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中国人との商談が成功する「ポイントを3つに絞る」話し方

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2017年3月に発売した書籍『中国とビジネスをするための鉄則55』(アルク刊)から、これから中国とのビジネスを始めたい人、中国出張・駐在を控えている人たちに向けて、現地で役立つ情報をQ&A形式でご紹介します。第4回は「中国人の価値観と仕事観を理解する」です。

中国とビジネスをするための鉄則55 (アルク はたらく×英語シリーズ)

中国とビジネスをするための鉄則55 (アルク はたらく×英語シリーズ)

 

Q 中国人は自己主張が強い印象がありますが、実際は?

A  主張すべきことははっきり主張するのが中国人のスタイルです。お互い主張し合う中で、相違点と落としどころを見つけていくことがコミュニケーションの基本です。

中国人同士が会話をしていると、まるでけんかをしているようです。大きな声で、みけんにしわを寄せて、お互いの主張をぶつけ合います。しかし、これは決してけんかをしているわけではありません。言いたいことや言うべきことを遠慮なく主張するのが中国流なのです。

中国は「主張することが評価される文化」といわれます。「イエス」は「イエス」とはっきり言います。「ノー」は「ノー」とはっきり主張します。あいまいな言い方や遠回しな言い方をしないのです。

一般的に中国人は自己主張が強いといわれますが、考えていることを言葉にしてはっきりと相手に伝えることが相手に対して誠意を尽くすことだと考えます。言葉にしなければ相手に伝わらないと考えるのです。

中国ビジネスに携わる皆さんから「中国人は自分の主張ばかり通そうとする」「中国人は利己主義だ」「中国人は自分のことしか考えない」という話を聞きます。マイナスイメージを持つ人が多いようです。しかし、果たしてそうでしょうか? 繰り返しになりますが、中国人は、お互いの理解を深めるために、自分の考えを相手にしっかり伝えるべきであると考えているだけなのです。これが中国人のコミュニケーションスタイルです。

日本は「悟り合うことを重んじる文化」

一方、日本は「悟り合うことを重んじる文化」といわれます。言いたいことをストレートに言うのではなく、まず相手がどんなことを考えているかを想像し、相手の気持ちを察した上で言うべきことを考えます。同様に相手の方も自分が言いたいことを主張する前にこちらの気持ちを考えた上で発言をしてくるはずです。

時には遠回しな表現や婉曲(えんきょく)的な表現を用いて、相手を悟らせるような言い方をしたり、相手が悟ってくれることを期待する言い方をしたりするのが日本人です。わざとあいまいな表現をして、自分の意図を相手に考えさせたりすることもあります。

「以心伝心」や「阿吽(あうん)の呼吸」という言葉があるように相手の気持ちを察することが大切で、お互いの気持ちを悟り合うことが重要だと考えるのです。言葉にしなくても理解し合うことを重視する日本人特有のコミュニケーションスタイルです。

日本語には「空気を読む」という言葉もあります。雰囲気を感じ取り、言葉にしなくても相手の言いたいことや期待している動を察することです。日本人にとって空気が読める人はいい人で、空気を読めない人はダメな人なのです。

場の雰囲気を感じ取り、空気を読んだり、雰囲気を察したり、相手の気持ちを考えながらコミュニケーションを進めていくのが日本人の特徴です。

「そんなこと言わなくても分かるだろう」「そこまで言わせるのか」と言って察しが悪いことが非難されたりすることもあります。口に出して一つ一つ説明することは、日本人にとってはスマートではないのです。「気が利かない」「のみ込みが悪い」というマイナス評価のレッテルを貼られることになります。

ビジネス折衝の進め方にも違いがある

議論の場も同じです。日本では直球でストレートなもの言いをすることは敬遠されます。むしろ落としどころを探りながら、譲るべきところは譲り、主張すべきポイントも相手に配慮した形で発言をすることによって、できるだけ早く合意点を見いだそうとします。

