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英語圏の恋人がいるようにスピーキング練習する方法

自己表現スピーキング

どんなにたくさん英語表現を知っていても、状況と相手に適した使い方ができなければ、コミュニケーションは成り立ちません。英会話本をひたすら音読するだけでは、生きた会話ができるようにはならないのです。「英語で話す仲の良い友達や恋人がいたら、スピーキング力がアップするだろうに!」と思っても、現実にはなかなか難しいこともありますね。現実にはいなくても生き生きした会話が英語でできるようになる練習法を、俳優で英語講師の秋江智文さんに教えてもらいましょう。

この連載「自己表現スピーキング」の前回の記事はこちら。

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「何を言うか」よりも「どう言うか」の方が時に大切

英語が伝わらない理由は、話し方にあると考えたことはありますか?実は、さまざまな場面で、「何を」伝えるかではなく「どのように」伝えるかが重要です。

多くの人が、自分の言いたいことを伝えるために語彙や文法の勉強をしています。自分の気持ちを的確に伝える英語表現はどれなのか、いろいろと学ぼうとするでしょう。

例えば、「私はあなたを心配している」と表現する英語には次のようなものがあります。

I have been worried about you.

これは上記の日本語をそのまま訳した感じです。

I am always thinking about you.

こちらはかなり親密な雰囲気があります。

You make me so restless.

restlessは「そわそわする」という意味。少し回りくどい文です。

You are always on my mind.

この表現は、相手との関係によっては勘違いされてしまいそうです。

このような表現のバリエーションを知っておくと、その場その場で適切な言い方をすることができますね。しかし、これらのどれを使うにしても、状況や相手との関係性をきちんと把握していないと、相手に伝わらないことがあります。適切な言葉を選んだつもりでも、状況や相手に即した「言い方」ができないと、大きな誤解を招くことさえあるのです。

適当に「おいしい」と言っていませんか?

個人的な話ですが、私は昔、彼女によく料理を作ってあげました。料理好きなので作ること自体は特に苦ではなかったのですが、料理を出しても彼女が何もコメントをしなかったり、味を尋ねても「あっ、おいしい、おいしい」と軽く感想を言われるだけだったりするのが嫌だった覚えがあります。

こういった状況は皆さんも経験が多々あるのではないでしょうか。言葉の表面をなぞっているだけで、内容が相手に全く伝わらない。もしくは、思っていることを伝えたつもりでも、それが相手に届いていない、など。言葉そのものより、話している場所や話す相手への言い方や伝え方が重要な場面が多くあるわけです。つまり、言葉はその場の状況や関係性、言い換えればコンテクスト(context、文脈)に大きく影響されます。

コンテクストのない会話練習は意味がない

言語学者のマイケル・ハリデーは次のように言っています。「われわれは言語だけを独立させて理解はしない(中略)言葉にはいつも状況や、行動や出来事や人の背景がかかわってくるのである。そして、それらが言葉の意味を引き出していくのである」*1と。また、『Children’s Mind』の著者マーガレット・ドナルドソンは「子どもは言葉を全てから切り離して理解することはない。子どもはその状況を理解するのである」*2と言っています。

この2人が言語についてこのように指摘するように、言語学習においてもコンテクストの理解は欠かせません。しかし、日本で行われているほとんどの言語学習は座学中心で、本当の意味でコンテクストを組み込んだ学習法はほぼ見られません。

演劇的な会話練習であらゆるコンテクストを体験できる

そこで今回は、前回同様、演劇を使った学習法を紹介します。

演劇はコンテクストの宝庫です。演劇では全てが想像によって行われ、どんな状況や関係性も作り出すことができます。想像であればどんな設定も可能で、いろいろな場面や人間関係に応じた英語を学ぶことができます。例えば、会社での同僚同士の会話、親同士の会話、恋人同士の会話、弁護士と被告人の接見での会話など、どんなものでも作り出せるのです。

また、演劇は人に働き掛けて感情やイメージを喚起します。英語では play(劇、遊ぶ)と呼ぶくらい楽しいものです。演劇の手法を英語学習に取り入れれば、従来の無味乾燥なテスト志向の学習から、実践志向の学習にシフトできるでしょう。

2人で行う想像的な会話練習法

それでは早速、とてもベーシックな、2人で行う練習法を紹介します。誰か周りの人に声を掛けて、ぜひやってみてください。

今回は、次の短い会話を例として使います。

A: This is fantastic.

B: No, it isn’t.

A: What?

B: Well, this isn’t good.

