英語プレゼンの「紹介します」「説明します」でよく使われる同じ英単語は?

言いたいことを日本語から英語にすると、冗長な英文になってしまう……。そんな悩みはありませんか?連載「その英語、一言で言えます!省エネ英単語」では、日英翻訳を多数手掛ける翻訳者の遠田和子さんに、簡単な英単語を使って簡潔に的確に表現する方法を紹介していただきます。今回のテーマは「 share 」です。

share 」">今回の単語は「 share

英語を書いていてなんだかもどかしく、「もっと簡単に言えないの?」と思うことはないでしょうか。スマートな英語表現に憧れる皆さんに、シンプルなのに多くを語れる「省エネ英単語」を紹介します。

今回は share を取り上げます。

「シェア」は最近よく耳にする言葉で、新しい経済システム「シェアリングエコノミー」も急速に広がっています。そして共有スペースのあるシェアハウスが増え、ライドシェア、カーシェアでモノやサービスを共有・貸し出す 仕組み が生まれています。「共有する、分かち合う」の意味の share をすでに使いこなしている方も多いでしょう。

ここでは、日本語の「シェア」からは想像しにくい文脈で share がぴったりはまる英文を紹介します。

「拡散して」は英語でどう言う?

最初は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でしばしば見掛けるお願い文です。

情報の拡散をお願いします。
「拡散する=シェアする」だと気が付きましたか。このお願い文は「情報をシェアしてください」と言っているのと同じです。次のように言えます。
Share the information .
同じ意味をもっと短く表す次の英文が一番よく使われます。
Please share .
Share the information . は、情報= information の代わりに、シェアしてほしいものを 具体的に 示すこともできます。SNS やブログの「投稿」なら post または posting、ウェブサイトの「リンク(URL)」なら link がシェアの対象です。
Share this post .
Share the posting .
Share the link .
ただし 、Twitter に限れば「投稿」を tweet と呼びますから、「拡散 希望 」は次のように書けば OK です。
Please retweet .
retweet は RT という表記も使われます。
Please RT .
その他、 share を使わずに「情報の拡散」をお願いする英語表現には次のようなものがあります。
Pass it on .
Spread the word .
ここまでの「拡散する」の英文では、日本語でも「シェアする」と表現する場面で英単語 share が使われているので、そんなに難しくありませんね。しかし、日本語の「シェア」からは連想しにくいけれど、 share が使えるシチュエーションもたくさんあります。

share ">「同じくする」の share

まず、次の文は英語でどう表現しますか?

私はあなたと同じ意見です。
「同じ」という概念を英語にするとき、パッと頭に浮かぶのは the same ~ ではないでしょうか。こんな感じです。
△ I have the same opinion as you (do).
これは正しい英文ですが、 share を使うと、「相手の意見や気持ちを理解できる」ことを「省エネ」で表現できます。
 I share your opinion.
相手に寄り添って気持ちを共有したいときに、 share は威力を発揮します。
△ I understand how urgent you feel this situation is.

この状況についての切羽詰まったお気持ち、私も同様です。

この場合「切羽詰まった気持ち」を英語にするのが難しそうですが、「切迫(した様子)、緊急」を表す名詞 urgency で表せます。相手の urgency をシェアするという言い方で、同じ気持ちであることを伝えるのです。
I share your urgency.
このように、I share your の後にさまざまな単語を持ってくることで、相手に対する共感を示せます。
I share your concern .

私も同じ 心配 をしています。

I share your frustration .

イライラする気持ち、よく分かります。

I share your pain.

つらいお気持ち、お察しします。

身近に不幸があった人に対しては、次のような言葉を掛けることができます。
I’m very sorry for your loss. I share your deep sorrow.

ご愁様です。深い悲しみをお察しします。

share ">「紹介する、説明する」の share

日本語のプレゼンでは、登壇者が「本日は~をご紹介します」という言葉で始めることがあります。「紹介する」の英語は introduce と覚えている方も多いでしょう。

△ I’ll introduce the highlights of my research today.

本日は、私の研究について主要な成果をご紹介したいと思います。

introduce は特に間違いではありませんが、英語プレゼンでは share や talk about を日常的に使います。
I’ll share [talk about] the highlights of my research today.
それでは、「説明します」はどうでしょう。「説明する」だと explain と言いたくなりませんか?
△ I will explain the results of this survey to you.

皆さんにこの調査の結果を説明します。

この場合、話し手が教師で、聴衆の「皆さん」が学生なら、 explainto ... で構いません。しかし、「皆さん」が 同僚 なら、「分かち合う」を表す share の方が対等な感じがします。
I will share the results of this survey .
Let me share で始めると、もっと丁寧で柔らかい雰囲気になります。Let me ~ は「私に~させてください」という意味なので、謙虚さを示せるおすすめ表現です。上から目線にならないように何かを紹介、説明したいときに使ってみましょう。
Let me share the results of this survey .

share ">「教える、話す、聞かせる」の share

日本語の「教える、話す」も、 share で表せることがあります。

Can you share your ideas with the rest of the group?

グループの人たちに、あなたのアイデアを教えてくれますか?

Thank you for sharing your ideas.

アイデアを教えてくれて、ありがとう。

この場合、「教える」だからといって teach は使えません。アイデアや考えは「共有= share 」します。

このほか、日本語で「話す、聞く」と言うとき、英語では share を使うのが自然な場面がたくさんあります。

My daughter came home crying, but she did not want to share the reason why.

は泣いて帰宅したのに、訳を話そうとしなかった。

Let me share my problem.

私の問題を聞いてください(=私の問題を話させてください)。

Thank you for sharing your story.

を聞かせてくれて、ありがとうございます。

今回は、基本概念は「共有する、分かち合う」だけれど、日本語では全く異なる言葉に訳されることもある share の使い方を集めました。日本語の「シェア」からは思い付かない文脈で活躍する share は、日常でとてもよく使われる動詞です。ぜひ使ってみてください!

連載に書き下ろしを加えた電子書籍『日英翻訳のプロが使う ラクラク!省エネ英単語』

この人気連載に書き下ろしを加えた電子書籍が登場!遠田さんが、簡潔な表現を好むアクション(動詞)指向の英語を言ったり書いたりできるようになる方法を、日英翻訳の確かな経験から伝えます。日本語の原文からは想像もつかない魔法のような英訳術に触れて、英語の自在な使い手になりましょう!

遠田和子さんの著書・翻訳書など

2019年1月31日発売の『翻訳事典2019-2020』(アルク)の付属DVDで、遠田さんの講演「動詞のパワーを全開に!」が視聴できます。さまざまな「意味の濃い動詞」などを紹介。DVDには他にも、出版翻訳者の越前敏弥さんが普段の翻訳の 手順 などをお話しする「プロ翻訳者の仕事場」などが収録されています。

DVD付 翻訳事典2019-2020 (アルク地球人ムック)
 
最新刊『究極の英語ライティング』(研究社)では、明快で簡潔な英語を書くコツを遠田さんが解説しています。
究極の英語ライティング

文:遠田和子(えんだ かずこ)

日英翻訳者、ライター。著書に『究極の英語ライティング』(研究社)、『Google 英文ライティング』『英語「なるほど!」ライティング』(共に講談社インターナショナル)、『あいさつ・あいづち・あいきょうで3倍話せる英会話』(講談社、共著)などがある。訳書は『Love from the Depths ― The Story of Tomihiro Hoshino』(立風書房)、『Rudolf and Ippai Attena』(講談社、共訳)など。 https://www.wordsmyth.jp

編集:GOTCHA!編集部

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