「○○するだけ」で英語はできるようになりません。英語スケッチング学習法のススメ

一つのことを繰り返しているだけでは、英語はなかなか上達しません。赤ちゃんが母語を習得するように全神経を使うトレーニング法を、「1000時間ヒアリングマラソン」の主任コーチ松岡昇さんにお教えいただきます。

英語習得には多様な練習が欠かせない

この連載で幾つかの学習法を紹介してきました。

よく英語学習の本や学習法に「○○だけで」とうたうものがありますが、それはその特徴を強調するためにそのような言い方をしているのに過ぎないと私は解釈しています。

言葉という高度に複雑なコード(音声・文字記号)に、「○○だけ」(特定の1つの方法だけ)では対応できません。母語では、赤ちゃんのときから全神経を使って、 さまざまな角度から膨大な時間を費やして 、その第一言語を身に付けます。

第二言語についても習得のプロセスは同じです。ましてや日本語とは言語的に距離の遠い英語を身に付けることは、一筋縄ではいきません。ディクテーションの練習が必要なのと同じだけ、シャドーイングの練習も必要ですし、音読や英訳の練習も必要なのです。

英語スケッチングのススメ

今年の春から「1000時間ヒアリングマラソン」に「英語スケッチング」という新しいコーナーが登場しました。 前回(連載の第5回目)紹介した「ディクテーション」 とは逆に、 細部にはこだわらず、大きく全体を捉える練習 です。

実は、この練習は 「松岡式12ステップ英語独習法」(この連載の第4回)のSTEP 1「スケッチング」拡大 した学習法です。練習の方法を紹介しますので、みなさんの学習法のひとつに加えてください。

英語スケッチングの学習法

「1000時間ヒアリングマラソン」の「英語スケッチング」は次のような5段階のステップで進めます。独習のヒントにしてください。次のような英語の会話を例に説明しましょう。

Emily: Richard, could you do me a favor ? I’m going to Hawaii on vacation for a week from Saturday, and I need someone to feed my cat while I’m away.

Richard: I’m sorry, Emily. I’m not very good with animals. I was bitten by a dog when I was little. Since then , I’ve tried to keep myself away from any animal that might bite.

STEP 1 頭の中でスケッチング

音声を聞きながら頭の中でスケッチし(頭にストーリーの映像を浮かべ)、想像上の相手に、その内容を日本語(または英語)で話します。まずは正確さや情報量は気にせずに行います。

STEP 2 紙にスケッチング

音声を聞きながら、紙にスケッチ(メモ)します(音声は一時停止しても可)。文字でも記号でもOK! まずはWho(誰が)、What(何を)、Where(どこで)、When(いつ)を逃さずに。(「英語スケッチングの例」(下のイメージ)の黒字部分)。

STEP 3 表現チェック

会話に出てくる難しい語句や表現と、それらの意味を確認します。(「1000時間ヒアリングマラソン」の音声には、この部分で「英語→日本語」の音声が流れます。

一般の教材でスケッチングをやる場合は、このSTEPをスキップするか、教材に語注リストのようなものがあれば、それを見ることでSTEP 3に替えることができます。)

STEP 4 さらに深くスケッチング

もう一度音声を聞いてスケッチを追加し、話の内容をより明確にします(下のイメージ「英語スケッチングの例」の赤字部分。音声は一時停止しても可)。ここでは、How、Whyも逃さずに。

STEP 5 スケッチを基に話の内容を説明する

もう一度音声を聞いたら、スケッチをもとにして、想像上の相手に、話の内容を日本語(または英語)で説明します。その後、スクリプトで内容を確認します。

英語スケッチングの 

会話の訳

エミリー:リチャード、お願いを聞いてくれるかしら?休暇で土曜日から1週間、ハワイに行くんだけど、私がいない間、うちのネコにをやってほしいの。

リチャード:ごめん、エミリー。僕は動物があまり得意じゃないんだ。小さいころにイヌに噛まれたことがあってね。それから、噛みつきそうな動物にはなるべく近付かないようにしているんだよ。

「松岡式12ステップ独習法」と「1000時間ヒアリングマラソン」

私が英語を独習していたころには、まだ「1000時間ヒアリングマラソン」は世に出ていませんでした。そのころ、私は創刊されて間もない月刊ENGLISH JOURNAL』(アルク)を使い、あの手この手で勉強していました。

のちにその経験を、私と同じような独習者のためにまとめたのが「 松岡式12ステップ英語独習法 」です。「スケッチング」「ディクテーション」「ボキャビル」「リピーティング、シャドーイング」「リード・アンド・ルックアップ」「リード・アンド・ルックアップ・アンド・コピー」「口頭英訳」そして「口頭要約」がこの独習法の中に組み込まれています。

実は、こうした多様な練習方法は「1000時間ヒアリングマラソン」にも出てきます。内容や難易度に応じてコーナー毎に適した練習方法が提案されています。

また「1000時間ヒアリングマラソン」は、練習の多様性に加え、英語コンテンツの内容やトピックもバラエティーに富んでいます。 ご自分で教材探しなどに手を煩わせたくない方には特におススメ です。

 

後記:英語は言語学的に日本語から「遠い」言語です。構造も発音も大いに異なります。英語をマスターする「航海」は壮大です。ただ、「GOTCHA!」をお読みの大半の皆さんは、その大海原は既に渡り終え、英語圏にいます。今の自分の英語に自信持ち、使いながら 同時に 磨きをかけていく、このように考えて一緒に精進しましょう。(マッツ)

1000時間ヒアリングマラソン

1982年に開講して以来、アルク人気 No .1の通信講座。生きた英語を聞き取り、多彩なトレーニングによって「本物の英語力」を身に付ける教材です。ネイティブスピーカーが使うリアルな会話やニュース英語、映画のセリフなどさまざまなジャンルの素材がたくさん収録されているだけでなく、トレーニングで力が付くようしっかり導き、細やかなカリキュラムに沿って学習を進めます。

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松岡 昇(まつおかのぼる)

青山学院大学大学院国際政治経済研究科修了。専門は、国際コミュニケーション、社会言語学。現在、獨協大学、立教大学及び大手企業を中心に講義やセミナーを務める超人気講師。 NPOグローバルヒューマンイノベーション協会理事。アルクの通信講座「1000時間ヒアリングマラソン」の主任コーチ。著書も多数ある。

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