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英語学習を効率化・習慣化できる3つのシンプルな方法「スタディ・ハック」

通訳者が選んだ学習法

通訳・翻訳者で、ベネディクト・カンバーバッチさんやエディ・レッドメインさんなどの通訳や英語インタビューも行う川合亮平さん。この連載「通訳者が選んだ学習法」では、15年ぶりに本格的に英語学習を再開した川合さんに、確実に向上する具体的な学習法を教えていただきます。第3回のテーマは「英語学習の密度を最大限に高めるスタディ・ハック」です。

こんにちは。川合亮平です。全3回連載の最終回をお届けします。

第1回「英語ができる人の共通点1つと英語力が向上する条件4つ」では学習動機、第2回「英語表現を1年で3000個、覚えて使いこなすためのポイント2つ」では学習法について書きました。

今回は、学習効率について書いてみたいと思います。木の構造で例えるなら、第1回が根、第2回は幹、そして今回は枝葉になります。ですから、第1回第2回が未読の方は、先に目を通されることをおすすめします。

英語学習に人生の限られた時間をどう使うか

年を重ねるごとに、「時間」の重要さが増していっています。自分の目の前にある時間をどのように扱うのか、目の前の時間とどのように付き合うのかによって、1年後、3年後、10年後の自分のありよう(自分を取り囲む状況も)が全く違ったものになってくることを、これまで40数年生きてきて痛感しているからです。

一言で書くと、瞬間瞬間をできるだけmeaningful(意義のある)体験として刻んでいきたいということになります。

英語学習で考えると、至極シンプルな理論として、「大切な自分の時間を英語学習に1時間投資するなら、その1時間の中で可能な限り最大の効果を生み出したい」ということです。例えば、今まで3時間使って得られていた学習効果が、何かちょっとした細工を施すことで、1時間で得られるとすれば、残りの2時間は別のことに使えるわけです。

この「ちょっとした細工」を、僕は「スタディ・ハック」(study hacks)と呼んでいます。

英語学習の密度を高める方法が「スタディ・ハック」

茂木健一郎さんの著書『脳リミットのはずし方』(タイトルがナイス!)に、「10パーセントの集中力で10時間勉強するのと、100パーセントの集中力で1時間勉強するのとで結果は同じ」というような記述がありました。

僕のスタディ・ハックの大きなテーマはつまるところ、茂木さんの説と呼応して、「どうすれば時間内の学習密度を高めていけるか?」です。そしてもう一つは、「どうすれば習慣化し継続していけるか?」。この2つが大きなポイントになります。逆に言うと、「集中と継続なくして英語力アップはあり得ない」ということですね。

英語通訳者の僕のスタディ・ハック3つ+α

集中と継続が大事なんて、そんなの当たり前のことだよ、という感想を持たれる方もいると思いますが、「英語学習の効率・効果の最大化」を標榜しながら、日々意識し、実践する中で、僕自身が大きな効果を感じているアイデアを3つ(+おまけ1つ)紹介します。

英語学習のハック1:カイゼンによって学習精度を常に高める努力を

『フォーチュン(Fortune)』誌の「世界で最も優秀な40歳以下の教授40人」にも選出されたアダム・グラント氏は、ペンシルベニア大学ウォートン校教授の組織心理学者で、『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』の著者です。同氏は、「The surprising habits of original thinkers」と題したTED Talkで、物事の生産的精度を高めていくためには「Doubt the default(初期設定を疑え)」という発想が大切だと提唱しています。

この発想を英語学習に当てはめると、「英語の目標に到達するための道筋は数多く存在するはずで、最初に決めたやり方が絶対的なものでは決してなく、その時々の自分の感覚やライフスタイルの変化に合わせて、常に精度を高めていける余地がある」と解釈できます。

学習方法や取り組み方がラクで楽しいものになるよう常に工夫、努力することが、学習効果を高めるのに大切なことだと僕は実感しています。つまり、自分に合わない、集中できないやり方はどんどん捨てていく勇気も時には必要ということですね。