一方主張すべきことははっきり主張するのが中国的なスタイルです。議論を深めていくためには自分の考えまず主張することが大切であると考えます。相手の反論に対してまた反論し、譲らない、妥協しない、謝らない、反論に反論するといった形で議論を深めていくのが中国流なのです。

しかし、一見すると平線の議論が続いているように見える中でも、彼らは譲れないポイントと譲ってもいいポイントを必ず見つけ出していきます。お互いの主張を出し合っているからこそ議論のポイントを絞り込むことができ、落としどころを見つけやすいのです。

主張しなければ落としどころも見つかりません。落としどころを見つけるためにはしっかり主張することが必要なのです。皆さんも「主張すべきことは遠慮なく主張する」と頭を切り替えて中国人とのビジネス折衝に臨んでください。

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Q 仕事において、中国人と信頼関係を築くためには?

まず中国人と日本人の働き方に対する意識の違いを知ること、そして会社という枠を超えて個人対個人の関係を意識しながら付き合ってみることです。

中国人にとって会社とは果たすべき役割を果たし、報酬を得るための場です。自分が果たすべき役割とは何か、明確に意識して仕事に向き合うのが中国人の働き方です。残念ながら、会社に所属するという感覚は希薄です。会社のため、組織のためといった、会社に対する「忠誠心」は期待しない方が無難でしょう。チームのため、仲間のために一致団結して働くという気持ちは希薄です。自分に与えられた仕事を忠実にこなし、それに見合う報酬を得る場が会社なのです。

一方、日本人は会社で働く際に組織の一員であることを強く意識します。会社に所属するということは、会社のために「忠誠心」を発揮して、組織のために、チームのために、仲間と協力して働くことです。果たすべき役割を果たせばいいのではなく、会社全体としての利益を考えるのが日本人の働き方です。

そういう日本人が中国人を見ると、「言われたことしかやらない」「気が利かない」「同僚の残業を手伝わない」「チームワークを乱す」と感じてしまいます。しかし、中国人は与えられた仕事はしっかりこなしているはずです。どちらが良い悪いという問題ではなく、基本的に働き方の意識が違うのです。この点を理解しておかないと中国人との間にギャップを生み、フラストレーションをためることになります。

会社ではなく、個人に対して「忠義心」を発揮する中国人

中国人とうまく付き合っていくコツは、仕事上の付き合いと個人対個人の付き合いの二つを意識しながら使い分けてみることです。時には「会社」という看板を外して、個人対個人の関係に踏み込んで接してみてください。

中国人は会社に対する「忠誠心」は希薄です。しかし、信頼関係が一度できあがってくると、会社ではなく個人に対して強い「忠義心」を発揮するようになります。会社の一員としてではなく、個人対個人の関係作りを心掛けることが中国人とうまく付き合っていくコツです。

たとえばあなたの部下は、会社のため、組織のため、チームのためではなく、上司であるあなたのために強い「忠義心」を発揮して一生懸命働くようになります。こんな関係を意識してみることです。

たとえば取引先の担当者であれば、あなたの会社との取引ではなく、あなたとの関係を強く意識した取引の進め方をします。

もちろんビジネスは会社対会社で契約書を交わして、会社対会社で取引われるのですが、個人対個人を意識してみるといろいろな面で取引がよりスムーズになります。会社対会社と個人対個人の両方を常に意識すること。中国ビジネスを成功に導くポイントは、すべてここに集約されます。

会社という枠を超えて、まずは個人と個人の信頼関係をしっかり構築することが重要なのです。「仕事があるから友人になるのではなく、友人になって一緒に新しい仕事を探す」、これが本当の友人だと考えます。ぜひ、あなたも時には「会社」という看板を外して、個人対個人の関係で接してみてください。

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Q 中国人との商談で、理解してもらいやすい効果的な話し方は?

