度をチェックする方法

私は、ビジネスで知り合った相手に興味を持ったら、まずは食事に誘ってみることを心掛けています。長年中国ビジネスに携わっていると、自分の方も中国人的な発想が肌に染み付いてきました。

「ぜひ、食事にお誘いしたいと思いますが、よかったら親しい友人にも声を掛けてください。ご一緒にどうですか?」と、こんなふうに誘ってみます。

相手がすぐに応じてくれるか、どんな友人に声を掛けて連れてくるか、こうした相手の反応が本気度のバロメーターになります。そういう意味でも食事会は重要なビジネスの場です。

「ぜひ、吉村さんに紹介したい」というキーパーソンを連れてくるか、とりあえず身近な友人をさらっと連れてくるか、声を掛けて集めたメンバーによって相手の本気度が分かります。もちろん最初から切り札を出してくるとは限りません。相手の方も様子見かもしれませんが、食事会に集まるメンバーで相手のネットワーク力を知り、相手の本気度を確認することができるのです。

文:吉村 章
1961年生まれ。87年から台湾でビジネスマン向けの日本語教育に携わり、96年台湾最大のIT関連業界団体、Taipei Computer Association(TCA)へ移籍。同年、駐日代として帰国。2001年からは中国に進出する日本企業支援が業務の柱となり、現在に至る。中国への出張者・赴任者向けの異文化研修や地方自治体向けの海外市場開拓セミナーの講師を務めるなど幅広く活動。『知識ゼロからの中国ビジネス入門』(幻冬舎)、『中国人とうまくつきあう実践テクニック』(総合法令出版)など著書多数。ASIA-NET、株式会社クロスコスモス代取締役、TCA東京事務所駐日代。ホームページ:ASIA-NET