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祝・ノーベル賞!京都大学の無料英語オンライン講座の「素数ものさし」とは?

京都大学のオンライン講座

ハーバード大学やスタンフォード大学など世界の名門大学の講義が動画で見られる時代。通訳・翻訳者で英語教育の研究にも携わる佐々木南実さんに、今回は京都大学のオンライン講座をガッツリ受講いただきました。

オンラインで世界中の大学の講座を受講できる、MOOCの世界を探究する本シリーズもいよいよ最終回。前回まではアメリカの超名門、アイビーリーグ大学への無料ネット留学をレポしてきたが、今回は本庶 佑(ほんじょ たすく)特別教授のノーベル賞受賞を記念し、京都大学がMOOC講座を提供している「KyotoUx」を訪ねることに。

まず、京都大学の世界における位置づけを検証するために、イギリスの教育情報誌『Times Higher Education』の世界大学ランキングをチェック。京都大学は2019年の大学世界ランキングでは65位、日本の大学ランキングでは1位に輝いている。

Kyoto University is one of the most accomplished research-oriented universities in Asia. This is due to a unique approach to education and research, which encourages the creativity and dialogue essential for groundbreaking research and discoveries. 

京都大学は、アジアで最も卓越した研究志向の強い大学の一つです。ユニークなアプローチ方法で新しい発見に不可欠な創造性を育み、活発な意見交換を推進した教育と画期的な研究を行っています。

との説明。ふむふむ。

京都大学のオンライン講座、KyotoUxに行くには、世界の大学のMOOC講座が集まるウェブサイトの一つ「edX」を利用するのが近道だ。(登録制。詳しくは連載第2回を参照)

gotcha.alc.co.jp

KyotoUxのMOOC講座はすべて英語だが、併設されているFacebookページに行けば、日本語で講義の概要を読むこともできる。さっそく京大の門を叩いてみるとしよう。

世界に向けて日本の学びを発信

京都大学のエンブレムのデザインは大きなクスノキがモチーフとなっている。以前に事務局および部局における印刷物、レターヘッドなどに使用されていたものを、国際交流の進展にともない、1950年以降、大学としてのエンブレムの必要性が高まり、これが大学のシンボルマークとして使用されるようになったというから面白い。

今、MOOCを通じて、まさにこのエンブレムは世界に向けて日本の学びを発信する場所を示すようになった。

KyotoUxのFacebookページでは、このエンブレムの後ろから可愛いゴリラがちらりとこっちをのぞいている。経営管理大学院の山内裕准教授による‟Culture of Services: Paradox of Customer Relations”のビデオをONすれば、京大エンブレムの「のれん」を先生がくぐってお寿司屋さんの中へ。

ここがサービソロジー(医療から観光まで幅広いサービスに対し、科学的・工学的にアプローチする「サービス学」)という学問領域への入口である。

1時限目:Culture of Services: Paradox of Customer Relations

  • 【講座名】「サービスの文化:顧客との関係のパラドックス」
  • 京都大学経営管理大学院 山内裕准教授

これはハイレベルである。MOOCという巨大な学びの世界の中でも、難易度は最高峰ではないだろうか?山内先生は「サービスは闘争」であるという。

例えば、値段もなくお品書きもない寿司屋のカウンターなどでは、すし職人と顧客が言葉のやりとりでお互いの期待を見定めて、サービスを調整していく。対等な人間関係の中にのみ生まれる緊張感を乗り越えてこそ、サービスを授受する真の喜びがあるという理論である。

もちろん西洋文化にもソムリエやバトラーなどの文化はあるが、それともちょっと違う感じだ。つまり、山内先生のセオリーは日本文化から生まれた独特の理論である可能性が高い。精神世界にまでサービスを昇華させた「サービス道」ともいえる世界観のようにも見える。

実際のサービス業の様子をビデオ分析する方法も勉強できるので、8週間後にはいつものカフェのお姉さんの態度を違う視点から見ている自分に出会えるかもしれない

予習のための推奨読書

「闘争」としてのサービス

「闘争」としてのサービス

 

▼講座の入口はこちら!

