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朗読のプロ、青谷優子さんが指導!英語朗読の誌上レッスンに挑戦してみましょう[英語音声付き]

朗読のプロ、青谷優子さんが指導!英語朗読の誌上レッスンに挑戦してみましょう[英語音声付き]

連載最終回は、読者のみなさんに英語朗読を体験していただきます。バイリンガルアナウンサーで英語朗読家の青谷優子さんによる、GOTCHA!誌上レッスン。ぜひ、ご参加ください。

作品を理解し、想像し、可視化する

連載の最終回は 「英語は朗読でうまくなる!」に収録されている 作品 A Glass of Milk を実際に朗読してみましょう。中間は省略し、前半と後半に分けてあります。

A young boy from a poor neighborhood was selling candy door-to-door to get through school. One day, with only one dollar to his name, he was so hungry that when he got to the next house, he wanted to ask for a meal. When a woman of middle age opened the door he lost his nerve and asked for a glass of water instead. The woman, not so well-off herself, thought he looked hungry so he brought him a large glass of milk.

※ 再生ボタンを押すと音声が流れます。お使いのアプリやブラウザの仕様により、再生ボタンが表示されない場合があります。

【訳】貧しい地区で育ったある少年が、学校を出るために家々を回ってキャンディーを売り歩いていました。ある日、彼は一ドルしか持っておらず、次の家に着いたら食事を恵んでもらおうと思うほどおなかがすいていました。中年の女性がドアを開けたとき、彼はおじけづいてしまい、代わりに一杯の水をお願いしました。その女性も決して裕福ではありませんでしたが、おなかが減っていそうな彼の様子を見て、大きなグラスに注いだミルクを持ってきてくれました。

 牛乳代を支払おうとした少年に女性は、「いいのよ、お金なんて」と言い「強くなりなさい!あなたならきっと立派な大人になれるわよ」と励まします。

子供がいない女性にとって、この少年との出会いはいい思い出となります。

その後年月が経ち、老婦人となった女性は重い病気にかかり手術を受けます。彼女が目が覚ましたところからが後半です。

When she woke up, she was very happy to be alive but she knew she faced another challenge. Without health insurance or any family, she knew she would be paying off her medical bills for the rest of her life.

The next day, a doctor knocked on her door. In his hand was a medical bill. He smiled when he gave it to her. “Open it please.” She was nervous as she opened the envelope. The bill inside said, “Paid in full with one glass of milk.” Then she recognized the boy.

【訳】目が覚めたとき、彼女は生きていてよかったという気持ちになったのですが、別の困難に直面していることも知っていました。健康保険もなく家族もいないので、死ぬまで医療費を払い続けなければならないと分かっていたのです。

その翌日、一人の医師が彼女の病室のドアをノックしました。彼の手には医療費の請求書がありました。彼はほほえみながらそれを彼女に渡しました。「どうぞ開けてください」。彼女は緊張しながら封筒を開けました。請求書の中には、「一杯のミルクにより全額支払い済み」と書いてありました。そのとき彼女が、彼があのときの少年だと気づいたのでした。

理解(Comprehension

まずは全体を読んでみて、俯瞰(ふかん)で物語をとらえます。

最初は黙読で構いません。前に進めないほどわからない単語がない限り、辞書を引かずにストーリーを味わいます。

テーマは何か?作者は何を言いたいのか?を感じとったあと、細かく読んでいきます。

想像(Imagination)と可視化(Visualization)

次に前半から読みます。

まず登場人物を確認しましょう。A young boy と a woman of middle age の二人です。それぞれがどんな人物なのか想像していきます。

  • young で poor neighborhood に住んでいるこの少年は何歳ですか?

学校へ通ってはいるけれど、キャンディーを売ることしかできない=まだ体が大きくない=小学生の4、5年生かな?と私は想像しました。

  • どんな服装でしょうか?体格は?お腹が空いているのに水しかお願いできない小心者の少年はどんな声をしているでしょうか?

