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出世は最大のピンチ!? 名門ビジネス・スクールのキャリア論

Adam Kingl

アルクが主催する「グローバル化への課題解決セミナー」の講師として来日した、ビジネス・スクールの名門ロンドン・ビジネス・スクール(LBS)のエグゼクティブ・ディレクター、アダム・キングル氏へのインタビュー。日本からの参加者も増えているという同校について、その特徴や教育方針についてお伺いしました。

アダム・キングル(Adam Kingl) 
ロンドン・ビジネス・スクール(LBS)、エグゼクティブ・ディレクター(Executive Director of Thought Leadership, Executive Education)。アメリカ出身。イェール大学で学士号、UCLAで修士号取得後ヨーロッパに渡り、ロンドン・ビジネス・スクールでMBAを取得。2009年より母校LBSでマネジメント教育プログラムの上級責任者に就任し、カリキュラムのデザインなどを手がけている。来日は10回目というなかなかの日本通。

日本からの参加者も多い、ビジネス・スクールの名門

Adam Kingl

各国のプロが集う、国連会議のような場

-- ビジネス・スクールというと真っ先にアメリカが浮かびますが、ロンドン・ビジネス・スクールの特徴や強みは何ですか?

キングル:ロンドン・ビジネス・スクールのマネジメント教育プログラムは1966年に設立された、いわばビジネス・スクールの老舗です。

現在では各企業のためにカスタマイズする研修と、個人でも入学可能なプログラムとを両方提供しています。学生、教授陣共に国際色豊かで、まるで国連の会議に出席しているかのような環境です。

多くの場合、半分以上の学生がアメリカ人というアメリカのビジネス・スクールとはそこが大きく違います。業種に関しては、金融、エネルギー、小売り、ホスピタリティから公務員、軍関係やNGOなど、あらゆる分野のプロフェッショナルが集います。

ビジネス・スクールは特定の業種に重点を置いているところが多いので、間口の広さもLBSの特徴ですね。年齢(20代〜70代)、そして社内での立場もさまざまな受講生が集まりますので、その多様性が大きな魅力となっています。

日本企業からの需要は、リーマンショック以降特に高まりを見せていて、年に10名ほどの社員を送り込んでくる企業もありますよ。イギリスのEU離脱が決まった後も、受講生は増え続けています。

短期集中型のプログラムにも強み

-- 国、業種、年齢やポジション・・多様な学生の多様なニーズに応えるには、多彩なプログラムが必要そうです。

キングル:はい。4週間かけてじっくり取り組むシニア・エグゼクティブ・プログラムから、4〜5日間で完結するリーダーシップやストラテジーに特化したプログラムなどがあり、それらを自由に組み合わせて受講することも可能です。

M&Aや人事、マーケティング、財務などの専門分野を深める特別プログラムもありますし、初めて部下を持つ20〜30代の若手リーダーのための講座もあります。短期講座を柔軟に利用できることは企業にとって大きなメリットです。

コスト面ももちろんですが、仕事に空白期間をさほど作らずにスキルアップできますので。社員に2年間かけてMBAを取らせることを考えれば、短期集中でニーズに合った内容を、高濃度で吸収させることができますからね。

企業側が適材適所のプログラム選びを、注意深く行うことが鍵となってくるわけです。

世界は変わっている。「成長」はあなたの責任 

スタートアップ企業の脅威

時代遅れになりつつある、日本企業のマネジメント手法

-- 日本企業からの学生も増えているようですが、背景には何があるのでしょうか?