例えば、「せっかく買った英会話本、なんだかしっくりこないけど、お金ももったいないし、続けるか・・・」という場合、ある程度の期間続けてみることはとても大切だとは思いますが、それでも、数え切れない程のチョイスがある中で、わざわざしっくりこない素材で学習に取り組むことに意味はないと考えます。

「タイム・イズ・マネー」の発想から言うと、1500円で購入した「しっくりこない」英会話本で「しっくりこない」ままそれに時間を費やすこと自体が、マネーのロスと言えるのではないでしょうか。そのロスは1500円の比ではないと思います。この「しっくりくる・こない」の考え方は、書籍だけでなく、英会話学校など、ありとあらゆる英語学習の手段に当てはめて考えてみてくださいね。

そんなわけで、僕の英語学習も日進月歩でマイナーチェンジを繰り返しています。もしも1年後に同じような学習法についての文章を書くことになったとしても、内容は今回のものとは多少なりとも変化していることはほぼ間違いないでしょう。

英語学習のハック2:「いつするか」が大切

いつ学習をするのかが大切な理由は2つあります。

1つ目は、僕が自分の経験を含め他のさまざまな方々の事例からも確信していることなのですが、英語学習に限らず、何らかの行動を継続する(習慣にする)ときは、When(いつするか)とWhere(どこでするか)を「決める(フィックスする)」ことで、継続率は飛躍的に高まります

逆に、いつでも・どこでもできるという姿勢だと、多くの場合、人生におけるその他の優先事項が入り込む可能性が高まり、その行動ができにくくなるのです。「決める」ことは非常にパワフルな反面、実は意外に難しいことでもあるのですが(他のチョイスを全て排除するということですからね)、本気で(英語学習の)継続・習慣化を標榜する人は試してみる価値があると思いますよ。

「いつ」が大切な理由の2つ目は、ヒトのパフォーマンスの質(認知力)は「いつ」するかによって変動する、という事実からです。シンプルに書くと、「学習はできるだけ頭がさえている、集中できる時間に行った方が効率がよくなる」ということ。

この科学的アイデアを一般の生活に当てはめて非常に興味深く教えてくれるおすすめの書籍が、ダニエル・ピンク氏の最新刊『When 完璧なタイミングを科学する』。ピンク氏は米上院議員の経済政策担当補佐官、ゴア副大統領の首席スピーチライターなどを務めた方です。日本でも翻訳本が複数出版されているので、ご存じの方もいらっしゃるでしょう。僕は、ピンク氏がグーグルのオフィスで『When 完璧なタイミングを科学する』をテーマに行った次の講演を見て学ぶところが多くあり、自分にとっての最適な学習時間について真剣に検討するようになりました。

英語学習のハック3:数値化して日々の手応えを感じよう

習慣化・継続化が、長い目で見た堅実的な英語力アップに欠くことのできない要素であることは言うまでもありません。

習慣化して継続する方法やテクニックはいろいろあると思いますが、個人的に大きな効果を感じているのが、「進捗と目標を数値化する」ことです。

心理学的に、日々、前進しているという実感や日々の細かい達成感が継続に大きく寄与するらしいのですが、英語力という漠然とした観点では、残念ながら1日1日の成長というのはなかなか感じにくいものです。しかし、「かかった時間」や「進んだ分量」は数値化することが可能で、それらの「記録」と「見える化」は、長期的な学習の継続に大きく役立つと実感しています。

例えば、第2回の記事で紹介したアプリ「reminDO」では、1日にやる分量が自動で出てきますから、それらを「片付ける」ことで達成感を得られます。僕の場合は、「1日で10個の新しい表現・単語を登録する」という目標にして、それらを成し遂げることで1日の達成感を得ています。

また、僕は2019年、1年でペーパーバックを12冊以上読むという目標を立てていて、それを達成するために「1日で10ページ以上ペーパーバックを読む」というド短期目標を課しています(全ての本が300ページ前後で構成されているわけではないことはもちろん承知の上ですが)。日々10ページ(以上)進んだという事実は、大きな目標に向けて毎日確実に進んでいるという実感を僕に与えてくれるのです。

ちなみに、洋書を読むのに慣れてきて、今まで10ページ読むのに30分かかっていたのが、25分くらいで読めるようになってきた場合、日々の目標を11ページに「カイゼン」します。この変更はとても生産的です。単純計算で、1日1ページ追加した「だけ」で、1年で見ると丸々1冊分増えたことになりますからね。

英語学習のハックおまけ:マントラはあるか?

