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「君の名は」はダメ?外国人と友達になれる英会話の進め方

「君の名は」はダメ?外国人と友達になれる英会話の進め方

映画『君の名は。』の舞台の一つとなった新宿・四谷の階段で。

英語で声をかけたいと思っても、何を話したらいいか分からない?そんなときに使える会話が弾む質問表現を、英会話の達人、カン・アンドリュー・ハシモトさんに教えていただきます。

無邪気な笑顔がその場を盛り上げる

近所に外国人旅行者に人気の神社があります。数年前に公開されたアニメ映画『君の名は。』の舞台の一つになった神社です。上映当時、参拝者は若い日本人カップルが多かったのですが、今は人種も言葉もさまざまな旅行者が、何人も神社の石段に腰掛けおしゃべりをしています。hang around という英語が一番近いでしょうか。

その旅行者たちに日本人の年配女性たちが話しかけている、そんな光景を時々見かけます。話しかけているのは男性じゃなく、たいていご婦人方。女性の方が元気なのでしょうか。

Where are you from? どこから来たの?
What’s your name? 名前は?
How old are you? いくつ?

もう少し突っ込んで、こうたずねる人も。

Why did you come to Japan? なぜ日本に来たの?

警察の職務質問(police interrogation)か、と思うような内容ですが、女性たちの無邪気な笑顔とその優しげな口調のおかげで、彼女たちの質問には威圧的な感じはまるでなく、むしろ楽しそうな会話が始まることがほとんどです。それがほほえましくて、僕も思わず足を止めてしまうことがあります。

自分の名前も名乗らないで、いきなり Where are you from? はないでしょうとか、名前が聞き取れないからといって何度も聞き返さないでとか、なぜ初対面のあなたに年齢を答えなければならないの?とか、彼女たちの質問に突っ込み所はいくつもあります。

でも、笑顔と笑い声で会話が盛り上がっていることの方が多く、通りすがりの僕も何だか幸せを分けてもらったような気持ちになります。ご婦人方のキャラクターの勝利なのでしょう。

それはいったん置いておいて、まずは正論から。

まずは自分から名乗ってみましょう


誰かと友達になりたいな、話しかけたいな、と思ったら英語圏ではまず自分から名乗りましょう。

自分は名乗らずに“Where are you from? What’s your name?”などと聞かれたら、その次のせりふは May I see your ID?(IDを見せなさい)だろうか?この人は私服警官?と思ってしまいます(少しだけ冗談です)。

まずは、“Hi, I’m Kan.”と自分の名前を伝えましょう。握手のために手を差し出してもいいでしょう。そうするとほぼ100パーセント、“Hello, I’m David.”のように返事が返ってくるはずです。自分から名乗れば、“What’s your name?”と名前を尋ねる必要はないのです。

Hi, I’m Kan. こんにちは。カンです。
Hello, I’m David. こんにちは、デイビッドです。

名乗ったその後は?

お互いが名乗りあったら、それに続く言葉は“How are you doing?”あたりでしょうか。「元気?」「調子はどう?」という意味ですが、実際には調子をたずねているというよりも、「こんにちは」くらいの意味合いしかありません。

相手は“Good. You?”(元気だよ、君は?)などと答えてくれるでしょう。あなたが元気なら“Good.” すごく元気なら“Perfect!” あまり元気じゃないなら“I’m OK.”と答えれば会話の導入としてはカンペキです。

そのあと“May I ask you a question?”または“May I ask you some questions?”(ちょっと聞いてもいい?)と言ってから、“Where are you from?”(どこから来たの?)“Where do you live?”(どこに住んでいるの?)など、知りたいことを聞いてみてはどうでしょう。

How are you doing? 調子はどう?
Good. You? 元気だよ、君は?
Perfect! すごく元気!

年齢を尋ねるのはやっぱり失礼?

英語圏では相手の年齢や結婚しているかどうかを尋ねることはプライバシーの侵害と考えられ、無礼な印象があります。

初めて会った人の年齢を知る必要が本当にあるのかどうかは疑問ですが、日本は年上を敬う傾向が強い文化なので、相手の年齢が気になるのかもしれませんね。

ちなみに韓国は、日本よりもさらに年齢の上下に敏感な国です。だからでしょうか、韓国の友人で、とても上手に相手の年齢を聞き出す人がいます。

彼女のやり方は次のようなせりふを会話に挟む、というもの。

I think we’re around the same age. 私たち、同じくらいの年だと思うの。
I was a high school student at that time. その頃、私は高校生だったわ。
I wish I were as young as you. I’ll be 40 next year. あなたみたいに若かったらなぁ、来年、私は40よ。

思い出して文字にすると「何だか巧妙 (clever and artful)だな」と思うのですが、実際にその場にいると彼女のキャラクターのせいか astute(抜け目ない)というより tactical(作戦上手な)という印象で、その場の雰囲気が悪くなったことは一度もありません。もしも本当に年齢を尋ねる必要があるなら参考にしてください。

「なぜ日本に来たの?」の正しい尋ね方

Why did you come to Japan? なぜ日本に来たの?