キングル:理由はいくつか挙げられますが、まずは世界が「変わる」スピードがますます速くなってきているということ。さまざまな文脈の中でその変化に素早く対応する能力が、管理職レベルに限らず、すべての社員に求められてきているということです。組織全体の体質を、後追いではなく、リードできる体質に改善してくことが急務と感じている企業が増えています。それは一握りの優秀な管理職に頼っていたのでは達成できない目標です。

経済史上初めてのことだと思いますが、大企業がスタートアップ企業を本気で脅威と感じ始めているという現実があります。ビジネスの状況によっては小回りの効くスタートアップ企業のほうが大企業よりも有利な立場に立つこともありますから。その意味において、旧態依然とした企業体質が自分たちの足を引っ張っていると、大企業が気付き始めたんです。

日本企業のマネジメント手法を見てみると、自分が新人だった頃の管理職のやり方を今も実践している、というパターンがけっこう多いのです。その手法は代々受け継がれていて、さかのぼれば創業時代にき着くということもまれではありません。創業社長が現代に蘇ってきたら、まだ助言を求めたいという管理職がいる。1800年代の人に助言を求めたいと思うマネージャーが、現代の会社をリードできるでしょうか?

最新の研究成果を反映し、プログラムをアップデート

-- そんな中でこそLBSでの学びが生きてくるのですね?

キングル:はい。なぜかといえば、リーダーシップというものは時代に応じて変革されていくべきものだからです。当校では、最新の研究に基づき、リーダーシップ・モデルを常にアップデートしています。

ビジネス・スクールや大学という機関を利用するメリットはそこにあります。最新のデータ、情報を科学的に分析しますので、単なる流やトレンドではありません。ベストセラーの本を読んだり、コンサルタントに相談したりするより、ずっと確かな情報を手にすることができます。

少数派ではありますが、スタートアップ −− たとえばGoogleなどの新しい企業からも入学者があります。多様な企業人が同じ釜の飯を食うことになるわけですが、そこではお互いが本当にオープンに自分の仕事のことを語り始めるんです。企業の規模や歴史を問わず、学生という立場でそれぞれの強みや弱点を話し合いますから、そこで手に入るものの価値はおわかりいただけるでしょう。

フィールドワークも充実していますよ。ロンドンのスタートアップ企業を実際に訪ね、彼らの考え方や手法に生で触れる機会です。そこでカルチャーショックを受ける大企業からの受講生も少なくありません。新卒入社以降その会社一筋という社員には、他社の仕事環境を目の当たりにするチャンスはめったにありませんからね。

「役職が人を育てる」は幻想。成長は自分の責任

-- 個人のキャリアアップにも効果が期待できそうですね。

キングル:もちろんです。ビジネスパーソンにとっての最大の危機は、出世の辞令を受け取った時にやってきます。当然のことですが、今の役職と新しい役職との間には必ず職務のギャップがあるものです。

そのギャップが「自然に埋まるだろう」など考えるのは、あまりに楽観的すぎます。より大きな責任を任された時、必要となる能力を見抜き、それを満たすに足りる能力を身につけるのは、他ならぬ自分の責任ですからね。

当校の理念は「世界のビジネス手法に深遠なるインパクトを」なのですが、これは単なるスローガンではありません。LBSでは「良い講義だった」と言ってもらえる以上に、修了生ひとり一人のビジネスの手法がいかに進化したかということに興味を持っているんです。

国際的ネットワークという「資産」を手に入れる

-- 修了生たちの活躍の様子はどうでしょうか?

キングル:LBSで手に入れることができるのはデータやノウハウだけではありません。1週間のプログラムに一度参加しただけでも、世界的なビジネス・ネットワークの一員となり、生涯共に学び続けることができます

当校では修了生のためのネットワークを用意しており、ネットでの情報交換はもとより、同窓会の開催など積極的な活動を奨励しています。教授陣に連絡を取って質問することも、もちろんいつでも自由にできます。

日本国内の修了生のコミュニティはとても活発ですよ。業種横断的に情報交換しつつ、企業人としての自分の資産価値をどんどん上げ、それが会社への貢献にもつながるわけです。

研修は受講期間中だけではなく、キャリアを通じて継続させるものですからね。
修了生の活躍についてですが、まず言えるのは受講生のキャリアとプログラムのマッチングがうまくいった人ほど成果が上がっているということです。

当校では入学願書を受け取った時点で、マッチングという観点から応募者のプロフィールを精査します。そのうえで、別のプログラムをお勧めすることだってあります。とにかく入口でしっかり相談してもらうこと、これが大事なんです。

英語力だけでなく好奇心が大切。あとは勇気と度胸

アダム・キングル

-- 入学にはどの程度の英語力が必要でしょうか?授業の英語レベルの目安は?

