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英語の発音を磨くなら、ネイティブ特有リズムを体で覚えよう

ネイティブ特有の英語リズムを体で覚える方法とは?

バイリンガル幼児の言語心理学を専門とし、現在は児童英語教師のためのジャズチャンツワークショップなどを主宰する内藤直美さん。ジャズチャンツを使って発音をネイティブのようにする方法を2回にわたり、教えていただきます。

こんにちは。内藤直美です。以前、日本から海外に転居する子どもたちに、短期間で英語力を付けさせるというレッスンを請け負っていました。子どもたちが楽しみながら高度な英語力を身に付けられる教材はないかと探していたときに出合ったのが、ジャズチャンツでした。

多くの生徒を海外に送り出しましたが、子どもたちの英語力の高さに驚いた現地校の先生から、どうやってこの英語力を付けたのかという問い合わせをいただいたこともあります。

ジャズチャンツは、幼児から大人まで対象者を問わずに使えますが、今回は幼児、児童クラスで導入している様子を紹介していきます。

Jazz Chants(ジャズチャンツ)とは?

ジャズチャンツとは、1970年代、ニューヨーク大学で外国人学生に英語を教えていたキャロリン・グラハム氏が、アメリカ英語の話し言葉の抑揚がジャズのリズムと重なることに気付き、考案した英語学習法です。ニューヨーカーが日常で使っている会話フレーズを自然なリズム、イントネーション、チャンク(言葉の固まり)のまま歌詞に落とし込み、グラハム氏ならではのナンセンスやユーモアのエッセンスを混ぜて、数多くの楽しいジャズチャンツが生み出されました。その後、世界中にジャズチャンツは広まり、自然な英語のスピーキング力、リスニング力を体得するための効果ある英語指導法として支持されるようになりました。

ジャズチャンツには、それぞれに英語の文法、構文、間違いやすい発音など、分かりやすい学習目的がしっかり組み込まれています

生徒たちにとって楽しい教材であるだけでなく、教える側にとっても、生徒の総合的な英語力アップにつなげられる大変魅力的な指導法です。

発音がネイティブ・スピーカーのようになった

発音がネイティブ・スピーカーのようになった

身体が英語独特のリズムを覚える

ジャズチャンツの魅力の一つは、子どもたちにも親しみやすく、音楽を聞くといつのまにか身体が揺れ動くジャズのシンプルなリズムをベースとしている点です。

どのチャンツも子どもが自然と口にしたくなるフレーズをシンプルなリズムで繰り返しています。曲はどれも、まず、フレーズの口慣らしに始まり、後半でより長い構文にチャレンジする構成になっています。子どもたちは英語をうまく言えた達成感を味わいながら、楽しく練習できます。

ジャズチャンツを何度も声に出していると、英語独特のリズムを身体が次第に覚えていきます。そのリズムの体得こそ、スピーキング能力には不可欠な部分です。

私のレッスンでは、慣れてきたら、手拍子に乗せてどんどんスピードアップしていく「早口チャンツ」をやり、ネィティブの大人の会話の速さについていける能力を付けさせます。身体がジャズのリズムで言葉を体得しているので、どんなに高速スピードチャンツを歌っても英語本来のリズムは崩れません。これが「ネイティブに本当に通じる英語」なのです。

それでは、簡単ですぐにでも楽しめるジャズチャンツをいくつかご紹介しましょう。

ジャズチャンツを声に出して試してみよう!

Stop that noise!

“Stop that noise!”は、英語が初めての子どもたちにもおすすめのチャンツです。その一部分を紹介します。

黄色でハイライトしている箇所(太文字の箇所)に4拍子のリズムがきます。手拍子をしたり、机を軽く叩いたりしながら、4拍子に乗せてフレーズを言ってみましょう。単語の途中で拍子が入る場合もあります。

Sh! Sh! Stop that noise! 

Sh! Sh! Stop that noise!

シーッ!シーッ!静かにしなさい!

シーッ!シーッ!静かにしなさい!

Come on girls. Come on boys.

Tell everybody to stop that noise!

女子は男子に、男子は女子に、

静かにするように言いなさい!