上の聞き方はあまりお勧めできません。

『YOUは何しに日本へ?』というテレビ番組をご存じですか?そのサブタイトルは「Why did you come to Japan?」です。番組内でも、スタッフが実際に外国人旅行者にそのせりふで尋ねています。

初めてこの番組を見たとき、僕は何だかドキドキして落ち着かなかったのを覚えています。しかし、番組で外国人旅行者は、その疑問文に笑顔で答えていました。

テレビ番組なら事前の打ち合わせもあるし、何も問題なく進行するのは当たり前かと思い直しましたが、番組のサブタイトルにもなっているこのフレーズで、英語を母語とする人が質問することはまずありません。

“Why did you come to Japan?”という英文自体は間違ってはいません。ただこの聞き方はとても直接的で、それこそ警察か税関職員に問い詰められているような印象が残ります。

“Why ... you ...?”で質問されると、何というか自分の心の内を正直に話さなければならない、そんな意味合いを感じます。だからこそ、親しい間柄ではない人から“Why ... you ...?”と尋ねられると、ちょっと大げさかもしれませんが、心の中に土足で入ってこられたような、そんな違和感が残るのだと思います。

それならどう言えばいいでしょう。

What brings you to Japan?
What brought you to Japan?

英語を母語とする人ならこう尋ねるはずです。

「何があなたをここに連れてきたのか」。直訳すると奇妙な日本語ですが、その通りの意味です。ニュアンスとしては why を使うよりも理由の尋ね方が間接的になっている(主語が you ではない)ので、質問者との間に距離が生まれます。それが「心の中に立ち入ってきていない」、礼儀正しい印象を生むのでしょう。

日本語でも「なぜ日本に来たの?」と「日本への滞在目的は?」では、後者の方が質問者との間に距離を感じませんか?それに似ているような気がします。

こういう記事や本を書く機会を頂いているので、僕はたびたびこの種のことを指摘してきました。こっちの方が正しい英語だよ、こう言うべきだよ、この方が丁寧だよ、などなど。

でも、英語を教えることが僕の職業ではないのでそう思うのかもしれませんが、神社で外国人旅行者に話しかけている元気なご婦人方を見ているうちに、そんな細かいことはどうでもいいのかな、という気持ちも生まれてきました。実際に嫌な顔をしてその質問に答えている人も、質問に気分を害して立ち去る人も見たことがありません。

アメリカ・ミシガン州出身の友人は次のように言いました。

I don’t mind. I don’t think they’re rude. Why questions are simple and easy. They’re good people, you know that, Kan.
僕は気にならないよ。彼女たちが無礼だとは思わない。why を使うのは分かりやすいし簡単だもの。彼らはいい人たちだよ、Kanだって分かってるだろ。

その通り。言葉遣いよりも気持ちの方がずっと大切ですよね。気持ちは言葉遣いを超えると思うから。でも、それに加えてふさわしい表現を知るとコミュニケーションはもっと楽しいものになるのは、間違いありません。

Let’s have a nice chat!

カン・アンドリュー・ハシモトさん監修のアプリ「 Talking Marathon

「話す」ためのトレーニングができるアプリも登場。 ぜひお試しください!

英語を聞けば話の内容は分かるのに、自分がしゃべるとなるとなかなか言葉にならない、そんな人、多いのではないでしょうか。 話さなければ上達しないことは分かっているけど、英語を話す相手もいないし・・・という人にぴったりのアプリです! Talking Marathon! (僕が監修をしています)

スマホ相手なので予約も通学も必要なく英会話のトレーニングができます。フレーズはアルクのキクタンシリーズがベースとなって制作されています。

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カン・アンドリュー・ハシモト

カン・アンドリュー・ハシモト
アメリカ合衆国ウィスコンシン州出身。教育・教養に関する音声・映像コンテンツ制作を手がける株式会社ジェイルハウス・ミュージック代表取締役。英語・日本語のバイリンガル。公益財団法人日本英語検定協会、文部科学省、法務省などの教育用映像(日本語版・英語版)の制作を多数担当する。また、作詞・作曲家として、NHK「みんなのうた」「おかあさんといっしょ」やCMに楽曲を提供している。9作目となる著作『外国人に「What?」と言わせない発音メソッド』(池田書店)が発売中。