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英会話力ゼロから単身渡米・留学を可能にした5つの英語スキル習得法

米大学博士の英語独習法

どうして日本には英語ネイティブスピーカーと「対等」に渡り合える人が少ないのか?英会話力「ほぼゼロ」の状態から、英語を独自に猛勉強して単身渡米し、米名門大学院で神経科学の博士号を取得した、さかいとしゆきさんが、自身の経験を基に、世界に通用する英語力、思考力、表現力、コミュニケーション力を身に付ける方法を紹介します。第1回は、「渡米前に留学準備として行った英語独習法」です。

療養を機に夢が再燃し渡米を決意

私の人生の最大の転機は、日本の大学入学直後に突然訪れました。

経済学部に入ったものの、どうしても勉強に興味が持てず、将来に対する不安から悶々(もんもん)とした毎日を過ごしていました。そんなある日、アルバイトと勉強の両立からくる過労から体調を崩し、休学せざるを得なくなってしまったのです。

当時は、社会のレールから脱落してしまったと感じ、悲嘆に暮れる日々を過ごしていました。しかし、しばらくして、私の心に大きな変化が訪れました。

私はそれまでずっと、人の「こころ」の問題に強い興味を持っており、いつの日か心理学を学びたいと漠然と思っていましたが、心理学で生きていく勇気はありませんでした。

しかし、休学して自宅で療養していた私の中で心理学への憧れが再燃したのです。人生一度きり、自分が本当に興味のあることを勉強して生きていきたいという思いが次第に確信へと変わっていきました。

その結果、心理学の先進国であるアメリカで学ぶことを決断したのです。

渡米への最大の壁「英語が全く話せない」

ところが、渡米するには大きな壁がありました。私は、英語が全く話せなかったのです。

中学・高校の英語の授業では常に好成績を取っていて、なんとなく英語には自信があったはずでした。しかし、いざアメリカのテレビ番組を見てもさっぱり内容が分からないし、英語で話そうとしても片言ですら話せないという状態でした。

アメリカで生活し学ぶために必要な5つの英語スキル

アメリカで一人で生きていくための英語力を習得するには、アメリカ人が実際に使っている「生きた英語」を習得する必要がありました。

具体的には、少なくとも次の5つのスキルの習得が不可欠と考えました。

1. アメリカの大学レベルの読解力を付けるための「生きた語彙」

2. 語彙が実際に日常でどのように使われているかの「コンテクスト」(背景)の知識

3. アメリカの学生たちと学校内外で対等に渡り合うための、英語を通しての「知識ベース」の拡大

4. どんな英語を話す人とも、どんな話題でも、コミュニケーションできる「柔軟な英会話力」

5. アメリカの大学で必須スキルとされている「英語ライティング」能力

この5つのスキルを身に付けるために私が行った4つの学習法(2.と3.は同じ方法で並行して身に付けました)を、これから紹介します。

ネイティブと対等にコミュニケーションできる英語力の習得

具体的な習得法の説明に入る前に、確認しておきたいことがあります。

それは、私の学習の目的は、日本の英語検定試験やその他の試験をパスすることだけではなかったということです。ネイティブスピーカーと本当の意味で「対等」にコミュニケーションできる英語力の習得が、最大の目的でした。

5つのスキルには中学・高校の基礎英文法は含めていませんが、それはもちろん重要です。しかし、基本以上・以外の文法にこだわることはおすすめしません。なぜかというと、英文法をマスターすることは、「生きた英語力」の向上には直結しないからです。

ここでは、あくまで、「生きた英語」を通して英語力を上げることを強調します。

では、各スキル習得の学習法について詳しく説明していきましょう。

学習法1:数千の「生きた語彙」を習得

中学・高校の英語の授業では常に好成績を取っていた私でしたが、実際のテレビや雑誌などの英語は全く理解できませんでした。

その一番の理由は、「生きた英語」の語彙の決定的欠如でした。日本の学校の英語の授業で強調される英語の語彙と、実際にアメリカで使われている「生きた英語」の語彙は、想像以上にかけ離れていたのです。