できるだけ具体的に想像しましょう。そしてもう一人の登場人物 a woman of middle age は、

  • 何歳でしょうか?髪型は?服装は?
  • そして、どんな家に住んでいるのでしょうか?

私は(そんなに金持ちではない)アメリカの家を想像し、ポーチあたりで二人は話をしたのだろう。アメリカのコップは恐らく日本のコップより大きいだろうな、小さな男の子の顔が隠れるくらいのコップかな?などと考えてシーンを頭に描きます。

文の区切りを考える

理解から可視化までの作業が終わったら、一文ずつ声に出していきます。

このとき、どこで文を区切るかを考えて、区切る箇所に「/」(スラッシュ)などを付けてマーキング(印付け)します。こうすると長い文のどこで息継ぎをすればよいかがはっきりとわかります。

A young boy from a poor neighborhood / was selling candy door-to-door / to get through school.

逆に、/  /の間にポーズは置かない、まとまりをつけて読むということを意識します。door-to-door(一軒一軒)などの決まった言い方は、doortodoorとスペースがないいような読み方をしましょう。

続く文の冒頭にある One day, という表現は物語によく出てきますが、「ここからストーリーが始まりますよ!」という合図でもあるので、私は少し声を上げて強調して読みます。

人物の動作のタイミングに合わせて読む

When 以下の文はアクション(動作)を表しています。したがって「誰が」「何をしている」かが、聞いている人に見えてくるような読み方をしないといけません。

ここでは、少年が呼び鈴を鳴らすと女性が「誰かしら?」という顔をして出てきて、女性を前にした少年が少し後ずさって小さな声で「すみません。お水を一杯いただけませんか」とお願いした……。そんなシーンが私には浮かんできました。

シーンを頭に描くと、自然と動作と同じようなタイミングで文章を読むことができます。聞いている人にとっても、自然で想像しやすい「ペース」と「間」が生まれるのです。

前半の最後の文にある not so well off herself で、中年の女性自身もあまり裕福でないことがわかります。(食事をさせてやる余裕はないけれど、かわいそうに、おなかすいているのね…)という女性の心の声を聞きながら、so she brought him a large glass of milk.を読むと、私の声は少し優しい響きになりました。

ストーリーの伏線をしっかり押さえる

もうひとつの大事なポイントは、a large glass of milk という箇所です。ここはスピードを落としてさらに強調して読みました。

なぜなら、これが最後の「種明かし」の重要なキーワードで、聞き手に覚えておいてもらわないといけないからです。

ネタばらしをしてはいけませんが、伏線はきちんと押さえましょう。

人物の表情や気持ちを反映させる

続いて後半を詳しくみていきます。

まずは女性を想像しましょう。何歳になっていますか?身寄りのいない彼女の病室は殺風景かもしれません。

ベッドの上で「生きていてよかった!」と思いながら、今後どうしたらいいのかと途方に暮れる女性はどんな表情、どんな声でしょうか?全体がすこし暗いトーンになります。 Health insurance や her medical bills という言葉は一語のようにつなげて読みましょう。

クライマックスに入る「間」も大切に

最後に起承転結の「結」にあたる箇所を読みます。

ここが話のクライマックスですから The next day の前にちょっと間をおいて、聞き手に「さあ、いよいよですよ!」と合図をするとともに、一晩経ったという時間経過を間で表現しましょう。One dayを読んだときと同様に The next day も強調します。

次の段落で a doctor が出てきます。この単語は大袈裟になってはいけませんが、少しスピードを落として丁寧に読むと「大事な登場人物だ」ということが聞き手に伝わります。そこからの文章も、またアクションが続きますので、頭の中でシーンを描きましょう。

The next day, a doctor knocked on her door. In his hand was a medical bill. He smiled when he gave it to her. “Open it please.” She was nervous as she opened the envelope.

