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TOEICは運転免許証、そろそろ英語世界という路上に出よう

卒・TOEICの英語習得術

TOEICスコアアップ200点請負人のJay(ジェイ)こと早川幸治さんが贈る連載「卒・TOEICの英語習得術」。第7回(最終回)は、TOEICを「卒業」して、英語を実践する世界へと踏み出す方法についてです。

TOEICはいつか「卒業」するもの

連載の第5回「TOEICを生かせ!英語力も幸福度も高まるブレーンストーミング法」で紹介したように、「人からやるべきことを与えられるよりも、自分で決定して行動する方が幸福度が高い」という研究結果があります。そして、前回は、「目的のアップデート」と、それに応じた「目標設定」について紹介しました。

最終回の今回は、未来につなげるための「卒・TOEIC実践プラン」です。

ある程度のTOEICスコアが取れたら、「卒・TOEIC」することをおすすめする理由は、TOEICでできることを身に付けたあとは、TOEICでできないことへと進んでいただきたいからです。

TOEICの学習を始めた時点では、TOEICの問題でビジネスや日常で使う表現に触れることができて、英語運用のシミュレーションができるため、新鮮さや学びがたくさんあります。しかし、レベルが上がるにつれて、TOEICの問題の中の状況は「場面が異なるだけ」という状態になります。また、レベルを上げるには、知らない単語を減らしていくだけ、という状態になります。もちろん、これらは無駄ではありません。しかし、学習当初と比べると、得られるものが少なくなっているのも事実です。

▼第5回はこちら

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▼第6回(前回)はこちら

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TOEICでできること、TOEICでできないこと

TOEICでできることは、一般的なビジネス表現の学習と習得、英語のまま理解する力の養成、読むスピードを速くすること、ビジネス文書の書き方の習得などさまざまあり、英語の知識やスキルを高めることはできます。しかし、それがそのまま文化の理解や運用力へとつながることはありません。

しかし、TOEICの世界と「卒・TOEIC」の世界は2つの分断された世界ではありません。両者の違いはまさに、自動車教習所の世界と教習所の外の路上の世界の違いに似ています。

教習所でヒヤヒヤした「S字」や「クランク」ですが、実際の道路で出合うことはほとんどありません。しかし、S字やクランクをクリアできるということは、実際に出合った細いカーブもクリアできるスキルは身に付いていることになります。

ただ、教習所内でいくら運転を練習しても、やはり路上を走るのとは勝手が違います。「卒・TOEIC」とは、車の運転で言えば路上に出ることなのです。教習所内では、自分の運転技術だけに注意を向ければよかったのですが、路上に出ると他の車がいる中での運転になります。自分の運転技術もさることながら、他の車との車間距離や、対向車が来る中での右折のタイミング、譲り合い、歩行者や自転車への配慮など、教習所内の運転にはなかった要素が存在します。それは、暗黙のルールなどの文化であり、障害であり、気遣いです。まさに、自分の理解度だけが全てのTOEICと、他人が存在する「卒・TOEIC」の違いと全く同じです。

書を捨てよ、町へ出よう

寺山修司の作品に『書を捨てよ、町へ出よう』という本があります。「卒・TOEIC」のためにも、「書を捨てよ、町へ出よう」です。TOEIC教材をアウトプットに生かす方法は、第2回「『TOEIC英語』を『ビジネス英語』にブラッシュアップするための3つのプロセス」や第3回「TOEIC徹底活用術!『英語の核』が身に付く『書く英語(ライティング)』」で紹介しました。しかし、磨いたスキルを最も効果的に発揮できるのは、教材を離れたときです。

話は変わりますが、テラモーターズという会社をご存じでしょうか?バイクの製造をしている日本のベンチャー企業で、起業当初から世界市場を目指した会社です。入社後すぐに即戦力として世界で戦うために、社員に求めるTOEICスコアは800点以上。その結果、社員の平均スコアは約850点とのことです。

以前、そのテラモーターズの社長、徳重 徹さんに質問させていただいたことがあります。

「TOEIC 800点あれば、英語でビジネスできますか?」

徳重社長の答えは次のようなものでした。

「スコアを取ったからといって、すぐに英語を使えるというわけではないですね。でも、最低800点はないと、使える形にはならないでしょう」

テラモーターズの社員は、入社後、アジア各国で英語を使いながらビジネスをする必要があります。まさに、TOEICスコアという運転免許証を持った状態で、すぐに路上に出て運転技術を高めているわけです。

質を高めるための問いを持つ

TOEICの学習は、教材があればできます。「卒・TOEIC」のためには、教材を使ってアウトプットの力を磨くこともできますが、すでに述べたように、その後は教材を離れることが大切です。

突然ですが、質問です。

今、何をしたいですか?

人間は、問いがあると答えたくなります。そして、その答えによって、気分が変わります。だからこそ、自分の今や将来にとってベストな答えが出る質問が必要なのです。

実は、「今、何をしたいですか?」という問いでは、ベストな答えは出ません。仮に、「英語を身に付けたい」という答えだったとしても、曖昧過ぎます。それは、質問が曖昧だからです。そこでおすすめしたいのが、より具体的な質問です。

例えば、次のような問いはいかがでしょうか。

  • 英語を使って何がしたいですか?
  • それをするためには、どんな英語を身に付ける必要がありますか?
  • それを身に付けるには、何をする必要がありますか?