www.edx.org

2時限目:More Fun with Prime Numbers

  • 【講座名】「素数で遊ぼう」 
  • 京都大学理学研究科 伊藤哲史准教授

「素数」と聞いて、「博士の愛した数式」しか思い浮かばない、ド文系––というか完全に数字アレルギーの私のような人間も、あれ? 思わずのぞいてみたくなる本コース。

身近なところにある素数の基礎から暗号化などの最新トピックまで、実際に問題を解きながら講義ビデオや解説を見ることができる。

2015年に講座が初登場すると、学生たちから大人気だったため、2017年にリニューアル・バージョンが出たのだとか。伊藤先生自身も、「何千人単位の受講者がいたと知って、それはすごいと思った」と語られています 。

素数Tシャツを着こなし、京大特製の 素数ものさし(値段は577円。・・・素数!)を紹介してくれる伊藤先生はとてもチャーミング。聞けば、素数は個人情報を守ったりするのにとっても重要なんだとか。

しかし、「フェルマーの小定理」って英語でFermat’s little theoremっていうの?なんか、かわいい!ちっちゃい定理・・・というような感想しか出てこない私には、まあ、当然無理でした。でも、数学が好きの人にはたまらないんでしょうね!私は・・・超ミニサイズの定規でもデザインして、京大購買部にプレゼンに行こうかな? (フェルマーの小定規)

▼講座の入口はこちら!

www.edx.org

京都大学が提供するその他のコース

Sustainable Urban Freight Transport: A Global Perspective

  • 【講座名】「持続可能な都会のロジスティクス: グローバルな視点から」 Delft University via edX

こちらはオランダ・デルフト工科大学と京大KyotoUxチームが連携制作した講義。ますます増加する都市人口。食品や生活用品をお店に運ぶ、ゴミを収集する––都会で暮らす人間にとってライフラインであるさまざまなロジスティクス。これがいかに持続可能であり続けることができるのか?人類に突きつけられた命題に対する学びに、国境などないのである。

EXPLORING BIOETHICS THROUGH MANGA: Questions on the Meaning of "Life"

  • 【講座名】「漫画で学ぶ生命倫理:わたしたちに課せられた「いのち」の宿題」京都大学大学院文学研究科 児玉聡准教授 Kyoto University via edX

教科書(漫画です)が英語 と日本語 のどちらでも入手可能。ここまで親切に作ってもらえると、「難しそう・・・」を「読んでみたい!」が超えてしまうかも。

クローンや中絶、臓器移植、尊厳死の問題など、一人で受けるより、ディスカッションがものをいうコース(これがMOOCの真骨頂ですね)。アンビシャスな高校生にも挑戦してほしいコースだ。 

Chemistry of Life

  • 【講座名】「生命の化学」
  • 京都大学 iCeMS・化学研究 上杉志成教授 Kyoto University via edX

京都大学からのMOOC配信第一弾となった講義。受講者たちの感想も「私がこの講義で得た知識はアフリカ全土に利益をもたらすでしょう」など、まさに多様性あふれる世界が学びのフィールドとなっていることを実感できる。

MOOCを受講してみた感想(まとめ)

MOOCの向こうに無限に広がる知の世界を主体的に探究し続けた本シリーズでは、たくさんの魅力的な講義を紹介してきた。

しかし、大学の現状はどうかというと、いまだ立ち直れていないところが多い。アイビーリーグと呼ばれる世界の超名門大学たちでさえも、リーマン・ショックで受けた大打撃から未だ立ちなおれずにいるという現実がある。

ハーバード大学の財テクを引き受けるHarvard Management Corp.(ハーバード大学基金)は2008年以降4回もCEOが交代し、去年はついに社員の半分をレイオフした。

そんな時代に立ち現れたMOOCは、ある人にとってはキャリアをつなぐ救命ボートであり、ある人にとっては新しいビジネスを支えるノウハウであり、また別の人にとっては祖国を救う糸口をくれる可能性である。

大学にとっては大規模な社会実験であり、広報活動であり、CSRであり、純粋に学者たちが仕事をする場でもある。他にもきっとたくさんの人にとっていろいろな意味が絡み合うMOOCという巨大な学舎に、さあ、あなたならどんな意味を持たせますか?

佐々木南実

文:佐々木南実

エンタメ、ビジネス、キッズ英語から国際バカロレアプログラムなどの教育の研究まで、幅広く英語を実践する通訳、翻訳者。世田谷で英語教室、キッズ英語劇団を主宰。筑波大学大学院教育研究科在学中。

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