ジム・ジャームッシュ監督の映画『パターソン』の内容(あらすじ)を詳しくご紹介

Photo by MARY CYBULSKI (C)2016 Inkjet Inc. All Rights Reserved .

2017 年8月26 日(土)より、全国で公開されるジム・ジャームッシュ監督の映画『パターソン』。バスの運転手パターソンの7日間を描いたユーモアと優しさにあふれたこの映画のおすすめポイントを、映画ライター中島もえがイラストを交えてご紹介します。

『パターソン』ってどんなストーリー?

アメリカのニュージャージー州パターソン市に住み、バスの運転手をしている男性、パターソン。彼の1日は朝、隣に眠る妻のローラにキスをすることから始まります。

仕事場に向かい、バスを走らせる。帰宅し、愛犬マーヴィンの散歩に出掛ける。バーに立ち寄り、1杯だけ飲んで帰宅する。そしてローラの隣で眠りにつき、1日を終えます。詩人でもある彼は仕事の合間に詩を作り、ノートに書き留めます。

ドラマチックな事件は何も起きず、代わり映えがしない日々を過ごしているように思われますが、詩人の目を通して見る彼の生活は、毎日が新鮮で1日1日がかけがえのない時間なのです。

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そんなパターソンの、平凡だけれどもユーモアと優しさに溢れた7日間を、ユニークな人々との交流や思い掛けない出会いと共に描いた本作。日々の暮らしの中に隠れている大切なものに気付かせてくれます。

この映画のここが見どころ

事件が何も起こらない!

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この映画は、ある男性の1週間を静かに淡々と描いている、ちょっと変わった作品です。ドラマチックな出来事は起きません。思わせぶりなセリフが出てくるたびに 「これが伏線になってこの後何か起きるんでしょう?」などとドキドキするものの、本当に最後まで何も起きません

主人公のパターソン(アダム・ドライバー)が、妻や職場の仲間、バーのマスターや飲み友達と交わすクスッと笑えるユーモアに富んだ会話や、周囲で起きるちょっとした出来事――こうしたごくありふれたことがリアルに描かれているからこそ、日常の中から喜びや大切なものを見付けることの素晴らしさが強く伝わってきて、見た後にスッキリした気持ちになれます。

パターソンよりもローラが面白い!

そしてこの作品の一番の見どころは、何と言っても主人公パターソンと、パターソンの妻、ローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)が見せる日常生活でのやり取りです。特にローラからは目が離せません!

パターソンが物静かで、日々の喜びや楽しみをひっそりと噛みしめるタイプであるのに対し、ローラはマイペースで、やりたいことをやり、言いたいことを言い、喜怒哀楽を表に出すタイプです。

彼女はカーテンや壁をペインティングしてみたり、ドレスを作ってみたり、突然「前からギターを弾いてみたかったの!」と言って高価なギターを買ってみたり……と、 とにかく自由奔放 です。「今度は何をするのかな?」と見ているだけで(若干イラッとしたりもしますが)楽しい気分になります。

そしてそんなエキセントリックでキュートな妻のことを愛情深く穏やかに受け止めるパターソン。タイプは違うけれどもお互いを大切に思っている2人の何気ないやり取りは心が温まります。

ロン・パジェットの詩を堪能しよう

英語学習者の中には、英語の詩に興味がある人もいるかもしれませんね。 この映画には、ロン・パジェットという詩人が作った詩が散りばめられています 。難しい言葉を使わず、日常の何気ない一コマを切り取った美しい詩の数々は、それほど高い英語力がなくても、詩の知識がなくても十分楽しめます。

単調に思える生活の中のほんの些細なことを見逃さず、そこに何かを感じて詩にするパターソンのものの見方を、私も見習いたいです(詩は作らないけど)。

Alone and Not Alone
 

永瀬正敏も登場しますよ!

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淡々と進む物語の終盤には、永瀬正敏が、20世紀アメリカを代表する詩人、ウィリアム・カーロス・ウィリアムズゆかりの地を巡っている日本から来た詩人、という役どころで登場します。

「あれ、こんなところに日本人、しかも永瀬正敏がいる!」と、この映画の中では数 少ない 「おお!」となるシーン です。日本とアメリカの詩人同士の会話には、独特のリズムがあり、言葉遊びを楽しんでいるような雰囲気の面白いシーンです。

永瀬正敏が27年前出演したジム・ジャームッシュ監督の作品はこちら
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パターソン夫妻の愛犬・マーヴィンの活躍にも注目!

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パターソンとローラはマーヴィンという名のオスのイングリッシュ・ブルドッグを飼っています。いつもパターソンとローラの傍にじっと座って「生温かく」見守るマーヴィンの姿、ちょっと困ったようなキョトキョトした表情がとてもかわいらしくて癒されます。

ちなみに マーヴィンを演じているのは、ネリーというメスのイングリッシュ・ブルドッグです。なぜわざわざネリーにオスのマーヴィンの役をさせたのかは謎ですが、彼女は この作品中の演技で、第69回カンヌ国際映画祭のパルム・ドッグ賞(優秀な演技を披露した犬に与えられる賞)を受賞 しました。しかし、カンヌで作品がお披露目される数カ月前に亡くなっていて、『パターソン』が最後の出演作となったそうです。彼女の最後の名演技、お見逃しなく!

ジム・ジャームッシュ監督の作品をもっと知りたい方はこちら

この映画を語るときに使える英語フレーズ

The cast was “spot- on ”.

キャスティングは、まさにはまり役だったね。

『パターソン』を見た後、主役のアダム・ドライバーなど俳優について説明するときに使えますね。
We have some attachment to this character.私たちはこの登場人物に、何らかの愛着があるわ。
味のある登場人物について語るときに使える表現かも。

こちらは「1000時間ヒアリングマラソン」の映画コーナーからの 抜粋 です。映画を英語音声で聞き取れるようになるための練習や、ネイティブスピーカー同士の映画を見た感想なども「1000時間ヒアリングマラソン」に教材として収録されているので、興味があるかたはぜひ!

次はどんな映画を見ようかな~♪

映画情報

『パターソン』は2017年8月26日(土)から全で公開です!

paterson-movie.com
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1982年に開講して以来、アルク人気 No .1の通信講座。生きた英語を聞き取り、多彩なトレーニングによって「本物の英語力」を身につける教材です。ネイティブスピーカーが使うリアルな会話やニュース英語、映画のセリフなどさまざまなジャンルの素材がたくさん収録されているだけでなく、トレーニングで力が付くようしっかり導き、細やかなカリキュラムに沿って学習を進めます。

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文・イラスト:中島もえ
イラストレーター・編集者・ライター。面白い映画を探して試写会を渡り歩く。映画鑑賞のほか、動物園や水族館、美術館めぐりが趣味。野菜作りも好きで、東京・三鷹の菜園インストラクターの資格を 取得WebsiteInstagram

構成・編集:Natsue Tanaka(GOTCHA!エディター/ライター)

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