これは英語? 「Onaka(オナカ)」ってどんな食べ物?

古くは「スシ」「ゲイシャ」「ニンジャ」。最近では「スードク」。海を渡って世界で使われていると言われる日本語がありますが、最近ではどの国でどんな単語が用いられているのでしょうか。世界90カ国以上の現地在住日本人ライターやカメラマンの集団「海外書き人クラブ」がリレー形式で担当する連載「世界のニホンゴ調査団」。第14回は、スウェーデン在住の中妻美奈子がレポートします。

海外で知られている珍しい日本語

カラオケ、スキヤキ、またはカロウシなどの日本語が海外で知られているのはよく耳にしますが、「オナカ」という日本語を知っている外国人の話はあまり聞いたことがないですよね?私も初めて聞いたときは耳を疑いました。

私がスウェーデンに来て間もない90年代の終わりでした。職場でのティータイム、 フィーカ(スウェーデンのお茶休憩の文化) の時間に私の母国語の話になりました。

私:Tell me any Japanese you know!

何か知ってるニホンゴ言ってみて。

同僚 A:Shogun. It was the title of the TV series my Mom loved so much and watched every day.

ショーグン。私の母が大好きで毎日見ていたテレビドラマのタイトルだった。

同僚 B:I would say Sushi. I love Sushi, I can eat Sushi every day.

やっぱりスシかな。私大好き。毎日でも食べられる。

同僚 C:Onaka.

オナカ。

私:What? Onaka?

え?オナカ?

同僚 C:We have Onaka every morning. It’s good for your stomach.

うちでは毎朝オナカ食べてるもん。お腹に良いからね。

同僚 A:My dad likes Onaka as well . He says it helps his stomach condition .

私の父もオナカ好きだわ。お腹の調子が良くなるって言ってる。

というわけで北欧のスウェーデンでは「Onaka(おなか)」は誰もが知っているニホンゴの一つなのです。秘密はなんと30年以上も前に登場したヨーグルトだったのです。

80年代のヨーロッパで日本のヘルシーな食文化がブームに!

時をさかのぼり、80年代のヨーロッパ。日本製の安価で優れた家電製品が一般家庭のリビングルームを占拠し始めてかなり時間がたち、日本の技術は確固とした地位を築いていました。ソニーの「ウォークマン」が若者たちにとって大切なモノとなり、遠い極東の国、日本のイメージはうなぎのぼりでした。

スウェーデン出身の歌手 ネナ・チェリー「ロー・ライク・スシ / Raw Like Sushi」 というアルバムが No .1の座に輝いたのもこの時代で、スウェーデンの80年代は「日本」に独占されていたと言えるほどでした。

この日本のテクノロジー・ブームが きっかけ で消費者の興味が日本という国や文化へと発展し、日本の食文化も注目されるようになりました。ヨーロッパ各国でスシ・レストランがオープンし始め、日本のエキゾチックでヘルシーな料理がテレビなどで紹介されました。

こういったトレンドを背景に1990年4月、スウェーデンの乳製品のナショナルブランドである アーラ・フーズ (Arla Foods) が「Onaka(オナカ)」というヨーグルトを新発売したのです。

お腹を「穏」やかにする Onaka は超人気のロングセラー

アーラ社が、日本語を商品名に使ったのには訳があります。乳製品をたくさん摂るスウェーデン人の中にも、乳脂肪分が体に悪いと考えて、消費を避ける人たちが増えました。そこで、ヘルシー志向の高い消費者向けに開発されたのが、乳脂肪分を抑え、 長寿で健康イメージの高い日本から輸入された「ビフィズス菌」で作られた新しいヨーグルト でした。

新製品 Onaka ヨーグルトは 日の丸と漢字をあしらった日本のイメージを前面に 出すパッケージで登場しました。 「穏」という漢字は日本の書道家に書いてもらった そうで、お腹を穏やかにするとの意味があるそうです。ブームに乗ったエキゾチックでヘルシーなこの新製品はTVコマーシャルなどでスウェーデンの家庭に Onaka という日本語を紹介することになりました。

ちなみに この Onaka ヨーグルト、マイルドな味のおかげか、ビフィズス菌の威力か、愛食する人が多く、30年近くたった今も人気の超・ロングセラー商品です。

さて、どうやって Onaka を食べるのでしょうか?

スウェーデンでは Onaka をこんな風に食べる

この Onaka は、スウェーデンでは フィールミョルク と呼ばれるものの一つで日本のヨーグルトドリンクよりも堅めです。味もまろやかでそのまま食べても大丈夫な感じです。このフィールミョルクは北欧諸国では朝食に欠かせないもので、海外へ出かけるとこれがないのでお腹の調子が悪くなるという人も少なくありません。

In the Nordic countries, filmjolk is often eaten with breakfast cereal , muesli or crushed crisp bread on top. Some people add sugar, jam, apple sauce, cinnamon, ginger, fruits, and/or berries for extra flavor.

北欧諸国(スカンジナビア、フィンランド、アイスランド)では通常フィールミョルクは朝食シリアル、ミューズリーまたはクリスプブレッドを砕いたものをトッピングして食されます。砂糖、ジャム、リンゴソース、シナモン、ジンジャー、フルーツやベリー類を味付けとして加える人もいます。

Wikipedia

自然の中で過ごす時間を大切にするスウェーデン人。キャンプやハイキングまたはサマーハウスなどで手軽に食べられ、栄養価が高いヨーグルトは一番人気の朝食メニューなのです。

文・写真:海外書き人クラブ・中妻美奈子

https://www.kaigaikakibito.com/blog/

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