部屋に入ったお医者さんの手には、医療費の請求書の入った封筒。医者はベッドに近寄り、「笑顔で」女性に封筒を手渡します。一方、女性は封筒を受け取りながら、「高額だったらどうしよう」とドキドキしています。

笑顔の医者、そして困った顔をしている女性の顔の対比を頭に描きながら、ゆっくりと封筒をあけて中身を確認しましょう。

動作も交えてストーリーを伝える

請求書には Paid in full with one glass of milk. と書かれていますが、女性はこれをどんな風に読んでいますか?

私は黙読していると判断しました。彼女の心の声をどう表現するかが、このお話の一番のポイントとなります。

「え?どういうこと?ミルクって何?」と混乱しながら読んでいる姿を想像した私は、ゆっくりとした不思議そうな声をつくりました。最後に「?」が付くくらいのイントネーションです。

そして、顔を上げて医者の顔を見たとき、時が何十年もさかのぼり、牛乳を飲んで1ドル支払おうとしたあの少年の顔が医者の顔に重なります。

このシーンを思い描くと、最後の一文を読む前にどうしても「間」が必要だと考えたので、実際自分の顔をゆっくり上げ、息を飲むような動作をしてから Then he recognized the boy. と読みました。

最後の the boy が「一杯の牛乳をあげた、あのときのあの少年!」ということを、聞き手にも思い出させるようにゆっくりと強調します。

この再会は彼女にとって大変な驚きですが、「うれしい」喜びでもあるので、the boy を優しい笑顔で発音すると、聞き手も「よかったね!」と共感することができるのです。

こんなふうに、場面場面を頭に描きながら単語の持つ意味をしっかりとらえ、それをどう音にするか考えながら読むと、それは聞き手に届き「朗読」として楽しんでもらえるようになります。皆さんもぜひ挑戦してみてください。

青谷優子の英語読書 Vol. 6

今回で最終回。私にとって思い出の英語本を、あと一冊だけ紹介します。

The Buried Giant by Kazuo Ishiguro

The Buried Giant by Kazuo Ishiguro

2017年にノーベル文学賞を受賞した Kazuo Ishiguro による、大人のファンタジー小説です。

以前に Remains of the Day と Never let me go は読んでいたのですが、それぞれ印象が全く異なりました。前者はとても気に入って映画も観たのに対して、後者は途中から読めなくなり本も人にあげてしまいました。

一人の作家にここまで極端な感想を持つのは自分にしては珍しかったので、ならばもう一冊と読み始めたのが The Buried Giant です。

結果はというと…。先が気になって気になって、台所でも風呂場でも読み続け、表紙がボロボロになってしまうほど夢中になりました。自分も靄(もや)の中に包まれ、老夫婦とともに旅をし、「記憶」とは何かを考え、ドラゴンと戦い、息子と再会しました。

そして最後に靄が晴れ真実が見えたときは、「え?そんな…」と思わず声に出すほど切なくなりました。美しい英語で書かれ、語り口もやわらかい静かな文章なのになんという読後感!

これ以上は言えません。ぜひ読んでみてください。 

The Buried Giant

The Buried Giant

  • 著者: Kazuo Ishiguro
  • 出版社: Faber And Faber Ltd.
  • 発売日: 2016/01/07
  • メディア: ペーパーバック
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  • メディア: 単行本

Yuko Aotani

文:青谷優子(あおたに ゆうこ)

幼少期をロンドンで過ごす。上智大学を卒業後、NHKに入局。リポーターやキャスターを担当した後、NHK国際放送局(NHKワールド)のニュース番組『NHK NEWSLINE』のメインアンカーとして活躍。並行して英語文芸の朗読番組『Listening Library』の演出・制作・出演を務め、日本文学を海外に紹介した。2015年2月に独立。朗読家、バイリンガルアナウンサー、英語コミュニケーション講師として活躍中。

写真:山本高裕