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どんな状況でも英語がとっさに話せるようになる即興スピーキング練習法

自己表現スピーキング

「英語で言いたいことがすっと口から出てきたらいいのに」。そんな願いをかなえるスピーキング練習法があります。俳優で英語講師の秋江智文さんに、簡単にできる即興(インプロヴィゼーション)のエクササイズを3つ紹介してもらいましょう!

この連載「自己表現スピーキング」の前回までの記事はこちら

勉強はしているのになぜ英語が話せないのか?

この連載では、英語で自己表現できるスピーキングについてお伝えしてきました。しかし、「どうしたら思っていることを英語で話すことができるのか?」に答える前に、「どうしてこんなに英語を勉強をしているのに話せないのか?」に答える必要があるかもしれません。

英語を話していて、「こんなことを言ったらおかしく思われるかな?」「正しい文法で言えているかな?」「単語なんだっけ?」「通じてないんじゃないかな?」と不安になることってあると思います。好きなはずの英語、または仕事や受験で必要な英語なのに、英語で話をしようとすればするほど怖くなってしまう。文法や単語は知らないわけじゃないけど、話すとなると途端に不安で発言できなくなる。そんな経験があるのではないでしょうか?

中学生くらいの生徒に、他の生徒の前で簡単な英語を使って話をしてもらおうとすると、決まって教科書やノートから答えを探そうとします。大人も道端で突然、英語で話し掛けられて、普段なら答えられそうな質問にも「アイ ドント ノー イングリッシュ」と言ってしまっている光景を見ることがあります。これは、知識はあっても、正しい英語を話さなくちゃいけないという不安や恐怖のせいで、本来持っている英語の力が発揮できていないのです。

自分への制約を解き放つ方法

不安を感じると、攻撃や逃避の反応を引き起こすドーパミンなどのホルモンが、認知をつかさどる脳の前頭前野の活動を停止させてしまいます。このために頭が真っ白になり、知っているはずの単語も出てこない場合があるのです。

この現象は、どのような方法で解決できるのでしょうか?

その答えは、「即興(インプロヴィゼーション)」にあります(「アドリブ」と呼ぶ人もいます)。即興と聞くと難しく思えるかもしれませんが、実は至って簡単なものです。子どもにボールを1つ渡すと、幾つもの遊びを生み出します。これも即興です。子どもは即興の達人で、自分の思ったことや感じたことを自由に表現できるのです。同じように英語も即興的に使えたらいいですよね。

即興演劇の先駆者であるイギリスのキース・ジョンストン氏*1は、次々と思い浮かぶ自然発生的な力と想像性が結び付くことで即興が生まれると考えました。しかし、失敗や他人に見られることなどへの不安や恐怖のために、「これを言っちゃダメ」「あれをしたらダメ」などと自分で判断してしまう検閲が生じるので、結果としてこの自然発生的に行動する力が失われてしまうのです。大人になればなるほど、自分に制約を課して厳しい目を向けることが多くなります。そのため、英語を話すときも、文法や語彙が正しいか、相手に変に思われていないかなどと余計なことばかり考えてしまい、思うように話せないのです。

では、どうすれば、その自然発生的な力を取り戻すことができるのでしょうか?

方法はとても簡単です。それは「普通にやる」です。賢く話そうとしない、複雑な文法や難しい単語を無理に使おうとしないことです。カジュアルな言い回しをしろとか、専門用語を使うなとか、言っているわけではありません。思ったことを等身大の自分で表現しましょうということなのです。当然、話す中で文法や単語を間違うかもしれません。しかし、話の中身に集中していれば、自分も聞き手も多少の間違いは気にならないはずです。

即興的に英語を話すための3つのエクササイズ

ここからは、即興で話せるようになるためのエクササイズを紹介します。どれもやってみると楽しいので、一緒に行う相手を見つけて大いに盛り上がりましょう(1人でできるエクササイズもあります)。ただ、あくまで英語学習ですので、英語の文法や単語に精通している人にエクササイズの様子を見てもらって、後で英語の間違い訂正してもらうのが最も理想的です。

Present(プレゼント)のエクササイズ

2人で行います。1人が Giver(贈り手)、もう1人が Receiver(受け手)になります。Giver は Receiver に、想像上の箱を手渡します。箱の大きさや形は自由に想像してください。Receiver は箱を渡されたらそれを開けて、 Thank you for ~. I wanted it. というふうに、自分が何をもらったのかを言います。~には即興的に思い付いたものを入れましょう。それに対して Giver は I knew you wanted it because ~. というふうに理由を言います。Giver は相手が言ったものに合わせて返答しなくてはいけないので、Receiver よりも難易度が高くなります。

下にエクササイズの例を挙げます。

Receiver: Thank you for the fish bone. I wanted it.