どの子も数回聞いただけで、身体を揺らしながら、チャンツの途中に出てくる Stop that noise!、Keep it down!、Please be quiet! などのフレーズを、表情豊かに言えるようになります。子どもたちにとって、英語の長いフレーズも正しい話し言葉のリズムに乗っていけば難しいものではありません。

5歳になる生徒が、この“Stop that noise!” を幼稚園で口ずさんでいたら、英語を知らない周りの友達まで覚えてしまいクラスで大合唱が始まったのだそうです。迎えに来た保護者たちが、子どもたちの滑らかな英語に驚かされたというエピソードがあります。それほど覚えやすく、子どもを引き付けるリズムなのです。

“Mosquitos Bite”などもジャズの低音ビートに乗りながら、記憶に残りやすい表現がたくさん覚えられ、2歳児クラスでも大活躍のチャンツです。

Mosquitos bite.

Bees sting.

Cats sleep.

Birds sing.

蚊は刺す。

ハチは刺す。

ネコは寝る。

鳥は歌う。

このようにリズムを刻みながら、動物たちの生き生きとした動作が続きます。「刺すのは、mosquitos は biteで、bee は sting なんですね!」という声をよく聞くのですが、このような日本で行われる英語の授業では習わない使い分けも、ジャズチャンツで学べます。

幼児、小学生のクラスで私が最初に勧めているジャズチャンツの本は、『Children’s Jazz Chants Old and New』(CD別売り)『Tiny Talk (Songbook)』(CD別売り)『Let’s chant, Let’s sing 1』(CD付)などです。ぜひ、ジャズチャンツの親しみやすいリズムを感じ取ってください。

Children's Jazz Chants Old And New

Children's Jazz Chants Old And New

 
Tiny Talk: Songbook

Tiny Talk: Songbook

 
Let's Chant, Let's Sing 1: Songs And Chants (Let's Go / Oxford University Press)

Let's Chant, Let's Sing 1: Songs And Chants (Let's Go / Oxford University Press)

 

ジャズチャンツでユーモアセンスが磨ける!

ジャズチャンツのもう1つの大きな魅力は、子どもたちを引き付けるユーモアが随所に散りばめられている点です。子どもたちがついつい感情移入してしまうような場面が分かりやすく設定してあります。そこで繰り広げられる会話はボケとツッコミの掛け合いだったり、最後に意外なオチがあったりします。

また、ユニークな性格の人物や動物が登場し、チャンツの語りに引き込んでいきます。ネィティブの子どもたちが小さい頃から親しむマザーグースのナンセンスな世界観と共通しています。英語を始めたばかりの子どもでも、そのナンセンスさに共感して笑えるチャンツがたくさんあります。

“Mama! Mama! My Socks Don’t Match!”では、ママがそろえてくれたはずの靴下がマッチしない!ところから始まります。子どもが文句を言っても、Oh, no! と一言で片づけるママ。

Mama! Mama! My socks don’t match!

One is red and one is blue.

One is bigger than the other!

ママ、ママ、靴下の組み合わせがそろっていないよ!

片方が赤で、もう片方が青だよ。

片方が、もう片方より大きいよ!

Oh, no!

あらやだ。

靴下に続けて、靴(shoes)もそろっていなくても 、またもや、お母さんの Oh, no!(あらやだ)。最終的には feet の大きさがそろっていない!?このオチには子どもたちは毎回嬉しそうに「ない、ない、ありえな~い!」。オリジナルのアイディアで my hands don’t match, my eyes don’t match とミスマッチがありえないものを即興で付け加える子もいて、何番までも詩が増えていきます。

簡単な掛け合いチャンツをやってみよう!

ジャズチャンツでユーモアセンスが磨ける!

幼児クラスでも大人気の“Wake up! Wake up”は、そのままでも楽しめますが、こうした掛け合いチャンツにはボケ役とツッコミ役のぬいぐるみを2つ用意して彼らの会話として設定するのもおすすめです。英語を話しているのが自分ではなくてぬいぐるみということになり、そのワンクッション置いた感覚が、英語を話すことの気恥ずかしさを緩和してくれます。また歌詞に合わせた大げさなアクションも付けやすくなります。

最初だけ紹介すると、

A: Wake up! Wake up! 

B: What time is it?

A: Wake up! Wake up! 

