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茂木健一郎さんが語る「英語テスト廃止論」

茂木健一郎の言葉とコミュニケーション 第6回

テストと同様に100点の英語を使えないと恥ずかしい。人前でそう感じてしまった経験を持つ方は少なくないのでは。実はそんなことはまったくないはずなのですが、なぜでしょう。英語学習での経験が、少なからずその原因となっていることは間違いないようです。今回、茂木健一郎さんは、そんな英語教育のあり方に疑問を投げかけます。

テスト重視の英語学習は見直すべきだ

テスト重視の英語学習は見直すべきだ

今回は、極論を吐こうと思う。

日本人が英語をできるようになるためには、英語のテストを廃止せよ!

これは、あまりにも極端な意見のようだけれども、外、ほんとうのことだと私は考えるのである。

少なくとも、テストばかり重視する英語の学習、テストの点数を目標とする英語教育は、見直す必要がある。

学生時代、私は、英語のテストは、実は得意だった。

受験英語という意味ではトップクラスだったし、学生当時受けることができた英語のテストはすべて受けた。

「英検一級」や、「国連英検特A級」というのも合格した。

TOEFLも受けた。とても良い点数だった。

(当時は、TOEICはなかった。私はTOEICは受けたことがないし、今後も受ける予定はない。)

今振り返って、これらのテストが、英語の実力をつける、という意味では、ちょっとピントがずれていたものだったと感じる。

もちろん、邪魔にはならない。しかし、大した身にもならなかったと思う。

感覚入力と運動出力の「ループ」を作る

人間は、本当に面白いと思ったことは、テストなんかなくても勝手に勉強する。良いが、アニメやゲームなどのカルチャーだ。

アニメやゲームについて、知識やスキルのテストをしている学校というのは、聞いたことがない。

しかし、中学生や高校生の中には、アニメの声優さんなどについて、驚くべき知識を持っている子がいる。ゲームをやりこんで、卓越したスキルを持っている人たちがいる。

別に、テストがあるからではない。ましてや偏差値などない。ただ、好きでアニメを見たり、ゲームをプレイしているうちに、そのようになっていったのである。

英語も同じこと。

本来は、テストなどと関係なく、夢中になって感覚入力と運動出力の「ループ」を繰り返す、英語の「夢中のループ」が作られるべきなのだと思う。

「夢中のループ」があればテストは関係ない

たとえば、英語でコミュニケーションをやりとりする「夢中のループ」をつくる。

自分がこう言ったら、相手はこう返す。そんなやりとりの面白さに目覚めたら、別にコミュニケーションのテストがなくても、勝手にやる。

あるいは、テクストのやりとりを通してさまざまな意見を交換する面白さに目覚める。

今や、ツイッターやフェイスブックなどの場で、世界中の人と簡単にやりとりができる。時事問題でも、好きな音楽やマンガのことでも、自分の考えと相手の考え方を響き合わせる面白さは、「夢中のループ」へと私たちを誘う。

英語で劇を演じたり、朗読したり、あるいは自作の詩をみんなに聞いてもらったり。そのような英語に関する「夢中のループ」をつくることが、英語習得には一番良い。

私自身もそうだった。英語のテストの点数なんかを気にしているよりも、自分の好きな英語の本を夢中になって読んだり、ネイティヴ・スピーカーたちとパーティーなどで雑談したり、自分が書いた英語のブログへの反応に喜んだり、そんな「夢中のループ」こそが私の英語力を本当にのばしてくれた。

そこには、テストは関係ないし、そもそも要らない。

このように書くと、生真面目な日本人は、テストも役に立つでしょ、英語の知識、文法を身につけるためには、テスト勉強も有効でしょ、と反論してくる。

テストを捨てよ、街に出よ!

確かに、テストは役に立つ(側面もある)。しかし、同時に、テストは、あるいはテストを重視する意識は、日本人の英語の伸びしろを大いに縮めていることも確かだ。

何よりも、「正しい英語を使わなければならないというプレッシャーで、精神が萎縮してしまうことのデメリットが大きい。

ほんとうに大切なことは、点数化などできない、テストなどできないという簡単な真理を忘れてしまっている。

大切なのは、伝えること。自分の意見を持つこと。それを相手と響き合わせること。朗読で言えば、自分の声を見つけること。演劇で言えば、自分らしさを表現すること。そのような実践的な場での英語の使い方は、根本的に点数化など不可能なことなのだ。

テストを捨てよ、街に出よ! 

それが、英語の上達の一番の王道だ。

もちろんTOEICなどのテストを受けたければ受ければいい。しかし、そこに英語の本質などない。そのことがわかっている人しか、英語を自分のものにすることはできない。

英語の本質があるところ

SEKAI NO OWARI*1のSaoriさんとお話した時、とても素敵なことを聞いた。SEKAI NO OWARIは、英語でも楽曲を書いて発しているけれども、Saoriさんが実感したことがあったという。

日本語の歌詞だと、意味から入って言葉を選択できるのですが、英語だと、韻を踏む、ということが基本なので、そのことで言葉の選択に制約ができる。意味だけからは選べない。そのあたりが、曲つくりという点において、むずかしいです」

Saoriさんは、このように言われた。

私は、ああ、そこに本質があるのだなあ、と深く感じた。

これこそが、本当の英語の学びである。もし、日本の学校教育が、テストなんかに固執していないで、中高から自作の英語の詩を朗読する授業をしていたら、Saoriさんの素敵な気付きに、多くの人が到達できただろう。

もちろん、自作の詩に、そんなに簡単に点数なんかつけられない。でも、そこにこそ、ほんとうの英語がある。何よりも、その人らしさがれる。

英語で、自作の詩を朗読するような経験を積み上げた日本人がもっとたくさんいれば、英語表現力も深まり、広がっていただろう。

本当にもったいない。英語の本質は、テストなんかにはない。

やっぱり、日本人が英語ができるようになるためには、英語のテストを廃止すべきなのだ。

日本人が英語ができるようになるためには、英語のテストを廃止すべきなのだ。

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ けんいちろう)

1962年東京生まれ。脳科学者、作家。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。東京大学大学院物理学専攻課程を修了、理学博士。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。

写真:山本高裕(GOTCHA!編集部)

*1:2011年にメジャーデビューした日本の4人組音楽バンド。2012年にはメジャー1枚目のアルバムで第54回レコード大賞で優秀アルバム賞を受賞している。