1日1日の小さな行動がつながることで習慣になり、(願わくば)大きな結果として実を結ぶ」という仮説に基づいてここまで書いてきましたが、とにもかくにも「今」行動することが全てですよね。

朝、寒くて眠い、もっと布団の中で過ごしていたい「今」、夜、くたびれてとにかく何もせずに早く眠りに就きたい「今」、SNSをただダラダラ眺めていたい「今」、そういった「今」という節目節目に英語力向上に向けた行動を起こせるか?それが、結果として自分が望むような英語力を手に入れられるかどうかに直接的に影響します。

座右の書とも言える、村上春樹さんの『走ることについて語るときに僕の語ること』から、僕が大好きな次の文章を引用します。

「『今日はけっこう身体がきついな。あまり走りたくないな』と思うときでも、『これは僕の人生にとってとにかくやらなくちゃならないことなんだ』と自分に言い聞かせて、ほとんど理屈抜きで走りました。その文句は今でも、僕にとってひとつのマントラみたいになっています。『これは僕の人生にとってとにかくやらなくちゃならないことなんだ』というのが。」(村上春樹著『走ることについて語るときに僕の語ること』文藝春秋)

「自分を奮い立たせるマントラ」という発想は、僕の人生の中ではエポックメイキングな発見でした。今朝、朝5時に目覚ましが鳴り、英語学習に向けて起きないといけないけど起きたくないという状態になったとき、僕はマントラを自分に言い聞かせました「英語学習は僕の人生にとってとにかくやらなくちゃならないことなんだ」と。

マントラの文句はもちろん何だっていいですし、僕も上記に加えて、強力な効果を持つ個人的マントラを幾つか懐に忍ばせています。英語学習に限らず、ジョギング中に立ち止まりたくなったときや、ついつい食べ過ぎてしまいそうなとき、妻や子どもに不必要な怒りをぶつけそうになったとき、それぞれのマントラが、頼りになる参謀のように僕の中でいつでもスタンバイしてくれているわけです。(「そのマントラというのはいつでも効果てきめんなのか?おまえは完全無欠な人間なのか?」と問われると、もちろんそんなことは全然ないと言わざるを得ないのですが)

さて、いかがでしたでしょうか。今回の全3回の連載を通して、いろいろ細かいことをストイックに、根を詰めて書いたような気がしなくもないですが、目の前に長く続く学びの広野を、どちらかというと希望的に眺めている一人の英語学習者の個人的意見と捉えていただければ幸いです。

この連載は終始、真面目な内容になりました。しかし、「軽いタッチでとにかく始めてみようぜ」という態度も英語力向上には不可欠であることを、最後に(申し訳程度に)付け加えておきたいと思います。

お付き合いくださり、どうもありがとうございます。またお会いしましょう。川合亮平でした。

川合亮平

文:川合亮平(かわい・りょうへい)
通訳・翻訳者。エディ・レッドメイン、エド・シーランなど、イギリス出身の俳優・ミュージシャンの通訳・英語インタビューを多数手掛けている。コラムニストとしては過去10年イギリスに頻繁に滞在し、現地情報を日本のメディアを通じて発信している。大きな話題となった『「なんでやねん」を英語で言えますか?』(KADOKAWA)をはじめ、著書・翻訳書・関連書は現在9冊。https://ameblo.jp/ryohei-kawai-blog/

編集:GOTCHA!編集部