B: What time is it?

A: It’s time to get up     

B: What time is it?

A: It’s time to get up   

B: What time is it?

A: 起きて!起きて!   

B: 今何時?

A: 起きて!起きて!   

B: 今何時?

A: 起きる時間ですよ   

B: 今何時?

A: 起きる時間ですよ   

B: 今何時?

A: Come on, get up!         

B: I don’t want to get up!

A: Come on, get up!         

B: I don’t want to get up!

A: さあ、起きなさい!

B: 起きたくないよ!

A: さあ、起きなさい!

B: 起きたくないよ!

A: You must get up!          

B: I don’t want to get up!

A: You have to get up!        

B: I don’t want to get up!

A: A: You’ve got to get up!      

B: I don’t want to get up!

A: 起きなきゃだめ!

B: 起きたくないよ!

A: 起きなきゃだめ!

B: 起きたくないよ!

A: 起きなきゃだめ!

B: 起きたくないよ!

A: Get up! Get up! You’re going to be late!      

B: Late for what?

A: 起きて!起きて!遅刻しちゃうよ!

B: 何に遅刻するって?

この後、子どもたちが毎回大笑いするオチまで一気に掛け合いが盛り上がります。

このチャンツを文字だけで読むと、たいていの日本人の読み方は、アメリカ人には不自然なものになると思います。ですが、ジャズチャンツで耳から英語に慣れている子どもたちは、きちんと通じる発音、イントネーションで読むことができます。英語特有のリエゾン(音の結び付き)、音の省略、ストレス(アクセント)を正しく置くスキルを体得しているからです。

英語の会話では、自分が一番伝えたいところにストレスを置きます。ネィティブの幼児たちの会話を聞くと顕著に分かりますが、自分の要望、意見をはっきりと言うのが英語です。しかも、それは日常生活で鍛えていく部分です。日本人の子どもたちには、多くの訓練が必要となりますが、それをジャズチャンツは単純さ、楽しさで可能にしてくれています。初級クラスで楽しんでいる掛け合いチャンツは、他にもたくさんあります。

ジャズチャンツ育児のすすめ

ジャズチャンツ育児のすすめ

ジャズチャンツを使うと、子どもたちは聞こえたままの発音、強弱、リズム、発音の連携を、ネィティブセンスにあふれた英語で繰り返し練習することができます。

また、ジャズチャンツは子どもたちの日常生活の中の場面を取り入れています。お母さんに叱られたり、友達と喧嘩したり、寝るときの暗闇が怖かったり、具合が悪くなったり、ペットがいなくなったりと、普段の生活でも自然に使える表現が詰まっています。日常で起こりうる様々な場面で英語を疑似体験できるので、とっさに英語が口から飛び出すようになるのです。

お母さんと掛け合いチャンツをしたり、一人で英語ボケツッコミしている子どもたちの話を聞くと、楽しみながら生きた英語が生活に入り込んでいる様子がよく分かります。お子さんのジャズチャンツに魅了されて、英語力を上げていく保護者の方たちもたくさんいます。英語の楽しさを脳に記憶させながら、本格的な実力を付ける。それがジャズチャンツです。

幼児期からジャズチャンツに慣れた生徒たちはリスニング力が高く、話すと帰国子女のようだという褒め言葉をもらうので、自然に英語に自信を持っていきます。英語が大好きになります。ジャズチャンツで育てた生徒たちが各種英語試験での実績をあげたり、海外進学で人生の選択肢を広げたり、社会に出て英語で活躍をしてくれている姿を見ていると、私のジャズチャンツへの熱い思いはまだまだ止まりません。

内藤直美

文:内藤直美
幼児期よりオーストラリア、南米、ドイツなど、海外6カ国で20年以上を過ごす。それぞれの場所で現地の言語習得を体験し、本当に通じる外国語を習得するには文法以外の音の特徴、会話文の抑揚をつかむ大切さを学ぶ。バイリンガル幼児の言語心理学を専門とし、シンガポール、イギリス、インターナショナルスクールなどでELS tutorとして活動。現在、世田谷区で幼児から大学生へ英語指導。児童英語教師のためのジャズチャンツワークショップ、英検指導講座などを主宰。

編集:増尾美恵子