英語のリーディング力を上げる勉強法を徹底解説!【関 正生】

まず文法を見直そう

質問1
読み慣れていないせいか、英語長文はハードルが高く、意味をつかむのに苦労しています。長文が読めるようになるコツはありませんか?

ただ量を読むのではなく、まず文法と英文解釈を再確認しましょう。
文法は、英語を使い理解するためのルールです。英文解釈の練習は、スポーツでいうフォームづくりです。ルールはあやふや、フォームも身に付いていない状態では、いくら試合に出ても空回り。文法や英文解釈を身に付けずに多読をしても、砂の上に城を築くようなものです。

実際に、文法がわかっていないせいで、長文読解を苦手とする人はとても多いのです。小説を読んでも、単語をつなぐだけでは作品の神髄は味わえません。ビジネス文書にしても、微妙なニュアンスを含む情報が、文法の知識なしで正確に読み取れるほど甘くはありません。どんな種類の文章でも、この基本は同じです。
 
例えば「複合関係形容詞」という、字面からして恐ろしげなものがあります。でもこの「複合関係形容詞」、TOEICの問題にも普通に出てきますし、子ども向けの絵本にだって出てくるのです。

「複合関係形容詞」というのは、whichever とwhateverのことです。You can read whatever book you like. 「あなたが好きな本は何でも読んでいい」のように使います。さまざまな英文で当たり前に出てきますから、ここでつまずいていては、英文の意味はすんなり理解できません。文法の大切さ、少しわかっていただけたでしょうか? 

文法は一般の文法書で勉強できます。大学受験用のものは普通の高校生向けですから、大人の学習者なら、そこに書かれている文法くらいは、当然、身に付けておくべきです。

英文和訳はこう役立てる

英文和訳も、世間では時代遅れと言われていますが、きちんとやれば読解力アップに有効です。和訳というのは、じっくりと英文に向き合う作業なので、自分の理解度がはっきりとわかります。何となくわかった気になっていた英文の意味が、日本語として紙に書き出してみれば、とても明確になるはずです。

音読で読解力がアップする

質問2
リーディング力を上げるのに、効果的な勉強法を教えて!

リーディングで目指すのは、直読・直解。英語を英語のまま理解できるようになることです。そこで必要となるのが「音読」です。

英文を読むとき、たいていの人は頭のなかで英文を日本語に訳し、訳した日本語を反すうして、「うん、そういうことね」と理解しています。ところが英文の音読をやっていると、徐々にですが、元の英文から直接イメージを描けるようになってきます。

目から入ってくる英文が表す意味、情景、物事のイメージなどが、自分が発話する音声の力を借りてつながり、丸ごと頭に入ってくる感じです。ここでいう音読は、人に聞かせることが目的ではないので、大きな声で読む必要も、発音に気を配る必要もありません。英文の理解を助けるための音読だと割り切って、文章の意味を確認しながら読みましょう。

長文を50回ずつ読んでみよう

ぼくは受験生には、長文を50回音読しなさいと言っています。1日10回、5日続ければできることです。大人の学習者も、50回は無理だとしても、繰り返し音読することは大事です。英語教材に出てくる長文、新聞のコラム、小説のお気に入りの章やパラグラフなど、何でもかまいません。さっそく今日からやってみてください。

「義務」という強力なモチベ―ション

質問3
関先生は、どうやってリーディング力を付けたのですか?

ぼくがやったのは受験勉強だけです。リーディングに関しては、受験参考書にある長文読解用のテキストを何度も音読しました。まったく楽しくなんか、なかったですよ。でもリーディングに限らず、語学の習得の決め手は「願望」より「義務」だとぼくは思っています。英語が好きとか、「英語ができるようになったら」という願望だけで、ずっと頑張り続けられる人は、現実にはめったにいません

その点「義務」は強烈です。受験生は、希望の大学に入学するぞという一心で、懸命に勉強します。ぼくもそうでした。必死で英語を勉強する会社員も、望む役職に就くために所定のTOEICスコアが必要とか、海外派遣を前に何が何でも英語力を上げなければならないとか、多くの場合は義務と背中合わせです。

「義務」というのは、強烈なモチベーションになります。中だるみだとか、根気が続かないとか、愚痴をいう余裕さえなく、切羽詰まった状態で勉強を続け、その結果、じわじわと英語力が付いてきます。英語を学ぶ「義務」がある人は、ある意味ラッキーです。

緩い「義務」を味方に付けよう

「義務」とは無縁で、好きだから英語を学んでいる人もいると思いますが、時々サボってしまう、あまり進歩を感じないという場合は、緩い「義務」を自分に課してみましょう。いつまでに英語の小説を一冊読破するとか、TOEICを受けるとか決めて勉強にとりかかると、モチベーションが維持しやすいですよ。「義務」でも勉強を続けていれば、それは「習慣」になり、その先に「成果」が見えてきます。

リーディング対策に効く!ぼくのおすすめの本

『世界一わかりやすい 英文読解の特別講座』(KADOKAWA)

英文を読むときの「頭の働かせ方」をわかりやすく説明した、英文解釈の本です。ネイティブスピーカーが無意識のうちにやっていることを文字化し、ルール化して紹介しています。

例えばネイティブスピーカーは、文章のなかで “It is only ~” に出合うと、反射的に強調構文を予想します。そして続いて出てくる “that …” で、強調構文を確認するのです。同じようにぼくたちも、“It is only ~” が目に入ったとたん強調構文を予想し、何を強調しているのかを、 “that” 以下から瞬時に確認できるようになると、文章全体がスムーズに理解できます。

こうした大人の学習者の盲点が、この本にはたくさん詰まっていますから、英文解釈の力は劇的に伸びるはずです。大人向けの英文解釈本はめったにありませんから、ひとつの処方箋として活用してください。

関正生さんのおすすめ新刊

▼7/1発売!秋の英検で取得を考えている人におすすめです。とても詳しい解説付き!

▼英語力が上がるにつれて、知識が増えるからこそ「え、これでそんな意味になるの?」「適切な前置詞はどっち?」など、次々と疑問が湧いてきませんか? 読者の皆さんから寄せられた文法・語法に関する質問を基に、中・上級者が迷いがちな英文法の「ツボ」を10個取り上げて、具体例と共に解説します。

※本書は英語学習雑誌『ENGLISH JOURNAL』2017年1月号に掲載された記事を再構成し、電子書籍としてまとめたものです。

関 正生
関 正生

大学在学中から予備校の英語講師を務め、全国の予備校で250人の教室を毎回満席にした実績を持つ、伝説の講師。「有吉ジャポン」や「スタディトライ」といったテレビ番組にも出演。リクルートのオンライン予備校「スタディサプリ」で講師を務める。著書は『 大学入試 世界一わかりやすい英語の勉強法 』(KADOKAWA)、『 サバイバル英文法「読み解く力」を呼び覚ます 』(NHK出版)など75冊。「世界一わかりやすい」シリーズなどで累計145万部以上と、ベストセラー本が多数。現在、NHKラジオ『基礎英語3』(NHK出版)や『CNN ENGLISH EXPRESS』(朝日出版社)でも連載中。公式Twitterアカウントはこちら→ Twitter

語り:関 正生
取材:田中 洋子

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