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「外資系企業は成果主義」のウソ [外資ワークの真実 02]

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外資系企業は成果主義?

外資系というと、年功はさほど意味をもたず、成果主義だ、実力主義だというイメージを持ちがちです。できる人とそうでない人は処遇も差が付く、というイメージでしょうか。

大きくは間違ってはいませんが、これを正確に考えるには、そもそも成果とは何か、実力とは何かから考える必要があります。ポイントとなるのは成果や実力をどの程度まで個人レベルで測れるかです。

鉄道会社の成果は何か?

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例えば鉄道会社で考えてみましょう。ここでいう成果とは何でしょうか?

都会に住んでいると毎日のように電車に乗ります。乗客からしてみたら、まずは安全に電車を運して欲しい、と思うでしょう。そして、会社に遅刻しないように正確な時間に来てほしい。豪雨や地震の時はやむを得ないとしても、できるだけ早く復旧して欲しいとも思います。要するに、顧客ニーズの観点に立てば、成果とはまさしく「安全・安定で正確な電車運」ということになります。

成果を出すための実力=ルールの通りに動できること

では、そのために社員は、どのような実力をもって仕事をすればいいのでしょうか?

駅でよく見かける光景で、運転手さん、車掌さん、駅で案内する駅員の方々の指差し声出し確認があります。世代が違っていたらすみませんが、小学校の時に先生に指導されたような横断歩道を歩く際に「右よし、左よし、進め」みたいなものです。

なんか子供っぽいな、と以前は思っていたのですが、電鉄会社の方に聞くと、見ようとする目的に指をさし、声を出すことによりその目的をより強く認識できるということです。眼だけで追うよりもより正確な認識ができると。確かに、指差し声出し確認をすることにより正確性が高まるのは実際に試してみると分かります。このように、電車の運や駅現場にいる方々はこういったマニュアル的な決まりが多いのです。

本部にいる人達、全線の運管理している人も、緊急時の対応などはマニュアルで決められ、定期的に訓練をされているでしょう。また、車両検査担当の方々も、検査個所など綿密に定められています。つまり、実力とは何かというと、規律通りに、決められたことをしっかりと遂すること。これがまさしく、電鉄会社で働く方々の主要な実力なのでしょう。勝手なことをされては困るのです。駅構内でのお客様対応など、臨機応変な応対が必要なことはありますが、ウエイト的にはやはり安全運です。

読者の皆さんが経営者であれば、個人の成果・実力主義よりもチーム全体としての成果を強調するでしょう。乗客として考えても、個人主義をうたう電鉄会社は利用したくないですよね。

鉄道系でも、まったく異なる成果で動く部門もある

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では、電鉄会社と名がつくところには必ず関連会社としてある、不動産会社はどうでしょうか?例えば、東急電鉄と東急不動産のような関係です。

不動産会社の仕事はなんでしょうか?電鉄沿線の不動産開発があります。駅ビルの開発や、駅周辺から通勤圏の住宅地の開発、更には自社不動産に入るテナントの運営などになります。

成果を出すための実力=クリエイティビティ

では、このような不動産会社での成果とはなんでしょうか?顧客の観点に立つと、より魅力的な駅ビルを開発すること。さらには、適正な価格での沿線住宅地や街を創り上げるということでしょう。

容易に想像できますが、これは、マニュアルとは縁遠い仕事です。いわゆる不動産デベロッパーになる訳で、地権者との交渉、ビルや住宅地の建設にはゼネコンとの交渉も必要になります。ビルや街のデザインといった、感性的な仕事も多くなります。

土地の購入や開発にまつわる以上は、コンプライアンス的に厳しいところは当然あるでしょうが、指差し確認のような所作まではあり得ません。東急電鉄と東急不動産のを挙げましたが、他の電鉄会社でも同じことでしょう。同じグループでも全く違う業務内容です。因みにこの両者はほとんど人材交流がないとのことです。異なる人材の企業ですから、当然と言えば当然です。

ここで重要なのは、企業目的を達成するために「電鉄会社に働く皆さんは、規律を順守して動くこと」そして「不動産会社の方々はアグレッシブに、そしてクリエイティブに活動していくこと」が必要になります。つまり、個人の実力や成果を個人レベルで測るとすると、電鉄と不動産という関連会社でも全く異なってくるということです。

電鉄会社では、個人の優れた能力で電車を動かしているのではありません。まさしく電鉄運すべてが一つで、多くの個人の規律正しさに裏打ちされたチーム力で動かしています。

もちろん、不動産デベロップメントも同じく一人でできる訳ではありません。しかしながら、建物のデザイン力やプロデュース力とか、地権者との交渉力は個人やチームでも小さなグループの力に追うところが大きいでしょう。つまり成果と実力を考えるにあたり、重要なのはそれをもたらすのは、個人の力量に負うところが大きいのか?チームに負うところが大きいのか?というところなのです。

ここでも読者の皆さんが経営者であれば、不動産開発なら交渉力にたけた、またクリエイティブに富んだ優秀な人材の確保のためにも、個人や小さなチームの成果・実力を強調するでしょう。つまり、チーム成果に負うところが多い職場では個人の成果や実力主義はさほど重視されない一方、個人の成果に負う部分が大きい職場では、人材の確保のためにも個人の成果主義、実力主義になりがちです。

成果を定義するのは業界や職種

もっと極端なつまり、個人の成果主義と実力主義がより測りやすく実践されている業界があります。保険会社の営業です。上司のサポートがあったり、販促物の制作などは本社の専門機関がやってくれたりはしますが、顧客の開拓から契約のクロージングまでほとんどが自分です。まさしく実力主義、成果主義と言えるでしょう。

もし、このような会社で、個人の成果・実力主義を弱めたらどうなるでしょうか?優秀な営業人材は逃げてって、会社は立ちきません。経営者としては、あり得ない選択です。

つまり、外資系企業とか日系企業とかは関係なく、業界の特性や職種によりウェイトは異なる訳です。

では、外資系でも業界や職種特性によるものだけで、個人成果や実力の評価は日本企業と変わらないのか?と聞かれそうですが、メリハリのつけ方はやはり、外資系企業の方が大きいと言えます。例えば、営業マンのボーナスも、日本企業よりは外資の方が大きいなど

しかし、一番大きく効く要素は、業界特性や職種によるもので、経営の観点から見て、個人の成果や実力をどれだけ評価しやすいか、評価して差をつけた方が人材の確保につながるかということなのです。

村上賀厚

村上賀厚(むらかみ・のりあつ)
同志社大学商学部卒業、イェール大学経営大学院経営管理学修士(MBA)
マーケティングエージェンシーで市場調査分析売上モデル作成など、一般消費財メーカーの販促活動をサポート。その後、住友ビジネスコンサルティング等で、大手ゼネコン、電機メーカー、不動産開発会社および石油精製企業などへの処遇制度、人材開発制度、ホワイトカラーの生産性分析などの人事組織コンサルティングに従事。
イェール大学卒業後は、フォードジャパン人事課長、日本JDエドワーズ人事部長、日本モンサント人事総務本部長、ロイタージャパン人事本部長、GEコンシューマーファイナンス日本で人事本部ディレクターを務める。独立後はノリ・コーポレーション代取締役として、エグゼクティブコーチおよび人事・組織関連コンサルティングを行うとともに、収益不動産開発も手掛ける。
著書に『元・外資系人事部長が見た 要領よく出世する人』(東洋経済新報社)がある。