これを克服するために一番効果があったのは、「アメリカ人にとっての常用語彙」を飛躍的に増やすことでした。

私は、常用単語集(英検1級の単語集など)を購入して、自分の知らない単語のみを「数千個」覚えました。

「数千個」覚えることには、実は深い理由があります。アメリカの辞書にはおよそ50万語近くが収録されていて (ウェブスター辞典調べ*1)、科学などでしか使われないマイナーな言葉を含めるとおよそ100万語近くあると言われています。

しかし、この100万語のうちの多くは、アメリカ人でさえ、めったに目にすることのない単語です。逆に、英単語の中には、何度も何度も繰り返し使われるものがあります。

幸運なことに、3000から5000の最も一般的な常用英単語を覚えれば、およそ8割から9割のネイティブの会話や英語の読み物を理解するのに必要な語彙をカバーできると言われています*2

この数千の常用単語のうち、自分が知らなかった単語を全て覚えるというのが、私の英語の壁の突破口となる一番の解決策でした。特にそのうちの基本的な2000~3000語をまず覚えることが、英語力を飛躍的に伸ばすのに必要不可欠です。

当時の私は、起きている間は声に出す、書き出す、声を録音して聞くなど、あらゆる手段を使って語彙力の向上に努めました。

そして実際、2000語を覚えた辺りから、目に見えてその効果が表れてきました。英文の記事やエッセイなら、何を見ても、分からない英単語がほぼなくなっていたのです。それは、視界から深い霧が一斉に消えていくのを見ているようで、爽快な感覚でした。

学習法2:「コンテクスト」を知り「知識ベース」を拡大

語彙力の向上はとても重要ですが、単語を暗記するだけでは、ネイティブスピーカーと「対等」にコミュニケーションすることはできません。なぜなら、単語は常に会話や文章の「コンテクスト」(背景)と密接に関連して使われるからです。

多くの似通った意味の単語の中から、特定のコンテクストに合った最適の単語を瞬時に選ぶ能力が必要です。これは、「生きた英語」を通して学ぶ以外、方法はありません。

私の場合、週刊ニュース誌の『TIME』(タイム)のような、アメリカ人が好んで読むメディアを使って、「コンテクスト学習」を行いました。毎週、同誌に載るほぼ全ての記事を読み、あらゆるトピックについて、どのような背景でどの単語が使われるのかをセット(単語+コンテクスト)で覚えました。

それに加えて、各パラグラフ(段落)の要約を英語で書く練習も同時に行いました。

この学習法には、もう一つ、大きなメリットがありました。

それは、世界のあらゆる事象についての最新記事が載っている『TIME』誌を毎週読むことで、科学、政治、文化など、さまざまなテーマに対する理解が、英語を通して深まり、自分の「知識ベース」が飛躍的に広まったことです。そのため、多様なテーマについて英語で考え、書き、話す能力が自然と伸びていきました。

学習法3:「柔軟な英会話力」を習得

1.と2.の学習をする過程で、英検1級の一次試験に合格することができました。しかし、面接形式の二次試験であっけなく落ちてしまいました。

不合格の原因は2つありました。

一つは、面接官からの質問に対して、瞬時に英語で意見を言う能力の欠如です。

当時の私は、まだ頭の中で日本語で言いたいことを考えてから、それを英語に訳すという、日本語から英語への「直訳」をする癖が残っていました。残念ながら、この「直訳英語」はほぼ、アメリカ人に通じませんでした。

そのため、普段から、英語のみで考え、瞬時に意見を述べる能力を、ネイティブスピーカーとの実際の会話を通して身に付けることが必要でした。

もう一つの原因は、どんなスタイルの英語を話す人にでも対応できる「柔軟な英語コミュニケーション能力」の欠如です。

それまで私は、録音されたネイティブスピーカーの会話やスピーチを繰り返し聞いてシャドーイングするという練習をしていました。しかし、それでは実際の英会話能力はなかなか伸びませんでした。

私たち一人一人が個性的な日本語を話すように、アメリカ人の一人一人が、個性的なスタイル、アクセント、そしてスピードで話します。ですから、同じ人が話す英語を録音した音声をずっと聞いていても、うまくなるのは、その特定の人が話す英語を理解する能力だけなのです。