まず結論」を述べ、続けてその理由を三つのポイントに絞って説明すると相手に伝わりやすいです。

相手に何かを伝えたいとき、まず結論」から切り出すことがコツです。「結論から言いますと」という言葉を習慣化してみる(口癖にする)ことをお勧めします。まずは相手に伝えたいポイントの要点から話し始めるのです。あいまいな表現を避けてストレートに伝えること、これが中国人と円滑なコミュニケーションをするための鉄則です。

文章を書くとき、学生時代に私たちは起承転結で文章を組み立てるのがよいと教わってきました。しかし、主張したいポイントを相手に伝えるために起承転結はふさわしくないようです。

まず結論を伝えた後に、さらにその結論を導き出したポイントを三つに絞り、相手に伝えます。結論に至った理由、背景説明、自分の考えなど、重要なポイントは三つに絞って伝えることを一つのパターンとするのです。「結論から言いますと……です。ポイントは三つあります」という言葉をセットにして習慣化します。結論を伝えた後、ポイントが三つであることを先に宣言してしまうという点がコツです。

これはあらかじめ三つと宣言することで相手に聞く体制を作らせることが目的です。相手の頭の中に「引き出し」を作り、あなたはこの引き出しにボールを投げ入れるように「第一に……、第二に……、第三に……」と三つのポイントを伝えていきます。

もし、ポイントが二つしか思いつかなかったら……

しかし、「ポイントは三つあります」と先に宣言してしまった後で、実はポイントがまだ二つしか思いついていないというケースもあります。しかし、その場合でもやはり「ポイントは三つ」と宣言します。一つ目のポイントを話して、二つ目のポイントが話し終わる前に、頭を64倍速で回転させて三つ目のポイントを考え出します。

短い時間にポイントを整理して三つのポイントをひねり出し、話が終わるまでになんとかポイントを三つにまとめるのです。これは自分自身の思考のトレーニングでもあります。ポイントを考えながら整理し、言葉に置き換えて相手に伝えるトレーニングです。限られた時間でポイントを表現する自己トレーニングでもあるのです。

「1+3主張法」で自分の考えを述べる事例

結論から言いますと、私は中国側が提案する事業の拡大計画には反対です。ポイントは三つあります。第一に、来期の市場予測についてデータ通りの伸びになるかどうかまだ不透明な要素があるからです。予測データの精査が必要かと思います。

第二に、部品価格の高騰が懸念されます。仮に部品の入手が困難になると生産計画自体の見直しが強いられることになります。

第三に、春節を前に賃金アップの要求や時間外手当の支給など労働コストの上昇も懸念されます。事業の拡大進めるより、まず生産ラインを効率化して無駄を省き、利益率を上げることを目指すべきです」

いかがでしょうか? ①まず結論から告げる、②ポイントを三つに絞って相手に伝える、③「結論から言いますと……です」と「ポイントは三つあります」という言葉を口癖にする、これが「1+3主張法」です。

もし、起承転結型で話を組み立てると、最後まで話を聞かないと結論が分かりません。さらに結論に至るまでに話が長くなり、論点が分かりづらく、時には何を言いたいのか主張があいまいになることがあります。丁寧に説明しようとして、あれもこれもと話し過ぎてしまう人や、できるだけ詳しく説明を加えた方が親切であると考える人がいます。

しかし、中国人とのコミュニケーションでは説明が多いことより要点をできるだけ短くまとめて伝えた方がベターです。起承転結ではなく、「結論から言いますと……です」「ポイントは三つあります」という伝え方をぜひ実践してみてください。

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文:吉村 章
1961年生まれ。87年から台湾でビジネスマン向けの日本語教育に携わり、96年台湾最大のIT関連業界団体、Taipei Computer Association(TCA)へ移籍。同年、駐日代として帰国。2001年からは中国に進出する日本企業支援が業務の柱となり、現在に至る。中国への出張者・赴任者向けの異文化研修や地方自治体向けの海外市場開拓セミナーの講師を務めるなど幅広く活動。『知識ゼロからの中国ビジネス入門』(幻冬舎)、『中国人とうまくつきあう実践テクニック』(総合法令出版)など著書多数。ASIA-NET、株式会社クロスコスモス代取締役、TCA東京事務所駐日代。ホームページ:ASIA-NET

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