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「働き方改革」で残業代カット!? そんなの困ります(涙)

働き方改革で残業代カット

今、注目の「働き方改革」。残業が無くなる、雇用形態による格差が無くなるなど、いいことがたくさんありそうですが、急激な変化に戸惑っている人も多いのでは?異文化コミュニケーションと人事管理を専門とする経営コンサルタント、ロッシェル・カップさんに、よくある悩みを相談してみました。

急に残業するなと言われても……

残業代が減るのは困るビジネスパーソン30代の会社員です。

働き方改革のため、私が勤務する会社でも残業が禁止になりそうです。でも、急に残業禁止になっても仕事が減るわけではないし、残業手当が無くなり収入が減るのも困ります。残業禁止は社員のためにならないと思います。どうしたらいいのでしょうか。

カップさんからの回答

生産性を上げるには?

残念ながら、現状そういった状況に直面している人々は少なくありません。経営コンサルタントとして、そのような声をたくさん耳にしています。この1つのご質問のなかには、実は複数の問題が潜んでいます。それを1つずつ見ていきましょう。

残業禁止が増えているわけは?

まずは、なぜ多くの会社が最近残業をなくしていこうとしているのでしょうか?

最近、日本の労働生産性が多くの先進国と比べてとても低いというのが政府とビジネス界で注目されています。少子化の結果日本の労働力が減っていますので、それを改善しなければ日本経済の未来はありません。その対策として、「働き方改革」のコンセプトが生まれました。

労働生産性は「働いた時間当たりのアウトプット」ですので、労働時間を少なくすると、労働生産性も必然的に上がります。日本人は残業が多いので、残業をなくすことが働き方改革への第一歩として考えられました。

同時に、過大な残業を要求するブラック企業が話題になったり、電通の若手社員の自殺問題がマスコミに大きく取り上げられたりしたので、日本人の長時間労働の問題に対する意識が高まってきたことも要因になっています。残業時間を制限することも、まずは政府によって検討されました。

また、企業にとって残業を禁止することは、実は複数の目的を同時に達成することができまさに一石二鳥なのです。

というのは、政府の働き方改革に協力しているという姿勢を示し、かつブラック企業ではないということを証明する機会になるからです。また従業員をしっかり気にかけていますよということもアピールできます。その上、残業代を払わなくてもいいので、人件費の節約にもつながります。

残業禁止でも仕事は減らない

問題はご指摘の通り、多くの場合、残業禁止になっても仕事が減らないということです。その理由は、残業を禁止するだけで、仕事の内容が変わっていないからです。

結果として、モグラ叩きゲームのようになって、夜の残業で終わらない仕事が翌日持ち越しとなったり、どこか別の時間で終わらせなければいけなかったりという負のサイクルを生み出してしまいます。

例えば、朝早く出社したり、昼食のときにちゃんと休まず机で食べながら仕事をしたり、仕事を家に持ち帰ったり、ということになります。あるいは、少な過ぎる時間で多過ぎる仕事量をこなそうとすることによって、ストレスを感じたり、仕事の品質が下がったりしてしまいます。

残業禁止だけで物事がよくなるという期待は、労働に関する誤った考え方に基づいていると思います。人間の働き方と機械の動き方は根本的に違います。人間が費やす1時間と機械が費やす1時間で生み出されるアウトプット量は決して同じではありません。人間は、機械のように仕事のペースをスピードアップできません。

知的労働であるホワイトカラーの仕事は特にそうです。

必要になるのは、まさに仕事の内容自体を見直すことです。具体的には、生産性の悪い仕事上の慣行をなくしたり、効率性を促進するソフトウェアや仕事の仕組みを導入したりする必要があります。つまり仕事の進め方を完全に考え直すべきだと言えます。

自分と自分のチームの生産性を上げよう

残念ながら、多くの企業は今のところそこまでの考えに至っていないようです。

そのため、私がここで推薦したいのは、自分で自分及び自分の部署の生産性を上げる方法を考えることです。日本企業の仕事の仕方を見ると、従業員の時間を無駄使いしているところがたくさんあります。

報告中心の会議、定例会議、誰も読まない週報や日報、承認を得るためのスタンプラリーのような活動、小さなことでも上層部の承認を得る必要性、たくさんの書類やプロセスやルール、根回し、調整、報連相など、リストアップしようとすると本当に山ほどあります。

こういった働き方は「当然」だと思われていますが、実はとても非効率的です。そういった付加価値の低い、時間を沢山費やしてしまう活動を減らすことができれば、限られた時間でもっと多くの仕事ができます。

仕事の流れにおいて、どこを変えれば効率を高められるかを考えましょう。それを部署の人と一緒になって皆で検討すればいいでしょう。

そのように、自分の置かれている組織の仕事の仕方を変えるように努力するのはとても重要だと思います。もちろん、それは簡単なことではないですが、並行して自分で自分自身の仕事を考え、どのように生産性を上げることができるか検討することも強くすすめます。

Googleで「自分の生産性を上げる」と検索すれば、それをテーマにした本や記事がたくさん出てきますので、アイデアの資源は実はすでに豊富に存在するのです。

転職、副業も視野に入れる

最後に、残業手当がなくなることによる収入の低下を懸念されているようですが、それは確かにその通りと言えます。

残念ながら、日本企業の従業員に対する給料レベルは全く見合っていません。基本給が低いので、残業して残業手当を手にすることで、収入を増加させようとするのは理解できます。

しかし、結果としてそれがとてもよくないインセンティブを作り上げ、そのために多くの日本企業の社員は時間管理スキルを身に付けることができず、毎日ダラダラ仕事をする習慣が染みついてしまっているのです。

そのため、残業がなくなってその歪みがなくなるのはうれしいことである一方、このせいで経済的困難に直面してしまう人には同情できます。

もし自分の収入が低すぎると思われたら、転職することを考えてみてはどうでしょうか?よりよい条件の仕事を提示する会社もあるかも知れません。あるいは、もし今の会社で働き続けたいと思われるのなら、空いている夕方の時間帯に副業をしてみてはいかがでしょうか?

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ロッシェル・カップ

執筆:ロッシェル・カップ
ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社社長。
異文化コミュニケーションと人事管理を専門とする経営コンサルタントとして、日本の多国籍企業の海外進出とグローバル人材育成を支援している。イェール大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営学院卒業。日本語が堪能で、『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』(アルク)、『英語の品格』(集英社) をはじめ、著書は多数。朝日新聞等にコラムも連載している。

編集:GOTCHA!編集部