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英語でeveryoneは単数扱いなのにtheyを使うのはなぜ?!

ラクする英文法

学校で習った英文法と、実際に触れる英語の用法の違いに気付き、どちらが正しいのか、混乱したことはありませんか?連載「ネイティブはやっている!ラクする英文法」では、そんな疑問を一つずつ解決し、英文法に煩わされることなくラクに英語を使えるようになることを目指します。教えてくれるのは、『総合英語Forest』編集・共著者である英文法のエキスパート、鈴木希明さんです。今回は「単数形のthey(singular they)」を取り上げます。

everybodyは単数扱いだけど、theyを使えばラク!

今回はeverybodyやeveryoneを指す代名詞を取り上げます。まず、次の英文を見てみましょう。

Everybody loves success, but they hate successful people.

みんな成功は好きだけど、成功した人間は嫌いなんだ。

ツアー通算148勝を誇るテニス界のレジェンド、ジョン・マッケンロー(John McEnroe)氏の言葉です。なんか「彼らしい」ですね(でも、彼が引退したのは1992年ですから、何が「彼らしい」のか分からない人もたくさんいるかもしれません)。

さて、everybodyやeveryoneは「みんな」「全ての人」という意味で使う代名詞ですが、文法的には単数扱いです。主語で使うときは、次のようにbe動詞の現在形はisとなり、一般動詞の現在形には三単現のsを付けます。

Everybody is waiting for you.

みんながあなたのことを待っているよ。

Everybody loves success.

みんな成功が好きだ。

では、everybodyやeveryoneを指す人称代名詞は何を使えばよいのでしょう。マッケンローはThey hate successful people.というように、everybodyに対してtheyを使っています。でも、everybodyは単数扱いですから、複数の人を指すtheyは文法的には間違っているはずです。これはどういうことなのでしょうか。

それでは、everybodyやeveryoneのような代名詞を指すときに使うtheyについて見ていきましょう。

everybodyはなぜ単数扱いなのか?

everybodyとeveryoneは同じ意味を表します。everybodyよりもeveryoneの方がフォーマル感があるため、会話ではeverybody、文書ではeveryoneがよく使われます。

この2つの単語はeveryとbody、everyとoneの組み合わせです。everyはevery studentのように単数形の名詞を続けて、「どの~も」という意味を表します。everyにbodyとoneをくっつけることで、「どの人も」という意味になるのです。

oneは「人」を表すことができますから、every one of the students(それらの学生たちの誰も)のような使い方ができますが、everyとbodyを離して使うことはできません。every bodyだと「どの死体も」という全く異なる意味になってしまいます。

everybodyとeveryoneは「どの人も」と一人一人を意識することから、単数扱いとなっているのです。

everybodyを指す代名詞はどれを使う?

everybodyやeveryoneは単数扱いですから、人称代名詞のheかsheを使うのが文法的には正しいということになります。男性しか「みんな」の対象にならない場合はheを使えばよいのですが、そうでない場合も当然あります。以前は女性が含まれていてもheだけを使って、次のようにしていました。

Everybody believes he has a chance.

誰もがチャンスがあると信じている。

Everybody has his own opinion.

誰もが自分の意見を持っている。

1970年代になると、このような性差別的な表現は使うべきではないという声が上がってきました。その動きの中で、he or sheという表現が出てきたのです。これは、書くときにはs/heやhe/sheとすることもあります。

Everybody believes he or she has a chance.

Everybody has his or her own opinion.

でも、he or sheでは、話すときも書くときも煩わしいものです(特に何度も繰り返されるとうんざりです)。やがて、文法的には単数と複数が一致しないものの、男女(やそれ以外の性)を問わず使えるということで、theyの使用が増え始め、今ではeverybodyやeveryoneに対してはtheyを使うのが普通になっています。

Everybody believes they have a chance.

Everybody has their own opinion.

anybody(anyone)、somebody(someone)、そしてeachやeveryを使う場合も同様です。

If anyone calls for me, tell them I’ll be back in a few minutes.

誰かが私に電話してきたら、すぐに戻ると伝えてください。

Someone has lost their smartphone.

誰かがスマホをなくしました。

Each applicant must submit their application form in person.

応募者はそれぞれ、応募書類を自分で提出しなければなりません。

このように使うtheyは、「単数形のthey(singular they)」と呼ばれています。

he or sheを使えない場合もある

everybodyに対してhe or sheが使えない場合もあります。それは、集団の一人を意識するのではなく、集団全体を意識して「みんな」と言う場合です。その際はやはりtheyを使います。

As soon as everybody arrived, they started to work.

全員が到着するとすぐに、彼らは仕事を始めた。

また、次の場合もtheyを使います。ここで、He or she is ~とするのは不自然ですね。

How’s everybody in your family?(家族の皆さんはお元気?)

――They’re doing pretty good.(とても元気にしていますよ)

単数形の名詞にtheyを使うこともある

単数形のtheyを使うのは、everybodyやsomebodyのような表現だけではありません。

A good journalist must pretend they have no opinions.

よいジャーナリストは意見がない振りをしなければならない。

An outstanding teacher is sensitive to their students’ needs.

優れた教師は生徒のニーズに敏感だ。

このように性別を特定できない場合は、単数形の名詞(a good journalistやan outstanding teacher)に対してもtheyを使えばよいのです。

鈴木希明さんの英文法の本

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鈴木希明(すずき のりあき)

英語教材編著者。東洋大学、武蔵野大学非常勤講師。立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科修士課程修了。研究テーマは認知文法と英文法教育。『総合英語be』など著書多数。文部科学省検定済教科書『be English Expression』編集委員。

※この記事は、『学校では教えてくれない!英文法の新常識』(NHK出版)に加筆・修正をして再構成したものです。