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キーワードは管理コスト。上司からの「評価」を、経営者の目線で考えてみる[外資ワークの真実07]

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アルクの新刊(2017年1月)『 英語転職の教科書』のエッセンスをご紹介します。

経営者の頭には、つねに「管理コスト」が浮かんでいる

経営者は、つねに「管理コスト」を念頭に置いています。

たとえば、営業パーソンの部間の業績比較をするとします。適正な評価をするためにはまず、各人が担当する「市場のポテンシャル」をみなければなりません。

東京の市場と北海道の市場で住宅を売っている人がいたとしたら、東京の方が有利で売上が上げやすいのはすぐに分かると思います。売上高で評価されたら「東京を担当している人間は得だ!」と文句が出てくるでしょう。

さすがに、東京と北海道で営業人数を同じにして評価するということはないと思います。市場調査をして、北海道と東京都のポテンシャルを把握し、それぞれどの程度の営業担当配置するかを決め、そこから各自の目標設定するでしょう。

しかし、もっと細かいレベルになってくると、市場性を評価するためのコストが大きくなってしまうので、普通は、そこまではしません。

評価は社員ではなく業績のためにある

もっというと、東京と北海道の市場性を調査するのは、そこで働く社員を公正に評価するためだからではなく、売上を最大化するために、限られた営業リソースをどこにどのように配置したらいいかを見極めるためなのです。

これこそがまさしく、経営の視点の「管理コスト」です。

育成に有効な絶対評価管理コストに優れた相対評価

少し違うを挙げると、皆さんの会社の評価制度に、絶対評価と相対評価があると思います。

絶対評価では、それぞれ目標設定して、その設定した目標に対してどの程度の達成度であったかが評価されます。一方で、相対評価では、他の同僚との競争になります。「今期は頑張って売ったぞ!」と思っていても、他の人の売上も好調だったら、評価点は下がってしまいます。まさしく、相対的な位置で評価されるわけです。

読者の皆さんの会社では、絶対評価と相対評価の両方を使っているところが多いと思います。目標管理では、今期の目標を立てる。これはまさに絶対評価目標です。これについて、期末に評価されることになります。

ただしその後に分布規制というものが入り、SABCDの5段階評価とすれば、S:10%、A:20%、B:50%、C:15%、D:5%というような比率を示され、目標管理での絶対評価目標を越えていてもB評価に、場合によってはC評価にされてしまうことがあります。

これで不平を漏らしている人も、たくさんいるのではないでしょうか? また、どうしてこんなことが起こるのでしょうか?

実はこれは、経営の視点からしたら、やむを得ないことなのです。まさに管理コストによるものなのです。詳しく見てみましょう。

目標設定が難しい絶対評価

絶対評価の重要なポイントは、まず目標妥当性です。

もし皆さんが営業職で、評価される立場になったら、目標はできる限り低めに設定したいのではないでしょうか?

上司に「潜在顧客はもっといるはずだ」と言われたときに、「いえいえ、そんなには」と言いつつ、実は顧客を隠し持っていたりするのではないでしょうか?

無茶苦茶な目標設定は働く人のモチベーションを下げてしまいますが、いわゆる「妥当な背伸び」をすれば何とか達成できる、適度なストレッチの利いた目標設定するのは非常に困難なわけです。

評価が甘くなりがちなのも問題です。上司も、部下には嫌われたくないし、自分だけが部下を厳しく採点するのは嫌ですから、勢い、甘い評価になるのです。

笑い話ですが、私がコンサルティングをしていた会社で、社長さんがこう言いながら怒っていました。

「当社の評価制度(注:絶対評価です)はおかしい。そんな優秀な社員ばかり多くいるのなら、当社の業績はもっと上がるはずだ」

評価は甘くなり、実態を反映しなくなるものです。

教育に効果的な相対評価

一方で、相対評価ならきちんと序が付きます。低い評価を付けざるを得ない上司も、あまり褒められたことではありませんが、「会社のルールだからこれはわざるを得ない」という方便がききます。

したがって特に、昇給や昇進のような定員が決まっている、つまり、原資が決まっている評価においては、相対評価必ず出てきます。反面、絶対評価はどちらかというと育成目的でつかわれることが多いものです。

昇給や昇進は、社員にとっては重要なイベントです。それが相対評価で決まるのなら、社員は同僚より頑張っていい成績を採ろうというインセンティブが働きます。経営者としてみれば、市場性やなんだとかを分析して目標妥当性調べるコストが、不要にはならなくとも小さくなりますし、社員がとにかく競争してくれるわけですから、メリットは大きいです。

社員が共謀してみんなでサボる、なんてことになれば話は別ですが、日本企業に働く人のモラルの高さからすればそれは杞憂でしょう。逆に、競争し過ぎて足の引っ張り合いが起きるかもしれないというリスクはあります。これについては、個人だけではなくチームや会社全体の業績を賞与などに入れることにより緩和している会社が多くあります。

これまで見ていただいたように、絶対評価は各人ごとに目標設定して達成していくという育成目的にはうまく機能しますが、昇進や昇給のような原資が決まっており差をつけなければならない評価ではうまく機能しないことが多いです。その点、相対評価は差をつける評価の際に、管理しやすく、社員の競争心も高めやすく、経営者として管理コストが非常に安い制度なわけです。

自身の評価も経営者の目線で認識する

絶対評価と相対評価。自社は絶対評価だといいながら相対評価している、と文句を言うのではなく、これらが併存するのは管理コスト上やむを得ないのだ、ということを認識することが、成功するプロのサラリーマンとして重要なことなのです。

村上賀厚

村上賀厚(むらかみ・のりあつ)
同志社大学商学部卒業、イェール大学経営大学院経営管理学修士(MBA)
マーケティングエージェンシーで市場調査分析売上モデル作成など、一般消費財メーカーの販促活動をサポート。その後、住友ビジネスコンサルティング等で、大手ゼネコン、電機メーカー、不動産開発会社および石油精製企業などへの処遇制度、人材開発制度、ホワイトカラーの生産性分析などの人事組織コンサルティングに従事。
イェール大学卒業後は、フォードジャパン人事課長、日本JDエドワーズ人事部長、日本モンサント人事総務本部長、ロイタージャパン人事本部長、GEコンシューマーファイナンス日本で人事本部ディレクターを務める。独立後はノリ・コーポレーション代取締役として、エグゼクティブコーチおよび人事・組織関連コンサルティングを行うとともに、収益不動産開発も手掛ける。
著書に『元・外資系人事部長が見た 要領よく出世する人』(東洋経済新報社)がある。