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英語で学ぶO・MO・TE・NA・SHI(おもてなし)!コーネル大学にネット留学

コーネル大学

ハーバード大学やスタンフォード大学など世界の名門大学の講義が動画で見られる時代。通訳・翻訳者で英語教育の研究にも携わる佐々木南実さんに、今回はコーネル大学のオンライン講座をガッツリ受講いただきました。

モールス信号を発明したアメリカの発明家、サミュエル・モールスと、電気技師エズラ・コーネルが電報会社ウェスタン・ユニオンの前身となる小さなベンチャーを立ち上げたのは1840年頃のこと。

このビジネスで富を得たコーネルが歴史学者のアンドリュー・ホワイトに誘われて創設したのがコーネル大学だ。「誰でもなんでも学べる大学をつくるなら、金は出すよ」と言ったというコーネルの思いを忠実に受け継ぐ、女子学生と黒人学生に初めて博士号を出したアイビーリーグ・スクールであり、ノーベル賞の全部門で受賞者を輩出するという、バランス感覚抜群の世界最高水準の大学なのだ。

80以上の学部を持つコーネル大学。博士号のフィールドは100以上

多彩な学びがモットーのコーネル大学が、自分たちの大学文化を伝えるために選んだMOOC講座がEthics of Eating(食べることの倫理)。コーネル大学の若き哲学者2人 (アンドリュー・チグネル准教授とウィリアム・スター准教授)による授業。

人類共通の営み「食」を軸にし、キャンパス内のさまざまな立場の人にインタビューし、議論し、学生たちと「食にまつわる倫理」について探究していく。

ひとつの正解を探すトレーニングを「教育」と呼んだ時代はとうに過ぎ、複雑に絡み合う世界を身をもって探究する学びの時代となった。これは、そんな学び――すなわち21世紀の「教育」を、最も洗練された形で見ることのできるコースのひとつだろう。

1時限目:Ethics of Eating(食べることの倫理)

(現在講座は開講していませんが、アーカイブとして視聴できます)

レストランでメニューを吟味する2人の男性。「注文決まった?」「アボカドサラダにしようかな」「アボカドはまずいでしょ、アボカド農園の労働者たち、かなり過酷な状況に置かれているらしいよ」「そうか。じゃあ、これはどうかな。養殖サーモンのアーモンド仕立て。うまそうじゃない?」「養殖魚って、サステナビリティー的にどうなのかな?」「このレストランには倫理的に食べられる料理はないのか!!」

二人の先生のこんな寸劇で始まる本コース。たいていの場合、食事を選ぶときの人間は、倫理なんて考えていられないくらい腹が減っている。そこで、食卓から離れたところで、食と倫理について哲学しようというのが、この講座の狙いだ。

イギリスの哲学者、ジョン・スチュアート・ミルの功利主義(多くの人々が幸せで苦痛が少ない政治を行うべきという思想のこと)の解説からはじまり、食肉、野菜、労働者などのテーマを取り扱っていく。

コーネル農学部卒業の地元養豚業者を訪ねたり、後述するホテル経営学部の研修施設であり一流ホテルでもあるスタットラー・ホテルの厨房に学生たちが入り、地元食材で料理したりする場面も。

巨大ユニバーシティーの強みを生かして、絶対に学生を飽きさせない、6週間のコース。ぜひご賞味あれ!

学部直営の高級ホテルも併設する世界一のホテル・スクール

大学卒業後、実社会で活躍するための力が一体どれほどついているのかー大学教育の成果が厳しく問われるようになってきているのは昨今の世界的な潮流といえる。そんな中、90年以上も実社会と直結した大学教育を実践しているのがコーネル大学ホテル経営学部(School of Hotel Administration (S.H.A.))だ。

名高い S.H.A. の講義が MOOC でも受講できるとあれば見逃せないのは当然のことで、世界からすでに1万3000人もの受講者を集めている人気講座である。

S.H.A.の日本人卒業生としてはあの星野リゾートの代表、星野佳路氏がいる。

在京のコーネル卒業生の集いの案内をサイトで見る限り、卒業生以外の参加も許される場合もあるようなので、MOOC コーネル生として参加すれば、星野氏のようなハイエンドなネットワーキングの機会もつかめるかもしれない