Giver: I knew you wanted it because you had a bad temper. You need more calcium.

日常ではほぼあり得ませんが、「魚の骨」をプレゼントした例です。こんなふうに思い切ったプレゼントにしてみるのも面白いですよ。

One Phrase(1つのフレーズ)のエクササイズ

2人以上で行うエクササイズです。やり方は、あるタイトルを決めて、それに沿って1人ずつ句や節を言っていき、文章を作っていきます。シンプルですが、話が自分では思いがけない方向に進んでいくので、とても面白いです。大人数で行うと自分の順番がなかなか来なくて緊張感が薄れてしまうため、最大6人くらいまでがおすすめです。

例えば次のように言っていきます。/ の箇所で話し手が交代しています。

Title: Prince

Once upon a time, / there was a prince. / He lived / with his brother / in a castle. / They liked / a huge pine tree / standing next to the lake. / They climbed it / once a year.

適当な話ですが、作っている最中は大いに盛り上がりますよ。私はこのエクササイズを個別レッスンで生徒と一緒に行っています。上の例は冒頭部分ですが、話を続けていって終わりまで作るとかなりの文章量になります。そのため、エクササイズを行いながら生徒に英語を書き留めてもらうと、本人に自信が付きます。学習者自身がその文章を読み返すことで、自分の文法や言い回しのチェックをして間違いに気付くことこともできます。何よりも、自分の言葉でできたユニークな話を文章で残しておくことは大きな喜びにつながります。学習へのモチベーションもアップしますよ。

Keyword Speech(キーワード・スピーチ)のエクササイズ

中級者以上向けのエクササイズです。1人で行えますが、誰かと一緒に行うと、互いに話を聞けるのでよいと思います。1人で行う場合でも、しっかり声を出し、できれば録音して後で間違いなどをチェックしましょう。このエクササイズも、英語の先生に間違い改善点を指摘してもらえるのが理想的です。

方法は、さまざまなキーワードが書かれた紙を用意して、それをくじのように引いて、引いたキーワードにまつわる1分間スピーチを行います。キーワードは何でも構いません。レベルが高いエクササイズですが、脳を追い込んでなんとか話を続けようとするため、かなり効果的なトレーニングになります。

キーワードの例として下のようなものが考えられます。

memory

my parents

organic

health

god

stress

nightmare

best friend

school days

Christmas

自分が興味のあるキーワードだけを用意するのではなく、ランダムにいろいろなものを使うのがポイントです。organic など自分に関連がないものでも、下の例のように取りあえず言葉をひねり出すことが大切ですよ。

I am not interested in any kinds of organic products, but my friend is ...

3つのエクササイズ、いかがでしたか?

どのエクササイズも、今持っている英語力を駆使すれば、自分が思っている以上にできるものばかりです。普段から「間違った英語を言ったらダメだ!」なんて思わずに、思ったことをどんどん口にしてみましょう。

失敗も創造的な楽しさになる

即興のエクササイズの醍醐味は、失敗も楽しめちゃうことにあります。むしろ失敗や間違いがあるからこそ、楽しいのです。やりっ放しにせず間違いを減らしていくことはもちろん大事ですが、間違い探しばかりしていても英語は上達しません。

学習に即興のエクササイズを取り入れて、もっと豊かに自分の思いや考えが表現できるようになっていけば、英語力も自然と上がっていくでしょう。

秋江智文

文:秋江智文

高校から続けた演劇を本格的に学ぶべく、演劇の本場イギリスに留学。演劇が教育、医療、ビジネスなどの現場で研修に使われていることに感銘を受ける。帰国後は俳優に演技を教える傍ら、演劇を用いての英語教育やビジネスパーソン向けのスピーチ講座などを行っている。

編集:GOTCHA!編集部

*1:参考文献:『ドラマ教育入門―創造的なグループ活動を通して「生きる力」を育む教育法』小林由利子・中島裕昭・高山昇・吉田真理子・山本直樹・高尾隆・仙石桂子 共著、『Presence: Bringing Your Boldest Self to Your Biggest Challenges』Amy Cuddy著