TOEICスコアUPトレーナーのヒロ前田さんが、生徒たちとTOEICの対策法について何やらディスカッションをしているようです。単語集を使って勉強するのは間違い?間違いじゃない?ふむふむ、興味深い話です。せっかくなので、耳を傾けてみましょうか。集音器のスイッチ、オン!
今回の登場人物(色分け)
=ヒロ:TOEICスコアUPトレーナーとして、学生から社会人までのTOEICスコアアップを請け負うカリスマトレーナー。47都道府県すべてを行脚(あんぎゃ)して公開テストを受験したという、TOEIC版伊能忠敬のような人。
=マイ:賛成派
=ケン:反対派
単語集で語彙を増やしてから問題集を解くべきか。
(ヒロ)どうも。前田です。つい先日、某企業でTOEIC対策セミナーを担当しました。終了後、こんな質問を受けました。
TOEICには知らない単語がたくさん出ます。やはり、先に単語を覚えてから問題集をやっていった方がいいですか。
この「単語を覚えて」は、「単語集を使って単語を覚えた後で」を意味します。果たして、「先に単語、問題集は後」というアプローチは効果的なのでしょうか。
自分が知らない単語を効率的に覚えられる(賛成派)
(賛成派のマイ)当然よね。どんな英文も単語の集合なんだから、単語をたくさん覚えれば内容を理解できるようになる。問題集をやるのは悪くはないけど、とにかく単語を覚えることからスタートすればいいのよ。
(反対派のケン)いや。それは語彙力が重要だという説明にはなるけど、単語集を使うべきかどうかには関係ないよね。
関係あるわ。単語集を使えば自分が知らない単語だけを覚えられる。でも、問題集を30分やっても知らない単語は5個だけかもしれない。その点、単語集だったら30分あれば最低30個は知らない単語を見つけられるから、効率がいいわ。
でも、その30個の単語は互いに関連しない単語だろ?
関連?そんなのどうでもいいのよ。自分が知らない単語を覚えることが目的なんだから。パート別に単語をまとめた本を使ってもでしょうけど。
ということは、patio(中庭)とか vehicle(乗り物)を覚え、さらに mower(芝刈り機)も覚えるということだよね。そんなやり方で、30分で30個も覚えられるか?
30分で30個を覚えられなくてもいいのよ。何回か繰り返せば覚えられるから。
そうかな?よく「単語を覚えられません」って言う人に会うよね。ということは、単語と訳だけを覚えようとしても難しいってことじゃないか?
違うわ。そういう不満を言う人は「繰り返し」が足りないのよ。30個を1回だけ見ても覚えられないだろうけど、3回、5回と繰り返せば記憶に残っていく。
テスト対策教材として使える単語集はある?
(ヒロ)賛成派のマイ(
)が言う通り、単語を覚える上で「繰り返し」は重要です。知らない単語を素早く見つけることができるのは、確かに単語集の利点かもしれません。
ただし、単語集を選ぶ時点で、すごく重要なチェックポイントがあります。それは、TOEICにめちゃめちゃ詳しい人が収録語を選定していることです。
TOEICは出題範囲が狭いテストなので、頻出語も決まっています。そのため、テストに詳しい人が体験をベースに収録語を決めたのであれば信用できますが、そうでない人が選んだ単語が収録されている場合は「テスト対策教材」としては信用できません。
実際、決して頻出とは言えない単語が大量に収録された単語集も存在します。英語教材としては有用ですが、テスト対策本としての価値は低いと言わざるを得ません。
悩んだりミスしたりしながら、単語は学んでいくもの(反対派)
(反対派のケン)何度も繰り返すのは良いと思う。ただ、「単語と意味」のセットは覚えにくいよね。初対面の30人の顔と名前を覚えるのと同じで、簡単じゃない。
(賛成派のマイ)簡単とは言っていないわ。努力して覚えるのよ。
単語の意味を「覚える」ことより「思い出せる」ことの方が大切だろ?
当たり前でしょ。
先週、大阪のパーティーで会った人の名前、覚えてる?
え?誰?
コーヒーにマヨネーズを入れてた人。
あぁ、あのオジサン。「神岡竜次郎」って人でしょ。
なんで思い出せたの?
マヨネーズ入りのコーヒーを鼻から飲んでたから、忘れようがないわよ。
つまり、印象的だったから思い出せたんだよね。復習しなくても、一発で顔と名前を・・・
単語も同じだって言いたいの?
そう。印象的な出あいがあれば、人の名前も単語も覚えやすくなるし、記憶に定着しやすい。
だから問題集を先にやるべきだって言いたいの?
その通り。とにかく練習問題をやって、悩んだりミスしたりすりゃいい。そうすれば、「この単語の意味さえ知っていれば解けるのに」と悔しい思いをする。そういう体験をしながら単語を学んでいけば、記憶に定着しやすい。
まぁ、それはそれで否定しないけど。自分に合うやり方を決めて続ける人が勝つのよ。
「自分にとってのベスト」を継続しよう(結論)
(ヒロ)問題集で出あう単語は、単語集で出あうものより記憶に残りやすいと思います。反対派のケン(
)が言うように、「意味を知りたい」と強く思いながら学んでいるからでしょう。そのため、ややもすると、設問を解く上で必要のない単語を軽視してしまうかもしれません。
語彙力を大きく伸ばしたいなら、設問に関係ない箇所にも目を向けるといいでしょう。同様に、不正解の選択肢に仕込まれた未知の単語にも注意を払いましょう。
個人的な体験として、ボクは高校時代に単語集を使って単語の意味を覚えようとしたことがあります。でも、確か10分くらいで止めました。楽しくなかったからです。
一方、さまざまな文章――入試問題だけでなく、小説や映画のスクリプトなど――を読むことで、語彙力を伸ばすことはできました。ですから、「単語を覚えるために単語を覚える」ことに賛成的ではありません。
しかし、それはあくまでもボクが勝手に取っている立場であり、単語集を使って単語をたくさん覚えられる人も当然います。大事なのは、「自分にとってのベストな方法」を見つけること、そして、それを継続することです。
「TOEIC リスニング撃破 精選模試&セミナー」開催
(T’z英語ラウンジよりお知らせ)
大人のための勉強スペース「T’z英語ラウンジ」では、TOEICのリスニングセクション対策に特化したセミナーを開催します。エッセンスイングリッシュスクールの講師として、そして、TOEIC対策本の著者として活躍中の野村知也氏によるセミナーです。TOEICスコアはもちろん、英語のリスニング力そのものを大きく伸ばすためのトレーニングも行われます。
詳細は、T’z英語ラウンジのウェブサイト、イベント情報をご覧ください。
ヒロ前田(ひろ まえだ)
TOEIC受験力UPトレーナー。神戸大学経営学部卒。大人のための勉強スペース「T’z英語ラウンジ」経営。2003年5月に講師として全国の企業・大学で指導を開始。2005年にはTOEICを教える指導者を養成する講座をスタートし、トレーナーを務めている。2008年グランドストリーム株式会社を設立。TOEICの受験回数は100回を超え、47都道府県で公開テストを受験する「全国制覇」を2017年5月に達成。取得スコアは15点から990点まで幅広い。著書に『TOEIC®テスト 究極の模試600問』(アルク)、『TOEIC®テスト900点。それでも英語が話せない人、話せる人』(KADOKAWA)、共著に『TOEIC®テスト 新形式問題やり込みドリル』(アルク)等がある。
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