これらを順に問うと、質問の内容がだんだん深まっていき、それに応じて答えもより具体的かつアクションレベルへと落とし込めるものになっていきます。

例えば、「英会話を学ぶ」という漠然としたゴールでは、アクションも漠然としてしまいます。目的や身に付けるべき英語がどんなものかを明確にしましょう。

「英会話を学ぶ」という漠然としたものが、「海外の現地スタッフとコミュニケーションを取り、プロジェクトを成功に導くために必要な英語力を身に付ける」となれば、単なる「会話力」ではなく、相手の文化を理解した上での「ビジネスコミュニケーション力」が求められていることに気付きます。必要なスキルが明確になることで、英会話学校やオンライン英会話で学ぶ際にも、意識が変わるはずです。

また、「英語を話したり書いたりする必要はないが、英語で情報収集したい」という場合は、次のように問うのはいかがでしょうか。

  • 英語でどんな情報を収集したいですか?
  • その情報はどこで手に入りますか?

英語に触れる時間と場所を決め、障害を除去せよ!

何事も、確実に実践するには、「いつ」「どこで」を明確にすることが必要です。

私は読書が好きなのですが、ある時期に英語のオーディオブックを聞いていました。目的は、その内容を知り、参考になりそうなことを実践に取り入れることです。もちろん、「いつ」「どこで」も明確でした。それは、「家を出て駅まで歩きながら」です。また、「駅から目的地まで歩く場合は、英語を聞く」というルールも作りました。こうすることで、スムーズに英語に触れられるようになりました。

しかし、オーディオブックは本1冊分がそのままナレーターによって読まれているため、時間にすると6時間とか8時間とかになるのです。私は歩いているときに聞きたいので、細切れで聞くのには向いていませんでした。そして、気が付くと、もう聞かなくなっていました。「聞き終わるのにかかる時間」が障害になっていたのです。

あるとき、日本語の書籍の内容を要約して配信しているサービスがあることを知りました。ふと、「洋書で同じようなサービスはないかな」と探してみると、なんとナレーターが15分で要約しているものがありました。早速、それを聞き始めました。ところが、しばらくすると、また聞かなくなっていました。何が障害だったのでしょうか?実は、最近になって初めて分かりました。

私はスマホで英語を聞いているのですが、家を出るとポケットから絡まったイヤホンを取り出します。それをほどいてからスマホにジャックを挿します。そして、耳にイヤホンを入れ、英語を流します。その後、だらしなくたるんだコードをスマホにグルグル巻いて程よい長さに調節して、スマホをポケットに入れます。英語を聞きたくないわけではなく、このイヤホンを取り出してからの一連の動作がめんどくさかったのです(笑)。

そんなまさかの障害に気付いたので、すぐにワイヤレスのイヤホンを買いました。その後は毎日、家を出たらすぐにイヤホンを耳に入れ、英語を流せるようになりました。

毎日の行動のどこに英語に触れる時間を入れられるかを考えてみてください。また、その際の障害予想しておくことで、未然に防いだり、取り除いたりできます

おわりに

この連載では7回を通して、TOEICで学んだ知識を運用力へと高める「卒・TOEICの英語習得術」を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。

最後に、「卒・TOEIC」を実践された方を紹介させてください。

5月末に、TOEICクラスの元受講生、Iさんから、「転職して、秋からマレーシアで働くことになりました」という連絡を頂きました。それで、久々にお会いして、マレーシアで働くことを決めた経緯を伺いました。すると、「うちの会社は国内の仕事しかなかったのですが、海外の販路も開拓しないとまずいと感じたので、上司や経営陣を説得して、海外出張の機会をつくりました。そして、優秀なチームを組織して、海外出張ごとに契約を取ることを決め、実践してきました。そうしているうちに、海外で働きたくなってしまったんです」とのことでした。まさに、TOEIC学習から入り、「卒・TOEIC」へとつなげたロールモデルでした。

TOEIC学習で身に付けた英語力は、今後に生かしていくためのさまざまな可能性を秘めています。この連載が、「卒・TOEIC」での実践につなげていくヒントになったとしたら、うれしく思います。

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Koji Hayakawa

早川幸治(はやかわ こうじ)
ニックネームはJay。株式会社ラーニングコネクションズ代表取締役。企業研修講師として、英語を公用語化した企業はじめ、これまで全国の160社以上で研修を担当してきたほか、大学や高校でも教えている。セブ島留学プログラムも監修。TOEIC990点(満点)、英検1級取得。豊富な受験経験から傾向をおさえた効率的な対策法が好評。著書多数。アルクの通信講座「TOEIC(R) LISTENING AND READING TEST 完全攻略600点コース」監修。

編集:GOTCHA!編集部/写真:山本高裕(GOTCHA!編集部)