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アナウンサー時代の修行で学んだ「朗読」の本質とは?青谷優子の私はこれで英語がうまくなった!

アナウンサー時代の修行で学んだ「朗読」の本質とは?青谷優子の私はこれで英語がうまくなった!

本当に英語を上達させたいなら、これからは「朗読」。バイリンガルアナウンサーで英語朗読家の青谷優子さんに、今回はアナウンサー時代の「修行」についてお話しいただきます。

「朗読」と「読み聞かせ」の違い

「朗読」と聞くと多くの方は「読み聞かせ」を想像すると思いますが、私の中でのRODOKU(英語朗読)は物語の読み聞かせにとどまりません。ニュースリーディング、ナレーション、スピーチなど「相手に伝えたいストーリー」すべてを含みます。

なぜなら「原稿に横たわった文字を自分の声で立ち上がらせて相手の心に届ける」のが朗読だからです。

朗読をしていると、表現力が豊かになるため、プレゼンテーショントレーニングにも効果的です。今でこそ朗読と並行してプレゼンテーション講座なども担当していますが、もちろん最初からできたわけはありません。全ては英語アナウンサー時代の「修行」のおかげです。

アナウンサー修行時代のトレーニング

NHKに入局し、「英語アナウンサー」になったはいいものの、当初はニュース原稿をまともに読むことすらできませんでした。知らない英単語だらけだったのです。

ユーゴスラビア紛争、株式市場の動向、ノーベル物理学賞など専門用語満載のこれらのニュースを読んでも、「伝える」にはほど遠く、文字面をなぞるのが精一杯。修行の始まりです。

当時は毎日、次のようなトレーニングを行っていました。

  • 先輩が実際に読んだニュース英語原稿を声に出して読む
  • 同じ内容の日本語原稿も読む
  • 専門用語を抜き出して日英のリストを作る
  • わからない内容は先輩に聞く、資料調べる
  • 原稿を何度も練習した後、先輩アナウンサーに聞いてもらう
  • フィードバックをもらって修正→OKをもらうまで繰り返す

この訓練の次に行ったのが「シャドウイング(shadowing)」です。これは先輩の後について現場の仕事を間近で学ぶOJT*1です。

15分のラジオニュースの本番30分前になると、「下読み席」の先輩の横に座り、先輩が読む原稿のコピーをもらって原稿の「下読み」(=本番前の原稿チェック)を行います。

それぞれの原稿の読み尺(=原稿を読むのにかかる時間)をストップウォッチで測り、合計尺を計算して、担当ディレクターに伝え、15分になるように原稿の量を調整してもらいます。

このほか、地名や名前などの発音調べもあります。放送中はスタジオ内で先輩の向かいに座り、どのように時間調整をしているか、読み終わった原稿はどこに置くか、咳をしたり水を飲んだりするときはどうすればいいかなどを直接見て、聞いて覚えていきます。

伝えるために大切なこと

スタジオワークと並行して行ったのが「理解して読む」訓練です。前回お話しした「Comprehension(理解)」のことです。

先輩のアドバイスは「ニュースのキーワードを探せ。新しい情報を探せ。何が前と違うのか、そこを意識して読め」というものでした。

この訓練では、原稿に印を付ける「marking」をしていきます。読みづらい地名や人名は発音記号をふる、大事な数字を丸で囲んで強調を忘れないようにする、明るいニュースには冒頭に笑顔マークを書いて明るい声を出すようにする……など、聞き手にわかりやすい読みが毎回確実にできるように印を付けていくのです。

さらに、15分ぴったりでニュースを終わらせなくてはいけませんから、タイムキープも大切な訓練です。

初めは焦って早く読んでしまって時間が余ったり、逆に丁寧に読み過ぎて時間が足りなくなったりするなど失敗の連続でした。しかしこうした「経験」「場数」は何ものにも代えがたく、成長の糧となり、やがて一人で15分のラジオニュース枠を担当できるようになりました。

その後のアナウンサー人生、そして朗読家としての今を支えてくれているのはこの初期の基礎づくり(正確に、毎回同じペースで、聞き取りやすく、内容を理解して読む)であることは間違いありません。

青谷優子の英語読書 Vol. 3

Born a Crime by Trevor Noah

Born a Crime by Trevor Noah

米国の政治風刺番組『The Daily Show』の司会者として人気のコメディアン、トレバー・ノアの自伝です。が、これがびっくりするような内容の自伝なのです。

舞台は1980年代後半、アパルトヘイト時代の南アフリカ。しかも彼は黒人と白人の間に生まれた“colored”です。 混血の子を産むのは「犯罪」(Born a crimeのタイトルはここから来ています)とされた時代に、彼はたくましく、明るく育っていきます。

貧困、継父の暴力、アパルトヘイトとの闘い……これら壮絶な体験も笑い飛ばしてしまう力強さにあふれ、常に前向きなトレバー少年の姿は、読む側に元気を与えてくれます。「猛烈母ちゃん」の存在や、著者の読書好きな一面などのエピソードがユーモアいっぱいに描かれており、一気に読み終えました。

ニュースでは知ることのできなかった当時の南アフリカの姿を勢いよく語りかけてくれる、おすすめの一冊です。 

Born a Crime: Stories from a South African Childhood

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  • 著者: Trevor Noah
  • 出版社: Spiegel & Grau
  • 発売日: 2017/09/19
  • メディア: ペーパーバック
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  • 著者: 青谷優子
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Yuko Aotani

文:青谷優子(あおたに ゆうこ)

幼少期をロンドンで過ごす。上智大学を卒業後、NHKに入局。リポーターやキャスターを担当した後、NHK国際放送局(NHKワールド)のニュース番組『NHK NEWSLINE』のメインアンカーとして活躍。並行して英語文芸の朗読番組『Listening Library』の演出・制作・出演を務め、日本文学を海外に紹介した。2015年2月に独立。朗読家、バイリンガルアナウンサー、英語コミュニケーション講師として活躍中。

写真:山本高裕

*1:On-the-job training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の略称。実際の職務現場で、業務を通して行う教育訓練のこと。