これらの弱点を克服するため、私は、地元の英会話教室に通い、複数のネイティブスピーカーの先生と、週に数回、1対1のレッスンを受けました。毎回、ネイティブスピーカーがどうやって話すのかを食らいつくように必死に観察し、ひたすらまねる練習をしました。

英会話教室ではさらに、ネイティブスピーカーが使わない英語を私が話したときは、その場ですぐに訂正してもらう「コーチング」を徹底的にしてもらいました。

異なる先生たちと話すことで、初対面の相手のスタイルに即座に合わせて話す「柔軟性」が伸びていきました。

この練習を数カ月続けることで、晴れて英検1級にも合格することができました。

学習法4:ライティング技術を長期的に訓練

英語の読解力と会話力に加えてもう一つ、アメリカの大学で求められる重要な能力があります。それは、「英語でエッセイを書く能力」(英語ライティング力)です。

エッセイには構成における「特有のルール」があり、それを習得するには、実質、年単位の時間がかかります。

一部の分野を除いて、アメリカの大学のクラスの多くでライティングの課題が成績の一部に含まれます。教授によるエッセイの採点はしばしば厳しく、ライティングが不得意な学生が好成績を維持することは、非常に難しいのが現実です。

ですから、ライティングの練習をおろそかにすると、大学で非常に苦労することになってしまいます。

では、そのような英語ライティングと日本語のエッセイはどう違うのでしょうか?

一番の違いは、ライティングでは、パラグラフごとに自分の主張を「トピックセンテンス」(topic sentence)という形で明確に述べる必要があることです。そして、その主張複数の事実で裏付ける必要があり、「主観による憶測」は全く評価されません。

各パラグラフの「トピックセンテンス」は全て、エッセイの冒頭で述べる一番重要な主張、いわゆる「主題文」(thesis statement)を裏付けるために書かれます。

このライティングの構成上、アメリカの大学では、はっきりした主張を理路整然と述べるエッセイが大いに好まれます。逆に主張や立場が曖昧で、事実に乏しいエッセイは評価されません。

このライティング力を上げるため、私は、アメリカに渡るまでの約1年関、世界のあらゆる分野のテーマについて、タイマーで時間を測って、短時間でエッセイを書く練習をひたすら続けました。

すると次第に、どんなトピックを見ても、瞬時に自分の意見をエッセイにまとめることができる柔軟なライティング力が付いていきました。

その結果、英語でエッセイを書くことが好きになり、渡米後には、大学のライティングの先生のすすめで、地元のアメリカ人にライティングを教えるチューターを務めるほどになっていました。

渡米前の最大のジレンマ「それでもまだ英語が話せない」

これらの独習法で、英検1級にも受かり、アメリカの大学入学に必要なTOEFLでも満点に近い高得点を獲得することができました。

そして、アメリカの大学への入学も決まり、ついに渡米の準備も整いました。

しかし、私にはまだ大きな問題が残っていました。可能な限り英語力を向上させたつもりだったのですが、私はまだ満足に英語を話せなかったのです。

本当にネイティブスピーカーと「対等」に話せるようになるには、渡米後の「アクティブ・イマージョン」(active immersion)の経験を待たなければなりませんでした。

 

※次回の記事は、11月15日に公開予定です。

 

さかい としゆき:日本の大学を、体調を崩して休学後、英会話力「ほぼゼロ」の状態から英語を独自に猛勉強し、単身渡米。世界有数の米名門大学を優秀な成績で卒業。その後、米名門大学院で神経科学の博士号を取得し、研究者の道ヘ。アメリカ在住。英語を全く話せなかった自分が、どうやって現地のアメリカ人と「対等」に話すための「生きた英語」を習得したかを伝えるため、日本での執筆活動を開始。

編集:GOTCHA!編集部

*1:How many words are there in English? <https://www.merriam-webster.com/help/faq-how-many-english-words>

*2:Dang, T.N.Y. &Webb, S. (2014). The lexical profile of academic spoken English. English for Specific Purposes. 33, 66-76./ Nation, I.S.P. (2006). How Large a Vocabulary Is Needed For Reading and Listening. The Canadian Modern Language Review. 63 (1), 59-82.