アルクが「地方創生」を考えるシンポジウム「グローバリズムとローカリズムの相克を超えて」を開催

6月5日(月)、国際文化会館(東京・六本木)において、アルク主催のシンポジウム「グローバリズムとローカリズムの相克を超えて」を開催いたしました。当日は、コミュニケーション教育や地方創生に関わる自治体などの関係者が多数来場し、熱気あふれる講演・パネルディスカッションが行われました。(アルク 新城宏治)

豊岡の何が世界で注目されるのか?

シンポジウムの第1部は平田オリザ氏(劇作家・演出家)による講演。「小さな世界都市 ― 豊岡市の挑戦」と題し、平田氏が芸術監督を務める兵庫県の「城崎国際アートセンター」などを活用した地方創生の具体的 事例 が紹介されました。

その中で平田氏は、「ローカルな自治体は東京標準ではなく世界標準(グローバル)を目指すべき」と提言。子どものころから本物の芸術に触れることや、英語教育やコミュニケーション教育の重要性について熱く語りました。

人口8万人の町に年間4万人もの外国人観光客が訪れるという兵庫県豊岡市。そこで 展開 されているさまざまな先駆的な 事例 は、地方創生を考える多くの自治体関係者に大変参考になるものでした。

違いを楽しむ豊かな社会へ

続く第2部はパネルディスカッション。平田氏の他に、明石康氏(元国連事務次長・公益財団法人国際文化会館理事長)、青谷優子氏(バイリンガルフリーアナウンサー・朗読家)をパネリストに加えて「コミュニケーション、言語、教育を考える」というテーマで行われました。3人の言語習得体験を踏まえ、そこからコミュ二ケーションや教育の在り方をフロアの参加者と一緒に考えました。

明石氏は「国連でのコミュニケーションは言葉の形式よりも、伝えよう理解しようという気持ちのほうが大切だった」と貴重な経験を語ってくれました。英国で育った青谷氏は、英語は話せても話す中身がなければ何も言えなかった子どもの頃の経験を披露。平田氏は韓国に留学して欧米人と同じクラスの中で韓国語を学ぶ中で自分の日本語を相対化していったプロセスを紹介してくれました。

3人の話のキーワードになったのは「対話」。自分と相手の違いを意識した上で、コミュニケーションの中から自分のものでも相手のものでもない新しい概念を生み出すことの重要性が再認識されました。

また、そのような対話のトレーニングが子どもの頃から必要なことは会場全体で共有されましたが、大学生や社会人はどのようにして対話の能力を磨けばいいのかという点においてはフロアからも積極的な質疑・提案がありました。

価値を生み出す「場づくり」を

コミュニケーションにおいては違いを違いとして認識した上でその違いから新しい価値観を生み出すこと、むしろ違うことを尊重しその違いを楽しむことが重要であるというパネルディスカッションの 主張 は、均質化・同質化が進む日本社会や教育の在り方に一石を投じるものになりました。そのような新しい価値を創造する場は、地域や家庭、学校や会社などにおいてそれぞれ必要なものでしょう。

アルクも外国語教育やコミュニケーション教育を通して、そのような場づくりに積極的に関わっていきたいと考えています。

文:新城宏治(アルク) 写真:横関一浩

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