キングル:一般的なビジネス英語を使えるレベルであれば大丈夫です。特に規準は設けていませんが、あまりにもギャップがあるようであればもう少し英語のレベルを上げてからの再受講をお勧めすることもあります。

一般的なMBAとは違い、書くことよりもスピーキングとリスニングの力が重要になります。試験や宿題はありませんから、その点は安心して下さい(笑)。ただ、忙しいですよ。盛りだくさんのプログラムですから。

もっとも、英語力云々よりも、大切なのはその人の知的好奇心でしょうね。知りたいと思う気持ちが原動力になるのです。そしてわからなかった時に質問する勇気と度胸。これがあれば成果は十分に期待できます。

質問は教授に対してだけ向けるのではなくて、クラスメイトにもですね。うちの会社ではこんな事例がありました、おたくではどうでしたか?というような、そんなやりとりが研修を豊かなものにしてくれています。

ただ、教授が講義で使う言葉には専門用語も含まれます。専門的なボキャブラリーをすべて知っている必要はありませんが、黙ってわからないままにしないこと、それだけ心がけてもらえれば得るものは大きいはずです。

ディスカッションは参加することに意義があるのですし、あなたの英語が流暢であろうとなかろうと、あなたの発言から仲間は学ぶものが必ずあるのです。自信を持って仲間たちのために発言して下さい。議論を盛り上げて下さい。LBSでお待ちしています!

【取材を終えて】

終始笑顔で質問にお答えくださったキングル氏。短期期間のプログラムもあるとのことで、ビジネス・スクールが少し身近に感じられました。

www.london.edu

また、同校で必要とされる英語のレベルについて、アルクの英語スピーキングテスト(TSST)のレベルでいうとどのくらいでしょうか?と質問し、試していただいたところ、「LEVEL6または7の実力があり、積極的な姿勢があれば、十分にグループディスカッションなどで発言できると思います。TSSTはとてもリアルな設定の中でのスピーキングを聞き取る練習になっているので、クラスメイトとの間で実際に交わされる会話と似ているのではないでしょうか」とのコメントをいただきました。

必要な英会話レベルはこちらのサンプル音声で確認できますので、興味のある方はぜひお試しください。

 → TSST (Telephone Standard Speaking Test): アルクの英語スピーキングテスト

また、キングル氏をお招きした今回のセミナーだけでなく、アルクでは各種の企業向け研修っています。こちらもぜひご覧ください。

 → 企業向け英語研修|アルク

【おまけ】

キングル氏おすすめの書籍。すべてロンドン・ビジネス・スクール(LBS)教授陣の著作です。

Why Should Anyone Be Led by You?: What It Takes To Be An Authentic Leader

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Why should anyone work here?: What It Takes to Create an Authentic Organization

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The Character of a Corporation

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The 100-Year Life: Living and Working in an Age of Longevity

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The Shift: The Future of Work is Already Here

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Glow: How You Can Radiate Energy, Innovation and Success (Financial Times Series)

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The Future of Management

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What Matters Now: How to Win in a World of Relentless Change, Ferocious Competition, and Unstoppable Innovation

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取材・文:佐々木南実  http://meme-com.jp/

エンタメ、ビジネス、キッズ英語から国際バカロレアプログラムなどの教育の研究まで、幅広く英語を実践する通訳、翻訳者。世田谷で英語教室、キッズ英語劇団を主宰。筑波大学大学院教育研究科在学中。