日本にいながらにして使える英語を身に付けようとすると直面するさまざまな悩み。この連載「通訳者の英語学習解決室」では、短大卒業時に英検4級、TOEIC 280点ながら、そこから3年半で通訳者デビューした「国産同時通訳者」、小熊弥生さんが、今日からできる解決法を教えます。今回の相談は、「英語を話すときに、日本語から訳すのではなく、英語で考えられるようになりたい」です。
相談:英語を話すときに日本語から訳す癖をやめたい
今回のご相談は、「英語を話すときに、まず日本語で考えてから、それを英語に訳しているのをやめて、最初から英語で言えるようになりたい」です。
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通訳者の私も、英検1級、TOEIC 900点台のときに日本語で考えていました
つい日本語で考えてしまうという癖、本当によく分かります。
私も、その癖をやめたいと思って、英語で考えようとしても、さっぱり考えが進まず、「自分はばかになってしまったのかな?」という疑問を持ったことさえありました。
それで、結局また日本語で考えてしまったのですが、そうすると、いざ英語でコミュニケーションを取るとき、相手の英語を日本語に訳して理解して、自分の答えを日本語で作ってから英語に訳して話すので、英語ネイティブスピーカーとの会話には到底ついていけない状態に陥っていたのです。
この状態は、英検1級に合格し、TOEIC 960点を取得した後も続いていました。ですから、英語学習中にこのように悩むことはごく当たり前のことです。まずは安心してください。
しかも、これを脱するために英検1級やTOEIC 960点は必ずしも必要ありません。
英語だけで考える時間を日常で作る
あなたに足りないことは、英語だけで考えて過ごす時間を、日常の中に少しずつ取り入れていくことです。
「え、でも、それだと自分の考えが全然進まなくて・・・」と思うかもしれませんね。
はい、それでもいいのです。
泳ぎを学ぶときのことを考えてみてください。まずは水に慣れましょうと水に入りませんか?そして、頭で理解した内容を体に落としていきますよね。そうするうちに、ふっと水に慣れたとき、力が抜けて、泳げる。そんな感覚を思い出してください。
泳げない人は、自転車でも大丈夫です。補助輪を外して走ったとき、最初は何度も転びますよね。でも、ふっとバランスが取れるようになって、すっとこげるようになる。そんな感覚です。
私も最初のころは、やっぱり英語だと考えが止まってしまっていました。それは仕方がないのです。しかし、そこで諦めないでください。いずれ英語でスムーズに考えられるようになるためのコツが3つありますから、それをこれからお伝えしていきますね。
英語で考える「場所」を限定する
まずは、場所を限定して、そこにいるときだけ英語で考えるようにしましょう。
例えば、「トイレに行ったら必ず英語で考える」というルールを自分で作るのです。それなら短い時間ですから、そんなに負担になりません。
慣れてきたら、英語で考える場所を少しずつ増やしていきましょう。次はお風呂でも、そして朝のシャワーでも、さらに通勤電車でも、と、こんな感じです。
こうすることで、英語で考えている時間を増やせているという実感も湧きやすいので、継続もしやすくなりますよ。
英語で考える「内容」を決める
次のアドバイスは、英語でどんなことを考えるのかを決めることです。
例えば、トイレでは自分の感情を考えよう、とルールを決めて、英語で考えてみてください。
I am happy because I got a great response from my client.
私は幸せです。なぜなら、顧客からとても良い回答をもらったからです。
お風呂では、今日の出来事を英語で言ってみましょう。
I went to work today, and my day went pretty well.
今日、私は出社し、一日とてもうまくいきました。
I got a new client, and they were really happy with my sales presentation.
新しい顧客を得て、私の営業のプレゼンにとても喜んでくれました。
I got home at 8 p.m. and enjoyed the dinner my lovely husband prepared for me.
夜8時に帰宅し、素晴らしい夫が作ってくれた夕食を頂きました。
Now I am taking a bath, relaxing and looking back at how my day went.
今はお風呂に入って、リラックスしながら、一日を振り返っているところです。
こんな感じでOKです。
これができるようになったら、今度は質問に答えることもしていきましょう。その際のコツが、次に紹介する3つ目のアドバイスです。
英語で会話する「相手」を想像する
会話は、すてきな人とできるとワクワクしますよね。ということで、ぜひ、自分が憧れる海外の俳優やアーティストを思い浮かべましょう。そうすることで、やる気がグンと上がります。
例えば私の場合、頭の中に登場する頻度が高いのは、アメリカの俳優で司会者のオペラ・ウィンフリーさんです。
会話したい相手を思い浮かべたら、「大好きな人にもし会えたら、どんな質問をしたいか?」という視点で考えて、いろいろ頭の中で会話をするのです。これを、私は「妄想英会話」と呼んでいます。
どうしたらいいのかコツがつかめないときは、日本語字幕付きでいいので、妄想英会話の相手のインタビュー動画を見たり、日本語でもいいので、インタビュー記事を読んだりしてみましょう。
例えばオペラ・ウィンフリーさんなら、YouTubeにこんなスピーチがあります。
このような動画を見ると、その人のメッセージが読み取れます。そこから湧いた疑問を頭の中の相手に聞いてみたり、相手がどう答えるかを自分で考えてみたりして、妄想の会話を続けるのです。
このウィンフリーさんの動画では、彼女が「Who am I?」(自分は誰か?)、「What do I want?」(自分は何がしたいか?)ということを考えてみましょう、と質問を投げ掛けてくれています。これらの質問に答えるところから妄想英会話をしていくと、どんどん慣れていきますよ。
Who am I?
私は誰?
I am Yayoi.
私は弥生です。
I am a woman.
私は女性です。
I am Japanese.
私は日本人です。
I am a simultaneous translator.
私は同時通訳者です。
I am a dreamer.
私は夢想家です。
I am an entrepreneur.
私は起業家です。
I am a creator.
私はクリエーターです。
I am a friend.
私は友達です。
I am a founder of my own company.
私は自社の創業者です。
こんなふうに、シンプルな質問でも、ここまで会話できるのですね。
ここから、少しずつどんどんバリエーションを増やしてみてください。それを毎日続けていくことで、水泳をマスターしたとき、自転車をマスターしたときのように、必ずどんどん「英語で考えられる」自分になっていけますよ。
one step at a time(一歩ずつ)、自分を信じてやり続けましょう!
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文:小熊弥生
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株式会社ブリッジインターナショナル代表。TOEIC 280点から、独自の勉強法で半年後にTOEIC 805点を取得。短大卒業から3年半で通訳者デビュー。現在は自身の経験をベースにした英語学習サービスを展開。ひとりひとりの目的に合った効果的な学習プログラム作りを指南し、のべ1000人以上の英語力アップに貢献している。
速ぺらEnglish:著者がTOEIC 280点から各国首脳の同時通訳を担当するまでに実践した英語勉強法を伝授。リスニング力とスピーキング力アップに特化したプログラムです。
編集:GOTCHA!編集部/写真:山本高裕(GOTCHA!編集部)