A: It’s terrific.

B: To be honest, it’s awful.

A: I’m sure it’s wonderful.

B: It’s a disaster.

A: On the contrary, it is splendid.

B: If you say so, just do as you wish.

A: ...

B: Thank you.

(1) まずはこの会話を2人で声に出して読んでみてください。A と B の役を交替しながら、2、3回読みましょう。

(2) 今度は分からない単語を調べます。disaster は「災害、天災」という意味ですが、ここでの It’s a disaster. は「こんなの本当に最悪だ」という意味です。

(3) さて、そもそもこの会話に登場する A と B は何について話しているのでしょうか?考えてみましょう。

基本的には、A はあるものが好きで、B はそれが嫌いなんですよね。例として「納豆」なんかが挙げられそうです。「ジェットコースター」も好き嫌いが分かれます。そういうものをイメージしながら言ってみると、会話の内容に納得できるでしょう。

これを私のレッスンでやったときは、子どもである生徒たちからは「梅干し」や、ある「映画」なんていう案が出ました。他に何か好みが対立するようなものはありますか?特に正解はありませんので、自由に想像してみてください。

ではアイデアが出てきたら、それをイメージして会話をもう一度2人で読んでみましょう。

(4) お気付きかもしれませんが、ここで問題になるのが、最後の3行ですよね。それについてちょっと考えてみましょう。

B: If you say so, just do as you wish.

A: ...

B: Thank you.

B が「そう言うんだったら、思ったようにすれば」と言い、それに対して A は無言で、もしかしたら何かをしているのかもしれません。そして最後に B が突然「ありがとう」と言っています。

いったい最後の3行で何が行われているのでしょうか?

「映画館」を例に取ってみると、あるカップルがある映画を見るかどうか口論をしている状況を想像することができます。A はその映画を見たいと思っていますが、B は見たくないのでしょう。しかし最後には B が諦めて「好きにすれば」と言い、それを聞いた A は自分が諦めて B の好みの映画のポスターの前に歩いていったから、B は「ありがとう」と言ったのかもしれません。

私のレッスンで「梅干し」を選んでいた子どもたちは、最後で A が B の分の梅干しも食べてあげたりしていました。「ジェットコースター」を選んだ子どもたちは、最後まで A が自分の意見を押し通して、B の最後のせりふを I will follow you. に変更していました。このように多少せりふを変えても構いません。あくまでポイントは、コンテクストを想定して、それに適した表現方法を学ぶことです。

皆さんも、2人は何について話しているのかを自由に考えて、せりふを言ってみましょう。

A と B がどんな関係なのかを考えて演じることも面白いです。これまでのレッスンでは、A を娘、B を父親とし、娘が父親に新しい恋人を紹介するという状況を設定したことがあります。関係性が明確になると、途端に盛り上がりますよ。

現実では体験できないことも演劇的世界では可能

いかがでしょうか?この練習法は1人でするのは難しいですが、学校の英語サークルや英語の勉強会などで行うとかなり盛り上がります。最後に設定した状況での会話を発表し合うと、お互いのアイデアを知ることができて楽しいです。

この練習法の利点は、さまざまなコンテクストで言ってみるので、同じ言葉でもいろいろな表現方法があると学べることです。また、会話を繰り返し声に出して読むことになるので、使いこなせる言い回しや語彙が自然と増えていきます。単語帳だけで知っていた単語を体感し、身に付けることができるのです。

英語を上達させるには、外国に行くか恋人をつくるように言われることがあります。これによってさまざまなコンテクストでの英語が学べるということだと思います。確かに一理ありますが、現実的に全員ができるものではありません。しかし、想像でさまざまな状況や関係性をつくって会話をすることは可能です。演劇をツールとすることで、現実ではなかなか出合えない多様なコンテクストを体験することができます。

今回の練習法の参考文献

演劇を使った言語学習についての本です。

Second Language Learning through Drama: Practical Techniques and Applications

Second Language Learning through Drama: Practical Techniques and Applications

 

秋江智文

文:秋江智文

高校から続けた演劇を本格的に学ぶべく、演劇の本場イギリスに留学。演劇が教育、医療、ビジネスなどの現場で研修に使われていることに感銘を受ける。帰国後は俳優に演技を教える傍ら、演劇を用いての英語教育やビジネスパーソン向けのスピーチ講座などを行っている。

編集:GOTCHA!編集部

*1:参考文献:M. A. K. Halliday, “Language As Social Semiotic”

*2:参考文献:Margaret Donaldson, “Children’s Minds”