理論と現場を直結させるための「実験室」と彼らが呼ぶのが、隣接されたザ・スタットラー・ホテル・アット・コーネルユニバーシティ。アメリカのホテル王のひとり、エルズワース・スタットラーが大学に寄贈した施設で、学生たちの学びの場であると共に、正真正銘の一流ホテルである。MOOCでグローバル・ホスピタリティーを学んだあとは、ニューヨーク州イサカの広大なキャンパスに旅をしてみるのも一興かも。

予習のための推奨読書

Philosophy Comes to Dinner: Arguments About the Ethics of Eating (ディナーに哲学を:食と倫理に関するいくつかの会話)

Philosophy Comes to Dinner: Arguments About the Ethics of Eating

Philosophy Comes to Dinner: Arguments About the Ethics of Eating

 

2時限目:Introduction to Global Hospitality Management(グローバル・ホスピタリティー・マネージメント入門)

(現在講座は開講していませんが、アーカイブとして視聴できます)

「世界の労働者の11人に1人はホスピタリティー産業で働いている」というデータで始まる本コース。インバウンドだ、ツーリズムだと騒がしい日本も、人ごとではありませんぞ!

ビデオを見ると、4人の教授が暖炉の前でホスピタリティー産業について対話を交わしている。1時限目で受講した若い准教授たちのコースと比べると、ちょっと古くさいフォーマットで、しかも学術用語を多用するためか、ホテルやレストランなど身近な話題なのに英語が難解だ。

ちょっと我慢してディスカッションのフォーラムに進むと、世界各地からの学生が投稿した「国のイメージがホスピタリティー産業に与える影響は?」「観光地はどうすればそのユニークさを保持できるか?」など、興味をそそられるトピックが並んでいる。しかし、スレッドによっては発言がまったくないものもあり、1万3000人が受講 ーー というほどのにぎわいは正直、確認できなかった。

さらに進むと、「ホスピタリティー戦略とは?」「小規模ブティック・ホテルの勝算」など、地域振興、ふるさとツーリズムに応用できそうな内容が次々と登場する。

スマホひとつで世界の一流大学の講義を受け、一息ついて窓の外を見れば、見慣れたわが町の風景もビジネスチャンスにあふれたホスピタリティー・ビジネスの宝箱に見えてくるかもしれない。現代ならではのグローバルな視点で、故郷を見つめ直す良いチャンスになりそうだと思った。

というわけで今回は、コーネル大学の門をたたいてみました。次回もMOOCの向こうに無限に広がる知の世界を主体的に探究し続けますよ!

コーネル大学が提供するその他のコース

The Computing Technology Inside Your Smartphone(スマートフォンの中のコンピューター技術)

スマホのプロセッサはどう動くのか? という基本の講義からはじまり、学生一人ひとりが小さな自分のコンピューターをデザインしてみる、というコース。制御ハザード、パイプライン処理など、情報工学系のみなさんにはおなじみのテーマが次々と登場。留学前の肩慣らしにいいかも?

Networks, Crowds and Markets(ネットワーク・大衆・マーケット)

D.イーズリー教授の著書「ネットワーク・大衆・マーケット―現代社会の複雑な連結性についての推論」のもととなった学際的講義のMOOC版がここに登場。社会、経済、そしてテクノロジーがわれわれをどのように「つなげて」いるのか? ゲーム理論、インターネットの構造などを通じて勉強していく。

A Hands-on Introduction to Engineering Simulations(エンジニアシミュレーション体験紹介講座)

エンジニアリング専攻、中級者以上向け。工学シミュレーションの最先端企業ANSYSがスポンサーするコースで、実際にANSYSのシミュレーションツールを使ってさまざまな問題解決に挑む、実践型ワークショップ。エキスパートの思考方法を手に入れ、キーボードを叩くだけのエンジニアはもう卒業しよう! (と、バスカラン教授が誘っています)

佐々木南実

文:佐々木南実

エンタメ、ビジネス、キッズ英語から国際バカロレアプログラムなどの教育の研究まで、幅広く英語を実践する通訳、翻訳者。世田谷で英語教室、キッズ英語劇団を主宰。筑波大学大学院教育研究科在学中。

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